第28話 三章◇ありがちな最強の聖霊と聖獣 05

「君がどうしてもと言うから契約したが、僕の愛娘を傷つける奴なんて必要ない。契約を破棄しようか。」


「ヒッ──! やだ、ごめんなさいクロウ! そんなつもりじゃなかったの、アタシ、本当にそんなつもりじゃ」


「どんな理由があろうと君は僕の娘を愚弄したに他ならない。僕に似ていない? だから何だ?」


怒りをあらわに、オロオロとする天秤宮ライブラに父様が言い放つ。


「アリスは紛れもなく僕らの子供だ。それは守護を授けようとした五柱神がよくご存じだろう。それを君は何だ? 似ていないから興味がない? そうか、僕も君に興味がなくなった。」


君がいなくとも支障はない、と父様は言い切った。

え、それはどうなんだろう?

というか、怒涛の展開にちょっともうついていけないのだけれど。


「違うのクロウ、本当にアタシ、違うんだってば、ねえっ……」


天秤宮ライブラはブンブンと首を振り、視界に入った私を見て閃いたとばかりに目を輝かせて羽をばたつかせる。


「あ、あら! よく見たらとっても美人じゃない! クロウにはあんまり似てないけど、でも、とっても利発そうだし、まだ幼いのに自己紹介だってきちんとできるなんて素晴らしいわ! アタシ、美しくて賢いモノは大好きよ!」


だからサラちゃんもとってもいいと思う!ととってつけたように私を褒め出した。

いや〜、いくら父様が私に甘いからと言って、こんなおべっかで騙せるほどやわくはないでしょう。

それにしても、天秤宮ライブラはアレ、前々世で見た『浮気した側の人間』とおんなじようなことを言っているなぁ……。


「……今回だけは見逃すけれど、次はないよ天秤宮ライブラ」


え、そんなおべっかで許しちゃうんですか父様。マジですか。


「──っ、ええ、ええ! もう絶対にサラちゃんのこと変に言ったりしないわ! 本当よ!」


コクコクと頷いて、涙目になりながらそう言った天秤宮ライブラ。

そんな二人の様子を冷めた目で見ていた獅子宮レオが、フッと鼻で笑った。


「……何よレオ。何が可笑しいの?」


「いやなに、随分と必死だなと思っただけだ。そういえばお前は随分と今の契約者にご執心だったな?」


「ふん、アンタになにが分かるのよ。浮気モノのアンタに!」


二人(?)は仲が悪いのか、契約者である父様と母様を横目にギャンギャンと言い争いを始めた。

はぁ、と両親がため息を吐く。


「これだから、私たちはあんまり聖獣を喚ばないのよねぇ。」


「仕事にならないからね……まぁ、別々に仕事をさせる分にはいいんだけど……」


相性バッチリな両親にも、相性が悪いところがあるとは。

知らなかったなぁ。

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