第12話 鮎夢の決心
「優城 鮎夢君、椿 魅羽さん、至急職員室に来なさい」
顔を見合わせる私達。
「何やねん。いきなり」
「知らないよ。私だって」
私達は職員室に行き、校長室へと案内された。
「……あの……一体…何ですか?」と、私。
「君は、優城君が芸能人であり、テレビの仕事をしている事は知っていたのかね?」
ギクッ
「えっ?それは……」
「彼女は知りませんよ」
「えっ!?鮎…」
「俺は、両親と彼女の両親にだけ、お話しています」
「本当なのかね」
「本当です!」
「じゃあ、椿さん、あなたは教室に戻りなさい」
「えっ?でも…」
「先生が、そう言うてるんや戻りぃ。話は俺にしかあらへん」
「…鮎…」
鮎夢は、私を校長室から追い出すように廊下に出した。
「鮎夢っ!」
「俺の事は心配すな。俺自身の問題やし自業自得や」
パタン
ドアを閉める鮎夢。
「すみません。話、続けて下さい」
「本当に君は良いのかね?」
「はい。俺自身で決めた事です。芸能人であり、このままここにいる訳にはいきません。ここを辞めて業界の人間が通える学校に転校します。彼女、椿 魅羽さんの家も出て行きますので…」
「そうか」
「環境が変わる為、しばらく彼女は情緒不安定になるかもしれませんが、彼女をお願いします。この事は、学校側で留めておいて内緒でお願いします。これ以上は大きくせんといてもらってええですか?」
「分かりました」
「それでは失礼します」
「優城君、君に嫌な思いをさせてしまって申し訳ない」
「いいえ。いずれバレる前にケリつけとかな…迷惑掛かりますから。マスコミは怖いので、早目に手を打っておかな。失礼します」
校長室を出る俺。
「鮎夢」
「何や?お前、教室に戻ってたんちゃう?」
「戻ってないよ!戻れる訳ないじゃん!ねえ、何言われたの?まさか退学とかじゃないよね?」
「安心せえ。それはない」
「…本当に…?」
「本当や」
「…そっか…」
しかし、私にだけ内緒で鮎夢は色々と準備をしていた。
部屋を出ると、鮎夢が廊下にいた。
「あれ?鮎夢、今日、学校は?」
「俺、仕事やねん」
「そうなんだ」
「せや。先生には、こっちから連絡するさかい、お前は学校に行くんやで」
「言われなくても行きます!じゃあ行くね」
「ああ」
グイッと腕を掴まれ、壁に押し付けられキスをされた。
ドキン
至近距離で見つめ合う私達。
「鮎夢…」
再びキスをされ、深いキスをされた。
慣れないキスに戸惑う中、私は一気に全身が熱くなったのが分かった。
「顔、赤いで」
「だって…っ!」
再びキスをされた。
「鮎夢の馬鹿っ!いきなり何のさ!」
「誓いのキスしただけやで」
ドキン
「ほな、またな」
そう言うと部屋に入って行く鮎夢。
「遅刻したらアカンで。魅羽」
「言われなくても行きます!行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
私達は別れた。
「すまんな…魅羽…。お前が帰ってきた時は俺はもういてへんけど…必ず戻って来るわ…ホンマは…お前の事…好きなんやからな…」
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