第17話 入学式
「やべ!? 早く行かないと遅刻しちゃう!」
スマートフォンに表示がされている時刻を見て目を見開いていた。出雲は遅刻をすると言いながら小走りで学校へと向かっていく。
「悠長にしていたら遅刻になっちゃう! 早く行かないと!」
鞄を肩にかけ直して、学校に向けて桜が両側に植えてある綺麗な道を進んでいく。出雲には自身の前後を走る、同じように遅刻をしそうな生徒たちが小走りで走っている姿が見えていた。
「同じような人が走ってる!? 遅刻はまだしたくない!」
危ない危ないと言いながら汗をかいて走り続けること10分。
出雲はやっとの思いで学校に到着をした。国立中央魔法学校高等部がある敷地はとても広く。敷地内にある国立中央魔法大学の校舎も見えていた。
「こんな学校に合格したんだな……これから夢のために頑張るぞ!」
ガッツポーズをしながら校門前に立っていると、予鈴が鳴り響いた。
「予鈴が鳴ってる!? 早く集合場所の講堂に行かなきゃ!」
校門を抜けると、立て看板がすぐに目に入った。
その看板には新入生はこちらの講堂に向かうことと書かれていた。
「講堂って、あれか!」
看板の案内を頼りに歩くと、出雲の目に地上2階の木造の趣がある建物が目に入った。その建物の側に近寄ると、一人の若い男子教師が声をかけてきた。
「君は新入生かな?」
「あ、はい。そうです」
出雲はすぐに答えると、若い男性教師が名簿のような紙を持っていた。その紙を見た若い男性教師は、出雲に名前を教えてくれないかと話しかける。
「黒羽出雲です。よろしくお願いします!」
とりあえず元気な声で言おうと思い、出雲はハキハキとした声で自身の名前を言った。すると若い男性教師が、持っている紙に何かを書いているようであった。
出雲は何を書いているんだろうと不思議そうな顔でその場に数秒間立ち続けていた。
「よし、黒羽君だね。講堂の中に入って指示に従ってくれ」
「分かりました!」
出雲は講堂の入り口である木製の扉を開けると、そこには多数の出雲と同じ新入生たちが椅子に座っていた。ざっと数えて100人は有にいるだろうと出雲は思い、新入生がこんなにいるんだなと感じていた。
出雲が入った講堂は煌びやかな内装ではなく、落ち着いた雰囲気を感じる装飾が施されていた。
「俺はどこに座ればいいんだろう?」
講堂内の全体を見渡していると、一人の男性教師が出雲に近づいてくる。
「君の名前を教えてくれるかな?」
そう話しかけてきた男性教師に、出雲は自身の名前を講堂の入り口と同様に答えた。出雲の名前を聞いた男性教師は、左の通路にある椅子に座ってくれと言う。
「椅子に名前の書かれた紙が置かれているから、それを目印に椅子に座ってくれ」
「分かりました! ありがとうございます!」
指示された通りに出雲は動くことにした。左側に歩きながら、自身の名前が書かれている紙を探しながら段差を下りていく。
最下段に行くと自身の名前が書かれた紙を見つけた。
「一番前の椅子か。なんか緊張するな……」
軽い腹痛を覚えながら、出雲は椅子に座って入学式が始まるのを待つことにし、椅子に座って前方にある壇上を見つめていた。
早く始まらないかなと出雲が考えていると、講堂の明かりが不意に消えた。
「あ、始まるのかな?」
暗くなった講堂内祖見渡していると、壇上に一人の短髪で白髪をしている初老の男性がスーツを着て歩いてきていた。
その初老の男性は、壇上に置かれているマイクの前に立つと何度か咳ばらいをし始める。その咳払いの声からでも分かる、渋みのある重みを感じる声をしていた。
「あの人が校長なのかな? パンフレットとかでは見たことがないけどなー」
出雲は国立中央魔法学校高等部のパンフレットや受験の際に見た知識を思い出すも、壇上にいる人の姿を見た覚えがなかった。
「みなさん、ご入学おめでとうございます。私は本校の法人理事を務めています篁源吾と申します。みなさんは本校、国立中央魔法学校高等部に入学をして何を成し遂げたいですか?」
成し遂げたい。
出雲は壇上で言葉を話す理事長を見て必ず魔法騎士団に入りたいと考えていた。
出雲は話を続けている理事長の話を静かに聞いていると、ガクッと眠くもないのに寝落ちしそうな感覚に陥った。
「急になんだ? 眠くないのに眠りそうになった?」
突然寝落ちしそうな感覚に陥った出雲は、周囲を見渡して同じ感覚を感じた人はいるのか確認をした。すると周囲の新入生たちも周囲を見渡していた。
「俺だけじゃないみたいだ。何だったんだ?」
出雲は不思議に感じながらも、理事長の説明を聞くことにした。
「君たちは3年間この学校で多くのことを学び、多くの苦痛も感じることでしょう。しかし、学友と高め合ったり時にはぶつかることで新たな発見があることでしょう」
出雲は高め合う友達を作りたいなと考えていた。理事長の話を聞いていると、不意にミサの声が聞こえてきた。
「何か起きたの? 催眠にかかっているようだけど」
「え!? 何も起きてないよ!?」
突然ミサに話しかけられたので、出雲は驚いた声を発してしまった。
周囲に聞かれたかと思った出雲は、以前にミサが二人が話すときは二人だけにしか聞こえないと言っていたことを思い出した。
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