第4話:憤怒
「それをお前が口のするのか、ロバート。
聞くに堪えない悪口陰口を社交界に流し続けた腐れ外道のお前が。
アマーリエ嬢が婚約を辞退するまで追い詰めたお前が。
長男に生まれた以外に何の取り柄もない、才能もなく努力もしない。
王侯貴族の義務を全く果たしてこなかったお前が口のするのか」
ロバート王太子は余りの恐怖に震えあがっていた。
金玉が縮み上がって身体の中に入り込むくらい恐怖していた。
鼻水と涙が無意識にとめどもなく流れていた。
当然のことだが失禁してしまっていた。
王太子のズボンを塗らすだけに留まらず、床に水溜りを作っていた。
「うっひっ、ふっひゃ、ふっひっ、あっぐぅ」
地に這いつくばって謝る事ができたマクガヴァン伯爵はまだましだった。
王太子は詫びの言葉を紡ぎだす事もできないでいた。
身体が金縛りになって土下座をしたくてもできないでいた。
普段は調子のいい事を口にする腰巾着は隠れてしまっている。
彼らは卑怯で臆病で小知恵が回るので、ここで出ていったらアラステア王弟殿下に殴り殺されると理解していた。
「おい、ロバート、何か言ったらどうだ。
私は大将軍としての役目も、王侯貴族の立場に応じた義務も、何一つ果たしていないと言ったのであろうが。
私のどの行動が無責任なのか説明してもらおうか、ロバート。
説明もできんのか、そんな役立たずな口は必要あるまい。
まずは穀潰しのお前が大切な兵糧を無駄に喰わないようにしてやろう」
王弟はそう言うと王太子の顎を右手で握った。
強大な魔獣すら片手で握りつぶす王弟の握力だ。
ほんの少し力を込めただけで王太子の顎が粉砕された。
「ウギャアアアアア」
ようやく王太子が皆に聞き取れる大きさの声を出した。
もっともそれは悲鳴でしかなかった。
だが王太子が出したのは悲鳴だけではなかった。
激痛のあまり王太子は脱糞してしまっていた。
会場中に強烈な臭気が立ち込めた。
贅沢三昧の王太子の便は咳き込むほどの刺激臭を伴っていた。
「「あ、うひぃいいいい」」
ロバート王太子が殺されてしまうと思ったジョージ国王とジスレーヌ王妃は、隠れていた壇上から出ようとしたが、悲鳴をあげて直ぐにまた隠れてしまった。
王弟が殺意の籠った目で国王と王妃を睨んだからだった。
王弟の戦闘力ならば、何時でも国を乗っ取る事ができる。
王位の簒奪などその気になれば片手間でできる。
だが王弟は国民の生活に責任を持つなど絶対に嫌だった。
だから国王と王妃を殺す気は毛頭なかった。
王太子を殺す気もなかった。
だがやった事と口にした事の責任は取らせる気だった。
哀しそうな目で王太子を見ているアマーリエ嬢のために。
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