終末カルテット+1

聖木澄子

1×0=「過日」

「あなたは、どうして世界を滅ぼしたいの?」


「私が滅ぼすんじゃねェ、私たちの《神》が滅ぼすんだ。そして再生が訪れる。私はその一助になりたいだけだ。信徒として。神の子の一人として」


「そうしねえと和了アガれねえからさ。博打打ちなればこそ、世界の一つくらい賭けてみねえとな。……それに、彼奴との約束だ」


「醜い終わりを見たくないからですわ。だって『視え』てしまったんですもの、ただそれだけ。惨めな終わりを迎えなければならないのなら、せめてわたくしの手で終わらせて差し上げるのが慈悲ではなくて?」


「もう見送るのも看取るのも懲り懲りでぬぇ……疲れてしまったのさ。永遠なんて生きるもんじゃない。だからせめて、君たちと。────老人の、些細な望みだよ」




「ではあなたは、どうして世界を救うの? 滅ぼしたいと願いながら、どうして終末を退けるの?」


 そんなの決まっている。

 他人に滅ぼされては、自分の目的が達せられない。




 何より、気に食わないじゃないか。

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