第9話落ち葉
いつもの放課後。ただし今日の場所は部室ではなく外。
今日の依頼は先生から落ち葉を集めて処理して欲しいとの依頼だった。
部長曰く、雑用でも依頼だからなとの事だ。
杏果さんもやる気バリバリで熊手落ち葉をどんどん集めている。
始まる前に優斗先輩が『今日のご褒美は特別だよ』と言っていたのが効いてるみたいだ。
『シロくんシロくん!イチョウの葉っぱを見つけました!こっちには紅葉もありますよ!』
キラキラした目で見せつけてきたと思ったら走って何処かへいってしまった。
『もうすっかり秋だな』
いつの間にか夏が過ぎ、風が吹けば少し肌寒くも感じる。
熊手を引きながら落ち葉を回収しつつ美月ちゃんの後をゆっくり追いかける。
『シロ〜こっちきてみろ〜!』
杏果さんの声が奥から聞こえてくる。
声のする方に方向修正しながら進んでいくと目的地には大量の落ち葉が集められていた。
『どうだ!落ち葉のベッドだぞ!』
『ベッドって言うか、山ですね。こんなに集まったんですか』
『みーちゃんも手伝ってくれたんだ』
『手伝いました!』
グッと拳を握りやってやりましたみたいなポーズとドヤ顔。可愛らしい。
『じゃあ袋に詰めて優斗先輩のところに持っていきましょうか』
『ちょっとまて!』
いそいそとゴミ袋の準備をしていると大きな声で制された。
『どうしたんですか?』
『シロよ、これだけの落ち葉はそうそうお目にかからないんだ』
『まぁ、そうですね』
『みーちゃんよ、このまま燃やしてしまうのはもったいないとおもわないか?』
『そうなんですか?』
こっちに振られても…
『じゃあどうするんですか?これ…』
『決まってんだろ』
そう言うと少しだけ落ち葉の山から距離を取る杏果さん。
まさか…
『こうするんだよ!』
助走をつけた杏果さんは頭から落ち葉の山に突っ込んでいった。
こんな名前動画で見たな〜…
『どうだ!シロもみーちゃんもやってみろよ!』
『い、いいのかな!シロくん!』
こっちを見て聞いてくる美月ちゃんはやりたそうにウズウズしていた。
『やめといた方がいいよ〜汚れちゃうし後で優斗先輩になんて言われるか』
『そ、そうですよね』
露骨にシュンとされるとなんだか罪悪感がすごい。
『なんだよ〜やんないのかよ〜』
落ち葉の山から抜け出した杏果さんが近づいてきた。案の定落ち葉まみれになっている。
『大丈夫だって!優斗には黙ってやってれば叱られないって』
『誰に黙ってれば叱られないのかな?』その声にビクッと体を強張らせる杏果さん。その後ろにはいつの間にか優斗先輩が佇んでいた。
『うん、いっぱい集まったね。これだけあれば十分だよ。向こうに持って行こうか。杏果ちゃんはちゃんと綺麗にしておいてね。じゃないとご褒美は無しだからね』
はい、と美月ちゃんと冬馬の手を借りながら綺麗にする杏果さんであった。
集めた落ち葉は焼却用のドラム缶で燃やされた。
『なぁ優斗〜今日のご褒美はなんなんだよ〜』痺れを切らした杏果さんが聞く。
『もうできてるかな?ちょっと待ってて』
ドラム缶の底に開いてある穴を突くと中から銀色の丸っこい3つほどのが出てきた。
『これが今日のご褒美だよ』
もしかして…
『『『焼き芋だ!!』』』
包みを開けると中からホクホクになったサツマイモが出てきた
『今日のご褒美は秋の味覚、出来たての焼き芋だよ。琢磨くんが色んな種類を用意してくれたから食べ比べてみるといいよ』
落ち葉焚きでの焼き芋。しかも食べ放題。
確かに特別だ。
『オタクもたまにはやるな〜』
『このお芋さん、とっても甘いです!』
女子勢は大喜びみたいだ。
事務作業をしてるであろう部長にも後で持っていってあげよう。
そう心に決めまた一つ焼き芋を頬張るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます