即興小説「チョコレイトラプソディ」

貴音真

第1話「ゾンビちゃん」

「あ、あの!これ、受け取ってください!」


 バレンタインデーに奇跡が起きた。

 俺は初めてバレンタインチョコを貰った。

 ただ、その相手は普通ではなかった。

 俺にチョコレートをくれた彼女の名はゾルバルディ・ン・ビリエッタ。

 通称・ゾンビちゃん。

 彼女は可愛い。物凄く可愛い。

 瞳は綺麗な宝石の様に輝き、肌は新雪の様に白く透き通り、艶のある髪は絹糸の様に滑らかだった。

 近所でも評判の美少女。それが彼女、ゾンビちゃん。

 しかし、彼女には痛恨とも言える欠点があった。

 彼女は世界で初めて人間だった。正確には蘇ったのではなく、死んでいるのに意識を取り戻して動き出した人間だった。

 つまり、彼女は死人だ。

 俺の人生初のバレンタインチョコは、可愛い死人の女の子がくれたものだった。


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