第2話 出会いと意気込み
魔法騎士団の男性は剣を腰の鞘から引き抜くと、包帯を巻いている男に向けて構え始める。剣を構えた魔法騎士団の男性の顔からは、先ほどまでの笑顔が消えていた。
「いくぞ」
そう騎士団の男性が小さく言うと、勢いよく包帯を巻いている男に向けて駆け出した。出雲はその姿を見て、あれが魔法騎士団なんだと感じていた。
「凄い……素人目から見ても動きが速いし一切の隙がない……」
魔法に関する犯罪を取り締まり、国民を守る仕事をしている魔法騎士団。出雲は目の前で戦っている男性を見て、魔法騎士団に入りたいと思うようになっていた。
「国立中央魔法学校に行きたいとは思っていたけど、その先の未来を思い描いていなかった……けど、俺の行きたい未来が決まった!」
俺もあの人のように皆を守れるようになると、包帯を巻いている男と戦っている魔法騎士団の男性を見ながら心の中で決心をしていた。
出雲がそう心の中で決心をしていると、目の前で魔法騎士団の男性が包帯を巻いている男の腹部を剣で切り裂いている姿が目に入った。
「これで終わりだ! お前はなぜ魔法を悪用したんだ!」
「聖痕の導き……聖痕の導き……」
魔法騎士団の男性の問いかけに、聖痕の導きとしか包帯を巻いている男は答えなかった。
それだけしか答えない包帯を巻いている男に痺れを切らしたのか、本部で話の続きを聞こうと魔法騎士団の男性は言っていた。
「もう大丈夫です! 犯人は取り押さえました! あとは警察や消防が対処をしてくれます!」
その言葉を聞いた周囲の人たちは、歓声を上げて喜んでいた。出雲もその言葉を聞いて、魔法騎士団の凄さを垣間見た気がしていた。
「助けてくれてありがとうございます! 俺、魔法騎士団に将来入団したいと思います!」
「そうか! なら、国立中央魔法学校のような魔法を専門的に扱う学校に入るといいよ。そのような学校の卒業資格が必要だからね」
「分かりました! 来週、国立中央魔法学校を受験するので頑張ります!」
出雲の言葉を聞いた魔法騎士団の男性は、陸奥景昌だと自身の名前を出雲に言った。
「それじゃ、俺は犯人を連れて本部に戻るから、気を付けて帰りなさい」
「ありがとうございます!」
景昌に挨拶をした出雲は、その後ろ姿に向けて頭を下げていた。
格好よかったと呟く出雲は、国立中央魔法学校の絶対に合格をするぞと意気込んでいる。
「来週の試験頑張るぞ!」
なんとなく受験して、失敗して魔法の専門じゃない学校に行こうと考えていた出雲だが、陸奥景昌と出会ったことでその気持ちに変化があった。
絶対に国立中央魔法学校に入学をし、必ず魔法騎士団の一員となって人々を守る英雄になると決めた。
出雲は家に到着をすると、試験のために少しでも魔法を扱えるようにしようと考えていた。これまで魔法のことについては、出雲にとってそこまで重要なことではない。ただ何となく手から眩い光が出るなと思う程度であり、魔法を扱う才能があると喜ぶ親の言う通りに国立中央魔法学校を受験しようとしていただけであった。
国立中央魔法学校は魔法が扱える人であれば受験資格を得ることが出来るので、魔法の才能がある人は記念受験も兼ねて受ける人が多い。
しかしその受験者の中には本気で入学したいと考えている人もいるので、記念受験者との温度差の激し差が有名である。
「とりあえず、家に帰って準備をするか。あと3日後の月曜日にテストだから、時間がないな」
受験の準備がこれほどまでに楽しいと感じることはなかった。
どうしても合格したいとの気持ちが高まり、どれほど過酷な試験であっても乗り越えようと考えていた。 家に到着をし玄関を開けると、そこには母親と妹が待っていた。出雲は地元の駅に到着をすると、あと5分程度で着くよとメールを送っていたので玄関にて待っていたようである。
「なんか魔法の事件があったみたいだけど、大丈夫だった!? 巻き込まれてない!?」
「お兄ちゃんってすぐ首を突っ込むから、心配だよ!」
出雲を心配している母親と妹の名前は 楓と琴音という。母親の楓は綺麗な黒髪の腰にかかるまでの長髪をしており、琴音より少し高い身長をしている。また、琴音を大人にした見た目をしており、琴音と二人で歩くと姉妹に見られると少し自慢らしい。
妹の琴音は、琴音は茶色の髪色をし、長さは肩にかかる長さである。また、二重の目元が特徴的な可愛らしい見た目をしている。ちなみに、身長は楓よりも数センチ低い。
「怪我はないよ。大丈夫! 魔法騎士団の人に助けられたからね!」
「そうなの!? テレビでは姿が映ってなかったけど、その場にいたのね!」
「凄いね! 私も見てみたい!」
母親はテレビの報道番組で包帯を巻いている男のことを知り、その事件が出雲の通っている学校の側だと気が付いていたので、出雲が心配であった。出雲は楓と琴音に無事だよと言うと、3人でリビングに移動をした。
「疲れたー。何か飲もう」
リビングの床に通学鞄を置いた出雲は、冷蔵庫の中に入れてあるパックのお茶の食洗器の中に入っているコップに注いだ。
「お茶はやっぱり美味しい!」
「お兄ちゃんはお茶好きだね。ジュースとかは飲まないの?」
「俺は水とお茶がいいかなー。体に良いらしいしね!」
出雲はその後も美味しいと言いながら飲み続けていた。そして、お茶を3杯飲むと出雲は鞄を持って自室に移動をした。
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