第20話 初任務

「景昌さんは、俺が魔法犯罪者に襲われていた時に助けてくれたんだ! それに試験の時にも応援をしてくれたんだ!」


 嬉しそうに愛理と竜司に語る出雲を見て、景昌はその辺にしてくれと静止をした。


「恥ずかしいし、そろそろ説明とかをしないといけないからな。教室は30人は入れる広さだが、この特進クラスは君たち3人専用の教室だ。設置してある椅子に座ってくれ」


 景昌が前方に置いてある3人分の机と椅子を指差して、出雲たちを椅子に座らせた。そして、黒板にチョークで何かを書き始めた。


「君たちはこれから魔法騎士団の下級任務を行いながら、魔法の勉強や勉学にも励んでもらうことになる」


 魔法騎士団の任務を行いながらと聞いた出雲たちは、そんなことしていいのかと不安になっていた。竜司だけは面白そうだと一人呟いていた。


「篁理事長の働きかけによって、下級任務なら行っていいとなった。しかし、危険があるには変わりがないので、魔法騎士団から派遣された騎士団員が共に行うことが条件となってな」

「どうしてそうなったんですか?」


 出雲が任務を行うことになった理由を聞こうとすると、景昌がチョークで何かを書き始めた。


「君たちはなぜこの任務を行いながら学ぶこととなった理由だが、それは近頃の魔法騎士団の戦力の低下や、騎士団員の質の低さが原因であると共に、魔法犯罪者の増加も要因となっている」


 質の低下と戦力の低下と聞いた出雲は、そんな話は聞いたことがないと思っていた。

 

 しかし魔法犯罪者の増加という点においては、自身も巻き込まれた魔法犯罪者を見たのでその要因においては理解ができた。


「この国立中央魔法高等学校以外の魔法高等学校でも、俺と同じような魔法騎士団員が各都道府県に赴任をして少数精鋭を育て始めているはずだ」

「ここ以外にある魔法高等学校って結構数あるわね。上位高から下位校まで通っている生徒を育てるプロジェクトなのね」


 愛理があの男はと聞こえない小さな声で何かを呟いていた。出雲はその説明を聞いて、任務って戦闘もあるんだろうなと怖い気持ちを抑えようとしていた。


「多くの魔法高等学校との交流もあるから、そこでその時の自身の強さを確かめるのもいいかも知れないな」

「それは楽しみだな。俺が一番最強になってやる!」


 竜司が俺が一番だと言っていると、景昌がそうなってくれと微笑していた。


「さて、一般クラスの生徒たちは既に帰宅をする時間であるが、俺たちはそうもいかない。これから任務に向かって実践訓練を行うつもりだ」

「もうやるんですか!?」

「早速なのね」


 出雲と愛理が早速任務をするのかと思っていると、竜司が燃える展開じゃねえかと喜んでいた。


「で、俺たちの武器とかはあるのか?」


 竜司が景昌にタメ口で話しかけると、君は口の利き方を覚えた方がいいと景昌が注意をしていた。


「そのうち直しますよっと。武器はどこですかね?」

「口調は直した方が身のためだぞ。と、武器は君たちの後ろにある格納ボックスに入っている」


 格納ボックスを見た出雲はその数の多さに驚いていた。その理由は、1つかと思えば5個もボックスがあったからである。


 それぞれのボックスに武器が1つ入っており、出雲はその中の1つを開けた。


「長剣が入ってる。俺にはこの武器があっているのかな」


 出雲はボックスの中に入っていた長剣を手に取ると、その形を眺める。出雲が手にした長剣は、剣部分が銀色で握りが黒色の魔法騎士団で配布されている支給武器であった。また、愛理や竜司が選んだ細剣や大剣も支給されている武器となっていた。


「武器を選んだかな? それじゃ早速任務の場所に向かおうか」


 景昌はそう言うと一枚の紙を配った。その紙には任務の詳細と目標のことが書かれていた。


「都内近郊に潜伏をしている魔法犯罪者の捕縛となる。魔法犯罪者といっても軽微な犯罪だが、犯罪者だ。敵も応戦をしてくるから、用心をするように」

「分かりました!」

「了解です」


 出雲と愛理が返事をしていると、竜司は大剣を見ながら気を付けると景昌に返事をしていた。


「学校の外に車を用意しているからそれに乗ってくれ。では、行こうか」


 景昌を先頭にして出雲たちは教室を出て行く。学校の外に移動をすると、5人乗れる黒い自動車が校門前に停車をしていた。景昌が運転をするらしく出雲たちに乗ってくれと指示をする。


「全員乗ったな? それじゃ、発進するぞー」


 景昌が車を発車させると都内近郊に向けて移動を始めた。車内では出雲達に会話はなく、どこか重苦しい雰囲気が漂っていた。


「君たち仲悪いの? 全然話さないけど……」


 景昌が車内の重苦しい雰囲気を感じ取ったらしく、何か話そうとしていた。愛理はその言葉を聞き、緊張しているだけですよと笑顔で返していた。


「そうか? ならいいけど、一応君たちの担任教師もしているから仲良くしてもらわないと困るんだよね」


 空笑いをしながら運転を続けている景昌は、都内近郊の行く場所を説明し始める。


「都内の中心部から少し外れた場所にある、取り壊し予定の商業施設に潜伏をしているらしい。現在の魔法騎士団は全員で払って任務にあたっているので、手が回らなくてこっちに任務が回ってきたという感じだ」

「そうだったんですね。取り壊し予定の商業施設って、昔からある海側のあそこですよね?」

「そうだ。一昔前に栄えたらしいが、今じゃ人気がない古びた町となって運営資金が付きて施設を閉じたらしい」


 出雲はそんなところがあったのかと考えながら、車内から外を眺めていた。

 出雲は後ろに入れている武器を見て、実戦をするのかと緊張をしてしまっているようである。


「緊張をしているの? 手が震えているわよ?」

「はは……バレてたか……」


 出雲は実戦をするのが怖くてねと返事をした。すると愛理が魔法騎士団に入りたいのでしょうと続けて言う。

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