2章 1.トーク

「女子会トーク~!!」


 俺は宿にいる人全員に聞こえるのでは、と思う程声を張り上げた。途端3人ともこちらを向き俺の言った言葉を理解し呆れ顔に変化した。


「ロクさん……ロクさんは男ですよね……」


「リーダーって女だったんだな……知らなかったぜ……」


「……はい…これはすごいことを聞きました……」


 それぞれ発言して後ろに下がる。これは俺に引いているのだろう。ちょ~っと、本当にちょ~っとだけジョークを言っただけなのにこれまでとは。


「無理やり一滴の涙を~……」


「騙されませんよ!ってもう無理やりって言ってるじゃないですか!」


 優しく俺の頭を叩く。そしてアンカは「それでは」と話を切り出した。


「女子会トークじゃなくてこの『世界』の現状確認をしますよ」


「すまんすまん……まず…ずっと聞いてなかったことなんだけど…結局この『世界』はどういう感じなんだ?」


 語彙力が欠けたが伝わっただろう。俺はこの『世界』に来て魔人と魔王、賢者くらいで、この『世界』に何が起こっているのかなどを全く聞いていない。アニメとかの展開だと災厄の存在、とか災いを巻き起こす者的なものがある。ならこの異『世界』にもあるのではと考えた。


「この『世界』にいる災厄の存在。魔人。他にもいたら、どうしますか?」


「―――!?俺でも知らねぇぞ?亜人も一応知っていることは多いほうだぜ?」


 驚きを隠せれないガルを見て「大体の人はそう言います」と言いアンカは話を続ける。


「これは本当に嘘か本当か分からない神話のことに入ります。まず魔人は理を破ることで出てくる災厄の存在、ですよね?」


「ああ。それは前アンカから聞いたけど……」


「今回の話はちょっと違います。私が間違ってたわけでもないんですけど…」


 一瞬間を置きアンカは話し出す。


「ではっ!2人の災厄の存在のご紹介から参りましょう!」


 張り切るアンカに拍手を送る。他の2人は軽く苦笑気味だ。拍手が鳴りやむとアンカは真剣な表情で話し始めた。


「拍手をありがとうございます!まず災厄の存在、魔王。魔王は魔人の突然変異進化(ショックアップ)で生まれた存在です。がここからもう間違っていました」


「―――?どういうことだ?突然変異進化は間違ってんのか?」


 だとすると元々この『世界』に存在していたのか他の場所から来た、の二択しかない。一番可能性が高いのは最初の。


「―――元々存在していた、なのか?」


 俺はアンカに確認を取ると「はい」と返事をして小さく頷く。


「もっと詳しくすると人間や亜人が生まれた時、同時に生まれた謎の存在、とされてます」


 同時という部分に俺は引っかかった。同時に生まれたとすると人間か亜人のどちらかに類するはず。なぜ魔王だと分かったのだろうか。それに謎の存在と言われる理由も分からない。でも今はここで悩む意味がない。

 俺は悩むことを中断しアンカの話を続けてもらった。


「で、魔王は魔王城を造り当時の中心国ダーリアの国民に自ら魔王だと名乗ったのと魔人は理を破ることで召喚されると言ったことで彼は『魔王』という名、魔人は理を破った場合に現れるということ広まっています」


 おかしい。自ら魔王と名乗り敵に回る意味がないはず、魔人のことを知っていることもおかしくなぜ召喚すると教えたのか……何か作戦を立てていたのか?

 頭を悩ます。があとでいいだろうと思い話を聞く。


「その魔王を倒すべく賢者パルデンスと勇者ブレイヴが倒しに行ったんです。その時賢者と勇者の覚醒によって理が1度破れ、魔王は激怒、魔人は魔王の怒りに反応して従うようになった。これが神話に書かれている魔王ですね」


「やっぱおかしいな……」


 どうしてもおかしい。前にも今回も言っていたパルデンスはエンザエムなのか。俺が見たエンザエムの記憶にブレイヴはいた。この記憶が正しいのであればエンザエムやブレイヴは覚醒していないし魔王は激怒していない。魔人が魔王に従えていたのは最初の屋敷で認識済み。合っている部分と違う部分があるのは神話だからしょうがない。

 首を傾げて悩んでいるとエンザエムが「…ちょっといいですか…」と手を上げながら言う。


「賢者パルデンスはたぶん間違いです…。パルデンスは『ミイ・パルデンス』という私の友達の名前なので…」


 ミイという人は記憶を見た時にいた、桃色の髪の少女の回復術師だ。神話はいろいろとおかしいしややこしい。少し疲れるな~。

 ため息をつき椅子の背もたれに体を任せる。肩の力も抜けた俺を見て怒るエンザエムは可愛い。


「……賢者って呼ばれてたのは村の人とか……ミイちゃんは回復術師だったし……」


 アンカの怒り顔を眺めているとき小さく呟くエンザエムの声に気が付いた。


「どうした?悩み事なら言えよ?」


 そう問いかけたがエンザエムは首を横に振り「大丈夫です」と言い苦笑して黙り込んだ。

 何を考えてるのか分からないけど後でもう一回聞いておいたほうがよさそうだな……。


「それじゃあもう1人の災厄の存在を頼む」


「プンプンですけど!……分かりました。もう1人の『最強』災厄の存在を神話の話と推測とともに教えますね」


 頬を強張らせるアンカにつられて俺も頬を強張らせた。

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