35、衝撃の事実
大変な事実に気付いてしまった。
寮の部屋に帰り、アンナに世話をやいてもらい一息付いた後で、私はそのことに気づき驚嘆した。
いいえ、落ち着いて。まずは確認するのよ。
震えそうになる手で指を折り、一つ一つ確かめる。間違いない。
「東北六県が揃った……」
ルイス・ミヤッギ
デイビッド・モリアーオ
マリヤ・アーキタ
テッド・イッワーテ
ステファン・クシマフ
アーヴィン・ヤーマガッタ
だからどうしたと言われると困るけれど、とにかく東北六県が揃ったのよ。
今さら気付くだなんて、どうやら私も朗読会の準備で思った以上にいっぱいいっぱいだったようね。
「お嬢様、そろそろ準備をしましょう」
アンナが櫛を手に微笑む。
いけないいけない。今日は立夏祭。
東北六県に気を取られている場合ではないわ。別に東北六県が揃ったからといってスーパー東北パワーとかが使えるようになる訳じゃないしね。
ジェンスから贈られた赤い花を、アンナが落ちないように髪に飾ってくれる。
「とっても素敵です! お嬢様」
「ありがとう」
鮮やかな赤い花のおかげで顔色も良く見える。
「では、行ってくるわね」
「はい! 馬の骨にお気をつけて!」
その馬の骨にエスコートされてダンスホールに行くんだけどね、私。
寮の入り口に出ると、迎えに来てくれたジェンスと、たぶん見張り役のお兄様がいた。
「レイシー! 可愛いな! 赤い花が似合っている!」
私の贈った花を胸に飾ったジェンスがでれでれと駆け寄ってくる。
「必要以上にレイシールに触るんじゃないぞ。常にホーカイド家の目がお前を狙っていることを忘れるな」
鋭い目でジェンスに忠告するお兄様は、恋人も婚約者もいらっしゃらないので花をつけていない。その胸を私の花で飾りたい! と狙っている女の子は腐るほどいると思うけどね。
それにしても、我が婚約者はもしや影の者に監視されたりしてるのかしら?
「さあ、行こうか」
ジェンスが差し伸べてきた手に手を重ね、私は立夏祭の会場へと向かったのだった。
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