噛む蜘蛛

あq

前書き

 これは手記である。

 先に伝えておくが、これは例えば遺書のように、私にとって何かが今まさに終わろうとしているか、あるいは終わりを迎えたが為に、筆を執ったというものではない。反対に、例えば朝顔の観察日記にように、その歴史の全体を記述できるような何かの始まりに立ち会ったからというわけでもない。それが全く個人的、時代的な終わりも、始まりすらも認められないような方法で理解されること、また繰り返される波際の届かぬ最初の砂のかけらのような決して打ち崩されぬ物事についての諸々、これらを何らかの実践として伝える為に、私は筆を執るのである。

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