第8話 ありがちな前世の記憶? 07
「そうですね、あまりにも長いと王家連中に目も付けられるでしょうし。」
王家やら国やら、人間は大変ですよねぇとアクアエリオスは頭を振った。確かに、神様からすればこの世界の全ては平等で、その世界をわざわざつぎはぎに切り離している人間は、浅ましく見えるのだろう。
うんうんと頷きながら、フレイアがシュバッと手を挙げた。
「じゃ、サッサと加護を与えるよ! まずはアタシからね! アタシがサラの前世の事見つけたんだし!」
「では次は私ですね。私は前々世の記憶の欠片集めをしましたし!」
「そういう事ならそん次は儂じゃな。この集まりの声掛けに世界への調整なんぞは儂がやった! 儂が順当じゃろうて。」
「じゃあ、次は僕、かな。世界への調整とか、手伝ったし。」
「えー! 私! 私はぁ!? どうして最後なのぉ!? サラちゃんの魂は私の管轄だったんだしぃ、ライラちゃんの加護も私が与えてるのよぉ! 私が一番でも」
「有り得ないっての!」「ふざけるんじゃ有りませんよ売女が」「それはないのぉ」「却下、かな」
……おぉ、なんとも綺麗に否定の言葉が被った。
神様全員が私一人に加護を与えてやろうと順番を競い合う、というなんとも非現実的な光景に、少し、理性というか常識が飛んでいたようだ。
「いや。」
「ほらぁ! サラも嫌だって! やっぱりアタシからが」
「そうじゃあないんですよ!!!」
またしても、キンキンと神殿中に響き渡る声量で叫んだ。
順番なんてどうでもいい、でも、そういう事じゃない!
「私! 神様の加護なんて、いりません!」
「「「「「えっ」」」」」
神様の加護?冗談じゃない!
そんなものをもらってしまえば、それこそ王家、いやこの世界の国すべてに目をつけられてしまう。
そうすれば、結果として王家からの暗殺や他国からのスパイ……考えるのも恐ろしいような人生を歩まなければいけないだろう。
ちょっと恐ろしい想像までしてしまい、ブンブンと首を横に振ってイメージを振り払う。
「怖い怖い想像するだけで怖いありえない無理無理私今10歳でしょ死ぬ無理絶対死ぬ殺される」
「え、ちょっ……サ、サラ、さん……?」
前世の記憶に引きずられたのか、右手親指の爪を噛みながらぶつぶつと呟いていると、突然の変化に戸惑ったアクアエリオスに声をかけられる。
「絶対! 絶対に神様の加護はいりません! 結構です!」
「じゃ、じゃが……加護はあるに越したことはなかろう? なんぞ将来の役に立つじゃろうし、のう?」
戸惑いの表情を浮かべる神々を尻目に、私は叫んだ。
「今度こそ! 老衰で死にたいんです!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます