イド
だれもがしあわせにはなりやしないわ。
ただしいことをすればしあわせになれるとはかぎらないもの。
しょうじょはいった。いみはよくわからない。
なみだはひかってにじになる。
だからだれもが、だれかのふこうをねがっているの。
しょうじょはつぶやいた。なみだをこらえて。
かのじょはてをのばした。
しらないせかいをともにすごした。
ぼくのしらないよるのいろ。
ほしふるまちのちいさなねいき。
ととんたたんとかけだした。
ぼくはあのときしあわせだった。
いつからだろう。
なにかが、変わってしまった。
彼女の言葉を、僕は今確かに理解している。
世界は反転する。
誰も彼もが幸せになれる、そんなのはただの御伽噺だ。
正しい裁きで泣く人がいる。
僕は語った。酷く、静かに。
落ちた涙が嫌に綺麗で、それが欲しくて傷付ける。
彼女は押し黙った。涙が頬を伝う。
僕は彼女の手を掴んだ。
慣れ親しんだ丑三つの暗闇。
雨音だけが街を包む。
慟哭なんて響かない夜。
ぼくが、僕の中で涙を流した。
やがて、雨と混ざって消えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます