黒石家の人々〜ブラック過ぎて身が持たないけど、負けてたまるか!

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第1話 第1章、黒石家編。始まりの日常


僕、黒川優畄は普通の中学生だ。


普通に学校に通い、普通の仲の良い友達との何気ない会話を楽しみ、適度に寝て授業をサボる。ありふれた学生だ。


唯一普通の人達と違うところをあげるならば、それは並外れた第六感。ズバ抜けたす霊能力という力か。



なんでも近所のお坊さんの話によれば、僕は千年に1人の逸材だとかなんとか。僕の霊力も桁違いで、他の霊能者とは一線を画すほどのものだという。


でも何かの力で押さえ込まれており、その力の半分も使えないとかなんとか……


まあ、生臭坊主の言うことだ、言葉半分に受け取っておいた。



とはいえ普通に生きる僕にそんな能力が必要かといえば、まあ必要はないだろう。



力があって助かる事といえば、霊がいろいろと教えてくれる事か。


そのため彼は苦労して勉強をしなくとも余裕だ。


なぜなら、東大受験のノイローゼで自殺した浮遊霊の新垣大輔氏がテストの答えを教えてくれるためだ。


彼のおかげで、学年では常に上位20位以内の成績はキープ出来ている。


まったく彼に彼に足を向けて寝れやしない。


彼には''楽をして苦を知ると"難しい事を常々言われる。早く言えばカンニングばかりせずに真面目に勉強をしろと言うことだ。


高校に進学したならば、彼に勉学を教わるのも悪くは無いかもしれない。



あと古宿に泊まった際によくある、お札の貼られた部屋の回避も、近くにいる霊(お札の原因)が教えてくれるため回避できて安心安全だ。



それを卑怯と言う者もいるだろう。だが生来持ち得た力を使って何が悪いというのか。


だが僕はこの能力で恩恵だけを得ている訳ではない。その唯一の悩みが、幼馴染で学校のアイドル的存在の桜子に嫌われていることだ。



原因は僕のの頻繁な空への独り言。


僕は小さい頃から霊が見えていたため、良く話しかけられたり話しかけたりしていた。


小さい頃は人と幽霊の区別がつかなかった……


これは当時友達だと思っていた人物が幽霊だった事に始まる。



「優くん……何でいつも誰も居ない所に話しかけているの?」


「えっ?桜子、お前もそんな事言って武志を無視していじめるのか!」



そう、小さい頃から武志という他の者には見えない友達が、無視され仲間外れにされている事に納得が行かなかった僕。


だが庇う事も言い返すことも勇気がなく出来なかった…… せめて幼馴染の自分達だけは彼の味方でいようと思っていた。


それなのに何でお前まで……



「友達て誰よ!そんな人どこに居るっていうの?見えもしない人を友達なんて優くん頭おかしい

よ!!」



ボカッ!


「グッ……」


思わず桜子をぐーパンで殴ってしまった僕は、頭が真っ白になってしまった。


そして最悪な事に、鼻血を出しながら蹲って泣く桜子を残して、武志と共にその場を走り去ってしまったのだ……

 


そのすぐ後に武志は、生前に酷いいじめを受けていた反動か、僕に庇ってもらったことをキッカケに光の柱と共に天へ昇天していった……


きっと僕に庇ってもらえた事が、昇天する程に嬉しかったのだろう。



間抜けなことに、こうなるまで武志が人間でない事に気づかなかった僕。


よくよく考えてみればおかしかったんだ、今時夏場でも短パンにキャラT、ジャイアンツのキャップ姿の子供なんている訳がない。


それにアイツ趣味がキン消しに、ビックリマンシール集めて、何歳年上なんだよ!


唯一の救いは、武志が昇天していく時の満遍の笑顔か。


アイツ嬉しそうだったな……



それ以来僕は、普通の人と幽霊を見分けるための研究をいろいろ試してみる事が日課となった。



まず塩をかける事から初めてみたが、僕が塩をかけた幽霊は僕の霊力が強力なせいか、オオオォ〜ンと断末魔の叫びと共に溶けてしまい可哀想過ぎてボツとなった。


次に試して見たのは万能泡ハイター。


コイツにかかればお風呂のナメクジだろうが台所のゴキブリだろうがいちころだ。


まあたまにゴキは生き残るが……


結果は言わずもがな、幽霊には全く意味をなさなかった。


何故なら、塩と違い霊力を込められ無い泡ハイターでは、実態の無い彼等に当てる事が出来ないのだ。


試しに道路で轢かれて死んだ野良タヌキの霊に試してみたところ、彼に当たる事なくアワは地面を濡らすだけだった。


その時のタヌキの馬鹿にした様な表情が忘れられない……




その他にもいろいろ試してはみたが、結局は僕自身の霊力が上がった事により、自然と見分けがつくようになったことは悲しい事実だ。



ちなみに見分け方としては、生きている人間には生命の息吹みたいな、オーラの様な者が出ているのだ。


その点、霊たちはその場にポツネンと居るだけでオーラの様な息吹は出ていない。


これを知ってからは、成るべく人が居る所では霊に話しかけるのは辞めることにした。



とにかく、それ以来彼女とは会話もしていない。



明らかに僕を避けるようになった桜子に謝るチャンスも無く、小6の夏から中3の夏までの3年間この状態が続いている。


それでも僕の行った愚行を他の誰にも話さなかった桜子には感謝しかない。


学校の一番のアイドルに、ぐーパンを喰らわせた事がバレれたならば、最悪は村八分。その後の学校生活は悲惨なものになっていただろう。



今年は受験シーズン、成績の良かった僕はそこそこのレベルの高校を受けるつもりだ。


幽霊を使ったカンニングなら、もっと上位の高校も目指せるが、進学校は窮屈なイメージしかない。


それにカンニングに頼るのもそろそろ卒業しようと思っている。


高校ではのんびり学園生活を楽しみたいのだ。


なにより、桜子が進学する予定の学校だ。進学を機に彼女と仲直りしたいというのが僕の正直な所存だ。

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