第21話生意気な子供
上野礼二は、寒いので車の中で待機していた。
先輩の木下茂は今日も『人間ペット』を書いた少女のご機嫌取りだ。
どうせ、一発屋のガキだと思って礼二はバカにしていた。
仕方ねえなと思いながら礼二は車から降りてボロアパートの階段を上った。
会話が外まで丸聞こえだった。
「松本先生、次回作、書いてはくれませんかね?」
「嫌です!」
礼二は扉を開けてズカズカ部屋に入って行った。
「ボウリング行くぞ。」
気分転換がガキには必要だ。
コタツの中から顔だけ出した松本未来は、天使のように輝いていた。
こんな、可愛い、中学生は見た事がなかった。
礼二は、不覚にも一目惚れしてしまった。
礼二は、そんな気持ちを隠して未来の手を引っ張った。
車の助手席に座らせると勢い良く発進した。
ボウリング場に到着しすると茂はトイレに直行した。
未来も青ざめた顔をしている。
受付で金を払うとボールを未来に渡した。
「わたし、ボウリングした事ない。」
と未来が呟いた。
「ピンに向かって投げれば良いだけだよ。」
と礼二はアドバイスした。
不貞腐れた顔で未来はボールを抱えるように投げた。
ストライク。
こいつは何か持ってるかもしれないと礼二は思った。
直観だが。
ボウリング場を後にして三人は喫茶店に入った。
「お前、転校しろ!」
と礼二は言った。
茂は先生が決める事だと言ったがこいつは一押ししなくてはならないと感じた。
未来は、また青ざめた顔をした。
しばらくして未来は首を縦に下げた。
やっぱり、こいつは学校に行きたいんだと礼二は確信した。
ボウリング場で同世代の中学生を見て未来は羨ましそうな顔をしていた。
それからは、茂が転校する学校について話始めた。
未来は、ただ、聞いてるだけだった。
礼二は、大きな欠伸をした。
礼二は、未来の住処を探していた。
高級マンションと茂には言われていたが不動産屋に行って
一番家賃が安くて古いアパートを探させた。
見事までにボロいアパートを紹介された。
礼二は、環境が変わっても寂しくないように今のアパートと同じような居場所を未来に与えた。
引っ越しの日、未来には二人の友達が訪ねて来た。
二人とも、礼二が追っ払った。
未来は、少し元気になったようだった。
転校する学校は私立の学校に決めた。
私立の中学なら、金持ちの家が多いくて未来が作家でも嫉妬やいじめに遭わないと礼二は考えて決めた。
礼二は、仕事の合間を縫って未来の部屋を訪ねた。
理恵と翼が、遊びに来ていた。
「ボウリング行くぞ!」
と三人に礼二は言って車を走らせた。
理恵と翼は、ボウリング場に着くとトイレに直行した。
未来は、呆れた顔で礼二を見ていた。
「上野さん、運転荒いの自覚してますか?」
「あ?普通だろ?」
未来は、言っても無駄だと分かったのか無言になった。
二人がトイレから青ざめた顔で戻って来てゲームを始めた。
礼二優勢で始まったゲームだったが徹夜の疲れもあり翼に途中で抜かされた。
そこで、礼二はパチンコで負けたから金が無い、俺が勝ったら三人で金を出せと言った。
翼に耳元で「未来は俺の女だ。」と囁いた。
翼は、ゲーム中、ずっと未来を見てるのが礼二には分かっていた。
翼は、動揺したのかガーターだった。
大人げないが三人に金を払わせた。
三人がブツブツ、文句を言っていたのでファミレスでメシを奢った。
「お金、持ってるじゃないですか!」
と理恵が言った。
「俺は、勝負にハングリーなんだ。」
と言って仕事に戻った。
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