第18話 突然の出来事
「ミサさんと話している時は周囲に聞こえないんだったね」
「そうよ? 思い出したようで良かったわ」
ミサの声を聞いて、一旦落ち着くことが出来た出雲。ミサが先ほど言っていた何か起きたのという意味を聞いてみることにした。
「さっき何か起きたって言ってたけど、何か感じたの?」
「うーん……寝てたから良くは分からないけど、何か催眠のような何かをかけられた気がしたのよねー」
ミサが腕を組みながら唸って答えているんだろうなと思いながら、出雲は催眠ってどう解除するのと聞いてみることにした。
「催眠って決まったわけじゃないけど、魔力を全身に循環させてその魔力を体外に排出すればいいのよ。要は力抜いた体に、一気に力を入れる感じよ」
そう言われた出雲は、分からないけどやってみると返事をした。
その出雲の返事を聞いたミサはもう少し寝るねと言って眠ってしまった。
「あ、寝ちゃったか……でも今は言われた通りにするしかないか」
出雲はミサに言われた通りにすることにした。
今はそれしかないし、ミサが洗脳と言っていたのでやってみる価値はあるとも考えていた。
「色々説明をしているけど、ミサさんに言われたことをした方がいい気がする」
出雲は理事長の話を聞きながら、目を瞑ってミサに言われた通りに全身に魔力を循環させた。そして体の力を抜いて一気に全身に力を入れた。
全身に一気に力を入れた出雲は布団の中で息苦しくなり、布団から顔を出して息苦しさから解放されたような顔をしていた。
「はぁはぁはぁ……急に息苦しさが……」
布団に潜って息が苦しく鳴ったかのような感覚を感じていた出雲は、何度か大きく深呼吸をして息を整え始めることにした。
「ほ、本当に催眠にかかってたんだ……今までの説明は嘘だったのか?」
周囲を見渡すと、背もたれに背中を預けて目を瞑っている生徒ばかりであった。
出雲は本当だったのかと、驚いた表情をしながら椅子から立ち上がってしまった。
「ほう、君が一番最初に目覚めたか」
出雲に話しかけたのは、先ほどまで説明をしていると思っていた理事長であった。出雲は突然理事長に話しかけれたことによって咽てしまう。
「ゲホっ……あ、はい……催眠? かなと思いまして……」
催眠かもしれないと思いって解いた出雲の言葉を聞いた理事長は、よく気が付いたなと微笑していた。
「たまたまです……」
「それでも気が付いたのは凄いことだ。誇っていいぞ」
誇っていいと言われた出雲は、気が付いたのはミサさんなんだけどなと心の中で呟いていた。理事長はさらに出雲に君の名前はと聞いてくる。
「く、黒羽出雲です!」
緊張をしながら自身の名前を伝えると、理事長は覚えておこうと返答をした。そして理事長が講堂内にいる教師陣に、もう少し待とうと言い始める。
「人数が決まるまではこのまま待つしかないだろう。黒羽君も、もう少し待ってくれたまえ」
「わ、分かりました!」
緊張をしながら返答をした出雲は、椅子に座って深呼吸を始めていた。緊張したと小さく呟きながら、終わりというまで待つことにした。
「催眠中に理事長が説明をしてたけど、催眠が終わったら再度説明をしてくれるのかな? 催眠中に受けた説明は本当のことなのかな? それとも嘘?」
腕を組みながら出雲は、本当の説明だったのかなと考えていた。
嘘を言うわけないしと考えていると、一人の女子生徒の声が聞こえてきた。
「あう……一体なんなの? 私は入学式で説明を受けていたはずなのに……」
何度か咳をして息を整え始めているのは、出雲と共に試験で戦った篁愛理であった。愛理は息を整え終えると、目の前の壇上にいる理事長を睨みつけているようであった。
出雲は愛理を見ると、一人で催眠から脱出するなんて凄いと思っていた。愛理を見ていた出雲は、自身から遠い場所にいる愛理に声をかけられないのでただ見ていることしかできなかった。
「おじい様……そういうことね……相変わらず性格が悪い」
出雲には聞こえていないが、壇上の理事長を睨みつけて何かを呟いていることだけは分かっていた。
「何かを言っている? 確か同じ篁って名字だから、何か関りでもあるのかな?」
口を尖らせて考えていると、さらに一人の声が聞こえてきた。
その声は男の声であり、とても苦しそうな声をしながら何度も咳き込んでいた。
「がはっげほっ……一体何が起きたんだ? 誰が催眠なんかで眠らせた!?」
出雲が聞いたもう一人の男の声は、神道竜司の声であった。竜司も何度か咳き込むと、壇上の理事長や周囲に立っている教師陣を見てそういうことかよと呟いていた。
「面倒なことをするもんだな。選ぶんなら戦いで選べよな」
腕を組んで竜司が理事長や教師陣を睨みつけている姿が、遠くにいる出雲にも見えた。
「絶対キレてるなあれ。すぐキレるんだからあいつは」
溜息をついている出雲だったが、愛理と竜司が催眠から目覚めたことで起きている新入生が3名となった。
理事長は出雲たち3人が目覚めたことで、何やら満足げな顔をし始めているようである。
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