第33話 足手まとい

「簡単に防いだ!?」

「黒羽君! 無理をするな!」

「無理なんてしてません! まだいけます!」


 負けるものかと叫びながら出雲も剣を振るう。優雅と出雲の連撃がハニエルを襲う。出雲は出来る限り優雅の攻撃に合わせるように轟雷を振るって攻撃をしていると、ハニエルが後方に飛んで、体の前面から光を放った。


「こ、この光は何だ!?」

「眩しい!」


 優雅と出雲が手で目を覆っていると、ハニエルが優雅に向けて突貫をしてくる。ハニエルは変化させた両腕を使用し、優雅に斬りかかる。


「こいつ!? 空で見せた速さで!」


 優雅は空で戦った時のような素早さのハニエルの攻撃を辛うじて防いでいた。だが、次第に頬や腕を斬られてしまい、優雅の体力が奪われていく。


「くそ! やっぱり俺より強い! 出雲君! ここまでだ! 君は逃げろ!」

「で、でも! 俺だって!」


 優雅とハニエルから離れた場所にいた出雲に優雅が逃げろと言う。出雲はまだやれると言うが、優雅とハニエルの戦闘を見ていると次第にレベルが違うと思い知らされていた。


「凄すぎる……一撃一撃が視認できない……」


 優雅とハニエルが鍔迫り合い、斬り合っている。攻撃し防ぎ、また攻撃をする。お互いに生死をかけた戦闘を出雲が見ていた。


「鍔ぜり合う瞬間しか動きが見えない……優雅さんと敵の姿が消えたり見えたり、とてつもないスピードで動いているのだけは分かる……」


 出雲が唖然とした顔で優雅を見ていると、ハニエルの放った魔力の刃が出雲に迫っていた。


「く、くるな!」


 唐突の攻撃で防ぐことが出来なかった出雲は、死んだと確信をした。だが、その瞬間一人の男性が魔力の刃を防いでくれたのである。


「せ、先生!」


 出雲に迫る攻撃を防いだのは吹き飛ばされていた景昌であった。景昌は頭部から血を流しながらも、持っていた長剣で魔力の刃を防いでくれていた。


「たまには先生らしいこともしないとな。無事か!?」

「だ、大丈夫です! ありがとうございます!」


 出雲は目の前にいる景昌の背中を見て言う。

 景昌は魔力の刃を防ぐと、優雅と共に戦おうとしていた。


「今の俺じゃ足手まといだな……優雅の言う通りにここは逃げた方がよさそうだ。もういいだろう?」


 景昌が背後にいる出雲に逃げようと言うと、出雲は俯きながら分かりましたと言った。

 

 戦闘をしている場所から離れた位置に逃げていた愛理が、出雲と影臣にこっちよと大声で叫ぶ。その声を聞いた二人は愛理のいるビルの影に向かって走って行く。


「勝手な行動をしないで! そのせいで先生が怪我をしたのよ!」


 ビルの影に来た出雲に愛理はすぐに注意をした。

 景昌が怪我をしたことや、自分勝手に動いたことを注意すると、出雲は愛理にごめんと謝った。


「謝ればいいわけじゃないわ! 勝手なことはもうしないで!」

「分かったよ……気を付ける……ごめん……」


 出雲が愛理と景昌に謝ると、二人はもういいよと口を揃えて出雲に言った。 

 出雲がこれからどうすればいいのかと二人に話しかけようとすると、出雲たちの背後から俺に任せろいう声が聞こえた。


「源十郎さん!? 体は大丈夫なんですか!?」

「ああ。俺はまだ死ねんよ」


 源十郎が多少咳き込みながら出雲に近づくと、持っている轟雷を返してもらおうかと出雲に話しかけた。

 出雲は源十郎の使ってすみませんと言いながら、頭を下げた。


「よい。多少は戦況が変わったようだから許す」

「普通は勝手に武器を使ったら処罰されるから、気を付けてよ!」


 景昌は源十郎のに申し訳ありませんと何度も謝っていた。

 出雲は謝る景昌の姿を見て、とんでもないことをしたと冷や汗をかいていた。


「す、すみません! もう勝手に武器を使いません!」


 出雲のその言葉を聞いた源十郎は、静かに出雲の前に歩いた。

 そして出雲の右肩に手を置くと、状況が変わらなかったら殺していたと小さな声で呟く。


「す、すみませんでした……」


 一瞬放たれた源十郎の殺気を受けた出雲は、その場にへたり込んでしまった。源十郎は好転したから許すと言い、心と共に強くなって俺を見返せとも言う。


「心と共に強くなります!」


 地面に座りながら出雲は、源十郎の背中に向かって強くなると言う。

 その言葉を聞いた源十郎は、前方を向きながら出雲たちに見えないように小さく笑っていた。

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