彼 と カレ

ハル

第1話 ムカつく男

「魅羽(みう)ー」


「………………」


「魅羽ーーっ!」




ガチャ

私の部屋のドアを開けられるも気付きはしない。




「魅羽っ!」



スッとヘッドホンが外される。



「あっ!何すんのさ!人がせっかく、ayumu の曲を心地好く聴いてんのにさーー」


「さっきから呼んでたのよ!全く!そのうち耳が悪くなって聞こえなくなるわよ!」


「馬鹿馬鹿しい!そんなんだったら誰もが聞こえてないじゃんか!」


「そんな事より、ちょっと頼まれてくれない?」


「嫌っ!どうせ買い物か何かでしょう?かったるいよ!そんなの自分が行けば良いじゃんか!」


「そういう事じゃなくて、人を迎えに行って欲しいのよ」


「はあっ!?迎え?うわぁ~何それ!待ち合わせ場所に行くのって一番面倒じゃんか。だったら、まだ買い物の方がマシだし」


「大事なお客さんなの。今日から家に同居人が来るから、その迎えに行って貰える?」


「同居人!?イケメン?つーか同居人、ayumuだったら良いのにさ~」


「それは……無理な話しよ」


「分かってるし!そんな芸能人と同居なんて家には無理な話だし!で?何処に行かないといけないわけ?」

「羽田空港」


「はあっ!?嘘でしょう?冗談きついんですけど」



「本当よ。近くのお店に来るように向こうから言われているからお願いね」



私は出掛けた。




『あなたと同じ位の男の子がいるから。彼の名前は、優城 鮎夢(ゆうき あゆむ)君。かなりのイケメンだから』



「かなりのイケメン……って……ayumu 以上のイケメンいるわけないじゃんか!そういう奴に限って性格悪いに決まってるし!」





私は目的地に行く。


あっ!申し遅れました。


私の名前は、椿 魅羽(つばき みう)。

16歳の女の子で、4月から、高校2年生になる。


性格は男っぽいかなぁ~



そんな私は、ayumu というカリスマ的な芸能人が大大ファン!


そんな彼は謎だらけで、16歳という事で、ayumu という名前だけしか知らされていない。



「一体…どんな奴だろう?同じ位の男の子とか言ってたし」



店の前に行くと、貸し切りの札が下がっていた。



「貸し切りぃっ!?えっ!?待って……ここで……良い……んだよね……。しかも、高級そうな……」




私は店に入る。



「御客様、当店は貸し切りとなっておりますが……」



ボーイさんみたいな人が言った。



「はい……知ってます。私、ここに来るように親から言われて……待ち合わせしている人がいるんですけど……」


「失礼ですが、御名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」



「えっ?あっ……私、椿と言います。こちらの店で優城……鮎夢さんて方と……」


「椿 魅羽様……優城 鮎夢さんと待ち合わせで、お間違えないでしょうか?」


「えっ?あ、はい……」


「かしこまりました。奥へ御案内致します」


「奥!?」



≪ちょっと!待って!奥って……?≫



「失礼致します。御客様がお見えになりました」


「あっ!すまんかったな」

「関西?」



ボーイさんは去って行く。



「すみません、ありがとうございます。……あの、どうして……こんな奥の部屋……怪しいんだけど!」



「何がやねん!何か勘違いしてへんか?」



顔を合わせる。



「えっ!?あ……ゆ……む……?」

「初対面で、いきなり呼びすてかいな」

「いや……あの……芸能人の……ayumu にそっくりで……」


「あー、おるなぁ~。芸能人にカリスマ的な男。期待外れやで。俺似てるだけやねん。」


「そ、そうだよね……ビックリした!じゃあ別に、わざわざこんな手の込んだ事……」


「そうなんやけど、そっくりさんなだけで、芸能人の ayumuやあらへん。違うのに騒がれたらアカンやろ?迷惑が掛かるやろ?」


「確かに……」


「とにかく行くで」


「えっ?」


「お前ん家や!他に何処があんねん!アホか!お前は!それとも……」



グイッと腕を掴まれ引き寄せられる。



ドキッ



「ここで楽しい事でもするか?店の人に頼んで。ホテルでもええで。嬢ちゃんが、その気あるならな」




クールな口調で言われた。




ドキン



「なっ…!何言って……」




バッと離す彼。




「するかっ!同級生の女に興味あらへん!アホ!」



「ムカつくっ!やっぱりカッコイイ人に限って性格悪い!」


「ほな、お前は自分の体に自信おありですか?」


「ないよ!ないけど!」

「何やねん!」

「誰があんたなんかにやるか!」

「心配せんでも手ぇ出さへん!」



私達は店を後に出ると、家に移動した。




「あっ!そうそう。魅羽、鮎夢君とは同じ学校だから仲良くしてあげるのよ」


「はあぁぁっ!同じ学校って……冗談でしょ?」


「本当よ」


「何で?どうして?同居してるのバレたら……」


「仕方ないやん!手続き済ませてんねんから。安心せい。迷惑かからんように変装して行くし、バレんようにするから。お前は普通にしてればええから」



そんな私達の同居生活が始まるのだった。




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