70、ぎしろく弁当
公園に着いて、大きな池の畔に敷布を敷いてお弁当を広げた。
「おお……」
「すごいな」
ジェンスとお兄様が呟く。
ジェンスが持っていたお重は一段目におにぎりぎっしり。二段目におかずぎっしり。三段目にお煮染めぎっしり。
お兄様が持っていたお重は一段目にいなり寿司ぎっしり。二段目におかずぎっしり。三段目にデザートとしてみたらし団子ぎっしりだ。ぎっしり×6。略してぎしろく。
うん、三人で食べるにはぎしろくはちょっと多いかもな。
「あ。ティアナ、よかったら一緒に食べない?」
お弁当を食べる場所を探してうろうろしていたティアナと友人を見かけて声をかけた。
「ホーカイド様、サイタマー様。お邪魔してもよろしいですか?」
「ああ、かまわない」
「レイシーがいいならなんでもいい」
ティアナは隣に敷布を敷いて、ちょこんと腰掛けた。
「こちら、同じクラスのエリシア様とチェルシー様ですわ」
「は、初めまして。エリシア・フックイーと申します」
「チェルシー・カオシズです」
ご友人二人はお兄様の前でがちがちに緊張していた。
思えば、ティアナはお兄様の前でも平然としているのよね。こんなに絶世の美形なのに、アルベルトの野郎がいるから、お兄様には興味がないのね。くうぅ、アルベルトめ!
「おう、アルベルト! お前もこっちで食べようぜ」
ジェンスが手を振ってアルベルトを手招いた。
「やあ。座ってもいいかな?」
「俺の隣、あいてるぞ」
寄ってきたアルベルトに、自分の隣を叩いて勧めるジェンス。
そういやすっかり忘れてたけど、この二人、親友なんだった。
ティアナだけじゃなく、ジェンスまでアルベルトのことが好き(友情)なの? うわーん。私の婚約者まで奪う気なのねー!(冤罪)
「ジェンス! これ食べて!」
「うん?」
私はおかずを小皿に取り分けてジェンスにくっついた。アルベルトの方ばっか見て楽しそうに話すだなんて、これは浮気じゃないかしら?
いえ、でもジェンスとアルベルトは幼い頃からの親友で、そこに後から割って入ったのは私……?
アルベルトに「この……泥棒猫!」と罵られるのは私の方なの!?
そうか。私はやっぱり悪役令嬢なのね。アルベルトは幼馴染ヒロインポジなのね! 絶対に負けないわ!
「レイシー?」
むすっとしながらジェンスに抱きつく私を見て、男達は首を傾げていたけれど、ティアナは「ぷくく」と肩を震わせて笑っていた。
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