だって僕はNPCだから+プラス 4th 『お引っ越しプレゼンテーション』
枕崎 純之助
前編 ようこそ! ミランダ城へ
こんにちは。
アルフレッド・シュヴァルトシュタインです。
先日の大騒動イベント【襲来! 破壊獣アニヒレート】が終わってから3日が過ぎました。
僕は今、ここミランダ城の城門前でソワソワしながら来客の訪問を待っているところです。
イベントによって損壊したこのお城の修復は今もまだ続いているけれど、僕はこの3日の間でいつもの
まあ引っ越しって言ったって、僕個人の荷物なんてほとんどないし、この場所も
それより今、僕にとって
それは昨日、運営本部から通達されたこのミランダ城への移住契約書の内容と、今からやって来る来客が原因なんだ。
【
この契約条件を見た時、ミランダは両目を
そりゃもう
そう。
今からやって来る来客ってのは、お察しの通り、ジェネットたちだ。
だから来客というよりは引っ越してくる同居人なんだけどね。
ジェネットたち4人は僕にとっては大事な友達だから、この城に引っ越してきてくれるのは素直に嬉しいよ。
でもミランダは違うみたい。
先日からジェネットたちのこの城への移住希望をにべもなく拒否していたからね。
でも運営本部からの通達なら、いかに
だって彼女はNPCだから。
そんなわけでミランダは今朝から寝室でフテ寝中で、僕が
はぁ。
ジェネットたちが来てくれるのは嬉しいけど、間違いなくこれはケンカになるな。
うぅ……気が重い。
そんなことを思っていると自動開門機能が作動して、ジェネットたち4人が姿を現した。
皆、イベント終了後は各自の用事に追われていたから、会うのは数日ぶりだけど、全員元気そうだ。
ちなみに城のそこかしこでは、ミランダが呼び出した
「ミランダはどうしたんですか?」
玉座の間に到着すると、ジェネットは座る者のいない玉座を見てそう言った。
「うん。実は……」
冴えない声でそう言う僕の様子で全てを悟ったのか、ジェネットはそんな僕の言葉を手で制した。
「分かりました。アル様。私が呼んできましょう」
そう言うとジェネットは玉座の間の両端に設けられた階段を上って吹き抜けとなっている2階部分、この上にあるミランダの寝室へと向かい、その
「ミランダ。ふてくされていないで出てきて下さい。今日は大事な取り決めがあるんですから」
そう言うジェネットだけど、ミランダは一切無視しているようで、
それを見たジェネットはさっさと
「出て来ないのならばお好きにどうぞ。誰がアル様のお
えっ?
ジェネットの言葉に
中から出てきた
「あらミランダ。お元気そうですね」
「ジェネットあんた。神の奴に働きかけて契約書に余計な条項を付け加えたでしょ! 何で私の城の部屋をあんた達に貸し出さなきゃならないのよ!」
開口一番にそう言うとミランダはジェネットに詰め寄っていく。
ジェネットはやれやれと肩をすくめながら首を横に振った。
「落ち着きなさいミランダ。私はそのようなことを我が主に願い出た覚えはありません」
「ウソおっしゃい!
ああもう。
やっぱりケンカになる。
そうしてミランダとジェネットがやいのやいのと押し問答を始めたその時、この玉座の間に一羽の鳥が舞い込んできた。
それはピイッと甲高く鳴くと、床に着地して人の姿に変わった。
「シスター・ジェネットの言っていることは本当さ。城主様」
そう言ってそこに現れたのは、
彼女はいつもの白衣を
「その契約書に彼女たちの同居申請をしたのはワタシだからね。ジェネットは潔白だよ」
「このメガネ! なに余計なことしてくれてんのよ!」
ジェネットに
ブレイディーはすかさず僕の後ろに隠れた。
ぼ、僕を巻き込まないで!
「そんなに怒らないでくれたまえよ。これは我が主の判断でもあるんだ。君たちはもはや
ブレイディーのその言葉にジェネットも
「今後まみえるであろう密入国者たちとの戦いに備えて、我々も結束し、共闘できる体勢を整えておくように、ということですね」
先日のイベント中に僕らは密入国者である東将姫アナリンというサムライ少女と戦った。
「西将姫ディアドラが四将姫とか言っていただろう? ということは北将姫や南将姫もいるってことさ。あの恐ろしく強いアナリン級のバケモノ女子があと3人もいるんだよ? ちょっと考えたくないね」
「それで我が主は敵の襲来に対応できるよう、出来るだけ私たちに共にあるようにと、今回の件をお
そういうことだったのか。
神様の考えに僕らは納得したけれど、ミランダは不満げにまだ何かを言おうとして口を開く。
それを
「そんなことよりアルフレッドの
「うむ。一番強い者こそがふさわしかろう」
そう言って2人はそれぞれの武器を取り出した。
それを見たミランダの顔からようやく不満げな色が消え、代わりに不敵な笑みが浮かぶ。
「へぇ。そういうこと。いいじゃない。あんた達が私に勝てたら部屋を貸してやるわ。最初からそうしたほうが手っ取り早かったわね」
おいおい……マジか。
契約書の内容によると、ジェネットたち4人の部屋の割り当ては全部で4つ。
そのうちの1つはこの南フロアにある僕の
それにしてもそんなに僕の
確かに南向きで陽当たり良好だけど、広さなら北側フロアの3部屋のほうが広い。
僕がそんなことを考えていると、ミランダたちの様子に
「はぁ。どうして君らはそう何でもかんでも腕っぷしで物事を決めようとするんだい。血なまぐさいことはやめて、たまには理知的にプレゼンテーションでもしたらどうかな?」
プレゼンテーションって何のことだ?
そんな顔をするヴィクトリアとノアにブレイディーは
「要するに自分がアルフレッド君の
そんなブレイディーの突然の申し出により、奇妙な競技大会が始まった。
☆★☆★☆★
「ええ~。ではプレゼン大会を始める前に、簡単なルール説明をするよ」
そう言ったブレイディーは何故か
僕の
「
「こ、殺しちゃダメ」
そんな僕らの会話にもお構いなしにブレイディーはルール説明を始めた。
「今から1人ずつプレゼンテーションを行うわけだけど、持ち時間は1人5分。それぞれしっかりアピールしてアルフレッド君を幸せな気分にさせてくれたまえ」
ブレイディーの説明に皆、首を
「ハイ! ブレイディー。アル君が幸せかどうか、どうやって分かるの?」
確かにそうだ。
幸せという
「
そんなものがあるのか。
神様は何でも作ってしまうな。
「さて、それではさっそくプレゼン大会を始めたいが、その前に注意事項があるよ。皆、
人聞き悪いわ!
まあ確かに時々そういうこともありますが。
時々だぞ!
たまにだからな!(必死)
「ではアルフレッド君にアプリをインストールするので、その間に各自アピールポイントを整理するなど準備をしてくれたまえ」
それからほどなくして僕の体へのアプリのインストールが終わり、世にも奇妙なプレゼン大会が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます