第7話 ありがちな前世の記憶? 06
「特に前々世は、零れ落ちたモノを掻き集めたものですし……かなり、大雑把なところしか残っていないはずです。前世も、細かなところは忘れてしまったかと。」
「……はい、そうみたいです。」
まず、前々世の『自分の名前』が思い出せない。顔や体つき、住んでいた部屋の間取りは思い出せるのに、部屋や土地の名称が分からない。小さい頃の記憶は霞のようで、ないに等しい。
どうでもいいようなことは思い出せるのに、肝心なことが分からない──。
また、前々世の記憶を取り戻したことで、前世の記憶にもムラが生じている。クリアに思い出していたはずの前世も、思い出せないところがあるようだ。
「その様子ですと、記憶の定着はきちんと終了したようですね……あぁよかった。」
こんなこと、数えられるくらいでしかしたことないですし──という、怖い言葉が聞こえてきた気もするが、それもそうだろうなと聞き逃しておくことにする。
というか、何回かしたことがあるのか。
「アハ、前世の記憶を戻したげることすら稀っていうかやんないもんね! 前々世とかハジメテだしぃ?」
めんどくさぁい、という声が聞こえそうな雰囲気。まぁ神様だからこそ許される言い訳だろう。
「さて、ここからが今回の本題じゃのう。」
……本題?と首を傾げると、グラインドはぎょっと体を揺らして目を見開いた。
「いや、お前さんくらい記憶を操れる子供なら、今日という日を人生の一大事と捉えると思うたんじゃが……?」
──ハッ!
そこまで言われて、ようやく思い出した。本題の前の話が濃すぎる上に長かったせいで、すっかり今日の目的が頭から抜け落ちていた。
今日の本題は『神の祝福』だ!
現状に気づいてバッと神々を見上げると、なんと全員がなんとも『良い笑顔』でこちらを見下ろしていた。
「そう、今日の本題は『神の祝福』、だよ。」
「そーそー! 神の、ね!」
「うふふ、楽しみだわぁ。どんな加護を与えようかしらぁ?」
「お前にその権利があると思ってるんですか? なんと厚かましい……。」
「やめいと言うのにお前さんらは……。いい加減にせにゃあ更に嫌われていくぞ?」
「ちょっ、私まで嫌われているような言い方はやめてくださいよ!?」
「……そろそろ、話が進まないと、今日中に、終わらなくなりそうだよ?」
「えっ……それは困るんですけど……。」
思わず素で声を挟んでしまった。だが、本当に困るのだ。
只でさえ普通の神託より時間が掛かっているのに、これ以上時間が掛かってしまえば両親が心配する。
それはもう、ものすごく。
ニホン風に言えば、度の過ぎた親バカなのだ。
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