第4話-1 万華の転入
「皆さん静かに。新しい転校生の紹介をします」
「初めまして。千野 万華です。よろしゅうお願いします」
「千野さんは、ご家族のご都合で大阪から引っ越してこられました。色々と分からない事もあると思うので、教えてあげてください。千野さんの席は、後ろのあの席を使ってください。それでは、授業を始めます」
ウチは教師に言われるままに後ろの席まで歩いた。
何処の地域でも、どの平行世界でも、こないな大人になりきる前のガキを集めたところは似たようなもんやな。無関心な奴、好意を寄せてくる奴、興味本位の奴、ほんで敵意を寄せてくる奴。
さらにおもろいのは種属がちごても、敵意を寄せる奴は大体同じ顔をしとる。ここはあの姉御が治める教室のようやな。
それから窓際が、犯人の士佐山 誠二の机か。落書きの量を見れば彼が相当に抑圧されとったことが分かる。
さて、数え切れないほどの転生者をサポートしてきた経験から、転生者がこないな『学校』に入るとパターンは大体同じ。ウチは転生者やないけどね。この後何処かで、ウチに好意を持っとる隣の『安藤 みこ』ちゃんが話しかけてくる。ほんで話しとると、敵意をもった姉御がウチにマウンティングを仕掛けてくると予想や。
◇ ◇ ◇
古典、数学、英語、日本史、物理と退屈な授業を寝んと何とか乗り越えとると、
「ねえねえ、千野さん、今日のこれから空いている? わたしラノベ研なんですけど、千野さん、興味ないかなと思って」
キター。しかもラノベ研って渡りに船や。
でもって、
①断る。②承諾する。③無視する。
当然、②一択やろな。
「有り難う。ウチもラノベには興味があるわ」
と安藤さんに答えた。
教科書を鞄に詰めて、席を立とうとしたとき、
「おい、新入り、ちょっと面貸しな! 良いよな安藤」
と割り込んできた奴がいる。
予想通りやん。すると気の弱い安藤ちゃんは、逃げるように辞退するよ。たぶん。
「えっ、ええ、千野さん、ごめんなさい」
と安藤さんが謝る。
安藤ちゃん、明日ね。
さて、こっちの威勢のええ兄ちゃん、姉ちゃんは、ほう、逃げられへんようにウチを取り囲むのね。ちょっと怯えてみっか。
「わ、わかりました。ら、乱暴はおやめください。あれー」
「お前、大げさだな。まだ何もしてねぇだろうが。取りあえずついてこい」
へいへい。
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