200～300字くらいで小説を書く

走馬灯フリーフォール

　今日死んだ。あの子が居ないと泣き暮らし五年、頭が鈍って十年、差し伸べかけた手を降ろした事を悔い二十年、ドブをかき混ぜたような眼のお前を雑踏から垣間見四十五年、あんなガキとうに余所へやったと吐き捨てられ六十年、乳飲み子と立ち尽くすお前を励まし七十年、子連れ家族の中心で笑うお前を見かけて七十一年、きっと好き合ってたのを確かめずじまいで見送り八十五年、ずっと一緒と指切りをした日からは、ちょうど百年。