第26話 三章◇ありがちな最強の聖霊と聖獣 03

「おはようございます、お嬢様。朝ですよ。」


ルナの声かけで意識が浮上する。気づけばすっかり朝まで眠ってしまっていた。けれどそのおかげか、昨日怒涛の出来事があった割にはすっきりとした目覚めだった。


「おはよ、ルナ……」


「まだ少しお疲れのようですけど……今日は支度が済み次第、旦那様の書斎へお連れしなければいけませんので。頑張って起きましょうね!」


ぐっと両手の拳を握ってこちらを励ますようにそう言われて、確か昨日母様にそう言われたんだったな、とあくびをしながら思い出した。

怖い笑顔の二人が、大事な話があるからと──

うう、何をするんだろうか。

思わず身震いをしてしまうが、行かないわけには行かないのだ。


──コン、コン。


「旦那様、奥様。サラお嬢様をお連れいたしました。」


入って構わないよ、と扉の向こうから少しくぐもった声の父様が返事をした。

ルナは優雅な所作で扉を開けると、部屋の中を見ることなく深く頭を下げる。ルナに促されて書斎へ足を踏み入れると、そこには朝の日差しに照らされた美男美女──父様と母様が居た。

キラキラと日差しを浴びて輝く白金髪プラチナ。

朝から目が眩しい。


「おはようございます、お父様、お母様。」


「おはようアリス。早速だけど、大事な話をしようか。」


「さ、座って座って! 今日は私がお茶を淹れるから!」


テキパキと母様がお茶をいれる準備をする横で、正面に座った父様がこちらをじっと見つめた。

何かを決意した表情で、手を組み合わせた。


「さて。アリスは聖獣を知っているかな?」


唐突な質問だ。けれど、この世界で知らないものなんているのだろうかという質問でもあった。


「もちろん、知ってるわ。」


聖獣とは、この世界でも12体しかいない霊獣の上位種だ。

元々は神様の手足となるべく生まれたらしいが、確固たる意志を持ったことで個として生きていくことが許された──というのが神話にある成り立ちだ。

確固たる意志を持った、という言葉に恥じない性格をしていて、契約するもしないも聖獣の気分次第。一人の人間としか契約せず、その人間が一生を終えるまでそばに居続ける一途な聖獣もいれば、数十年に一度、気まぐれに契約するものもいる。

それが聖獣だ。


「じゃあ、父様と母様の聖獣を紹介しよう。」


「──はい?」


それもまた唐突に、いきなりそう言われた。

10歳になる今まで、両親の聖獣に直接対面したことはない。そもそも、両親が契約しているとは聞いたことがあったものの、両親から直接聖獣と契約していると教えられたことすらないのに!

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