第2話-2 天女 万華
俺は、言葉を失って、その天女を眺めていると、
「オノレ、何でウチのルートにおったんや? オノレのせいで、この世界に飛ばされたやんけ」
と関西弁が飛んできた。
すると、
「ルート?」
と久保田が反応した。
「久保田君。これは我が家の話だ。申し訳ないが、席を外してくれないか」
と丁重に頼んだ。
「ええ、そっ、そうですね。僕はお邪魔ですね。ハイ」
と後ろ髪を引っ張って欲しそうな顔をしながら病室から出て行った。
◇ ◇ ◇
「あれは、夢では無かったのか? 俺は一度死んで、平行世界とかに行くはずだったと言う事か?」
とその娘に聞いた。
「あんた転移・転生者やったんか。と言う事は、あのクソジジイ間違えたな」
とその娘は腕を組んで応えた。
「順を追って教えてくれないか? まず君は誰だ? いや何だ?」
ベットで寝ているのがもどかしくなり、上半身を起こした。
「ああ、記憶を消されたままなんやな。それなら知らへんのもしゃあないか。なら教えてやろな。ウチはあんたらの言う天女で、名前は
と顔を少し下に向けて、髪の毛を託し上げて答えた。
万華か、流石に天女だけあって美しい。見た目は大学生? いや高校生くらいか。しかし、天女はバリバリの関西弁なのだが。
「あー、その天女が、何故関西弁なのだ?」
「はあ? 蓬莱じゃこれが標準よ。これは蓬莱語。関西弁とちゃうで。まあ、王母様からは、口が悪いとちょいちょい注意されるんやけど」
と少し口をとがらして答えた。それでも美人には違いはない。
「蓬莱って、仙人が居たという幻の島か?」
「島? あんたが思うとる島とは全然ちゃうけどな」
そう言えば、さっき、俺のことを転生者って呼んでいたけど、何だろうな。
「それで、転生者とは何だ?」
「転生者は転生者や。邪魔くさいこと聞くな」
死後の世界の声の主も、面倒くさいとか言って、『平行世界』を教えてくれねぇし、この天女も『転生者』を説明するのが邪魔くさいという。最近は説明責任ってのがあるんだぜ。
それから、声の主をクソジジイって言っていたけど、神様じゃねぇのか?
「さっき言っていた、クソジジイとは、神様か?」
「ええ、はははは、そんな訳あらへんやろ。神さんはあんな細々したことはせぇへんよ。あれは一灯仙人や。転生者を案内する係り。言っておくけど、ウチの方が位は上やで」
と腰に手を当てて、少し胸を張って応えた。
あの声の主も仙人だったのか。それで、この天女とぶつかって戻ってしまったのだが、結局転移はもうないってことか。
「俺は、転移しようとしてけど、結局どうなったんだ?」
「まあ、転移は失敗やろうな。普通ヘタ打つと幾ら転生者でも死んでまうやけど、こうして戻ってきとるあんたは運が良かったやな」
万華は立っているのが飽きたのか、ベットサイドに腰を掛けた。
「きみの役目は何だ? あのルートを飛んでいた理由は?」
「あんたは質問が多いな。まあ、ええか。教えたる。ウチらは神さんの言葉を転生者や転移者に伝えて助ける係。ほんで第15平行世界に行こなぁとしたら、あんたと衝突したんや。きっとジジイが16と15を間違えたやで」
俺はそこまで聞いて最後の質問をすることにした。
「で、万華さん? 天女の貴方が、何故、ここにいるんだ? ひゅーと蓬莱に帰れるだろ?」
と聞くと、泣き顔になり、そして泣き出した。ベットに伏せって大泣きだ。
これは不味いか、誤解を受けるかな。そうだ誰かに見られたら、父親の怪我が治って泣いたと誤魔化すことにしよう。しかし、美女なのに大泣きだな。もっとお淑やかにシクシクと泣いて欲しいだがな。それにベットで鼻拭いているぞ。ティッシュの箱を渡すから、これで鼻拭いて。
———万華は、ティッシュの箱から、数枚取って涙を拭き、また数枚取って鼻をかんだ———
天女のイメージ総崩れだ
そして鼻を啜りながら、
「あんたと打つかったとき、
と可愛い顔で鼻水を垂らして訴えてきた。
「
「オノレ、学ないな。今風に言うとショールやで。もっと透けるほど薄うて長いけど」
学がなくて悪かったな。そう言えば、天女の羽衣ってあったな。案外事実だったのかもしれん。
さて、この天女を如何するかな。状況が状況だけに追い出すわけに行かないが、俺みたいな男やもめと暮らすわけにもいかないしな。そうだ二丁目の御園婆さんにたのんでみるか。
「分かった。その
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