40、ハッピーエンド!
「マリヤ。俺の方こそ、君が当たり前に俺のことを待ってくれていると思っていたんだ。だけど、迎えにいったら君は部屋にいなくて……俺じゃない誰かに誘われてしまったのだと思って生きた心地がしなかった」
テッドが跪いたままマリヤに語りかける。
「迎えに行って、君に俺の贈った花をつけてもらうつもりだったのに。どうしてもっと早く誘わなかったんだって、自分に怒りが湧いた。他の誰かの隣にいる君を見たくないんだ。マリヤ、まだ間に合うのなら、俺と……」
マリヤが振り向いた。涙に濡れた瞳でテッドをみつめる。
「花は、部屋に置いてきてしまった……こんな俺なんか、嫌になったかもしれないけれど……マリヤ、小さい頃から君のことが好きだった! 俺と、結婚してほしい!」
テッドの不器用で真摯な告白に、マリヤの瞳から涙がこぼれた。
「テッド……っ! 私、私こそっ、ずっとテッドのこと……好きなのっ、ずっと……!」
「マリヤ!」
マリヤがテッドの手を握り返し、涙を流して微笑む。
幼なじみが想いを伝えあい、恋人になった瞬間だった。
ふわああ~んっ、少女マンガーっ!!
会場中から拍手が沸き起こる。涙ぐむ女子もいる。感動のシーンだわ。
「……ちょっと」
大盛り上がりの会場を眺めてじーんとしていると、背後から不満を湛えた声がかけられた。
「なんなのよ! 誰も庭に出てこないから、先に出て待ってたのにアルベルトもルイスもガウェインもナディアスも全然出てこないし! やっと誰か来たと思ったらモブ男子だし! 「庭に誰か来なかったか?」って聞かれたから答えてたらいきなりこんな展開になるし! もう、なんなの!? 私はこんな展開のために夜露に濡れてた訳じゃないのよ!」
そうか。頑張ってスタンバってたのね。ご苦労様。
「レイシー。ここにいたのか」
ニチカはぷりぷり怒っていたが、ちょうどジェンスが来てくれたので私はニチカを置いて会場に戻った。
「くっ……このままじゃ終わらないからねーっ!」
背後から封印される寸前の魔王みたいな台詞が聞こえてきたけど気にしなーい。
立夏祭のヒロインは完全にマリヤ・アーキタですわ。
ニチカ・チューオウは出直していらっしゃい。
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