ありがちな『異世界転生』にならなかったなんて好都合!
海林檎
第1話 ありがちな神様と遭遇!
サラ・アステリア・メルディロード、10歳。
私には、前世の記憶がある。
──のだが…ここの世界の人間には、大抵前世の記憶が残っている。
父様の前世は先々々々々代のメルディロード家の当主だったし、母様の前世は異国の踊り子だったそうだ。
ちなみに、私の前世は王家所属の魔術師の弟子で、あまり才能がないまま終わった。
と言うか、もともと才能がないのに魔術師に憧れて無理に弟子入りして魔法が暴発して爆死した。
前世の記憶は、一般的に3歳ごろから徐々に思い出されていくものだ。
私が2歳で前世をクリアに思い出してしまってから、2歳児とは思えないほど達観した目で空を仰いでしまったのは未だに家族の語り草だ。
さて、ここで何故このような話をしているのか。
それは10歳になった今日、神殿で『神の祝福』を受けたからだ。
この世界には神様が五柱あり、精霊も存在する。
剣と魔法の存在するファンタジー世界なのだ。
自分がどの精霊の加護を受けているか、どのレベルの加護を受けたのかを10歳になったときに神殿で「神からのお言葉」を頂くのだ。
神様と精霊にも貴族でいう爵位のようなものがあり、ざっくり分けると6段に分かれている。上位の存在から加護をいただくことが出来れば、例え平民でも出世のチャンスがあるので、10歳のこのイベントは人生の一大イベントといっても過言ではない……のだが。
「……はぁ……?」
2歳以来ではないか、と自分でも思うほどの、悟りきった目で上空の煌びやかな光を見つめる。
一応存在する各神の五体の像の上に、それぞれ五人……五柱の神様が顕現していた。
「いえ、ですから、その……」
五柱の一柱、アクアエリオスが心苦しいという眉根を寄せた表情で絞り出すように告げた。アクアエリオスは糸目で線が細く、如何にも苦労しています、という男性体だ。
「見ていただいた通り、なのですよ。」
「そ! あんたの転生はぁ、トクベツ♡なんだ。」
こんなにも嬉しくないトクベツ♡(ハート)はないだろう、とジト目でトクベツを言い放った五柱の一柱、フレイアを見上げてみると、パチンと綺麗なウインクを投げて寄越された。フレイアは言葉遣いよりも荒っぽくみえる女性体だった。つんつんと肩より少し上で跳ねた赤い髪が目に痛い。
フレイアの言葉に、頭を横に振ってアクアエリオスがため息をつく。
「例外、っちゅうたほうが正しいじゃろがい、火のフレイよぉ。」
アクアエリアスに同意したように呆れた声をかけるのは、五柱の一柱であるグラインドだ。どっしりした態度にふさわしい筋骨隆々な出で立ちで、蓄えられた髭がまさに神様というに相応しい男性体だ。
「トクベツでもあってんだろぉがジジィ! 横から口挟むんじゃあねえわよ!」
「どっちでもいいじゃなぁい、それよりぃ、ちゃぁんとぉ、お話してあげましょうよぅ。」
間延びした声がフレイアの怒声を切ると、フレイアはふんと鼻を鳴らして腕組みをし、黙ってしまう。
声の主、五柱の一柱であるエーテルコラの言葉を聞き入れたようだ。目を向けると、まさに女神ですという出で立ちのエーテルコラににっこりと微笑まれる。サラサラの白髪が光を弾いていて、神々しくみえる。
「そうじゃあな、水のエリオスやい。続きを話してやれや。」
「……と、言われましてもねぇ。何か、聞きたいことはあります?」
見ているんだから何もないだろう?と言わんばかりに首を傾げたアクアエリオスに、私は神殿中に響き渡るほどの声で叫んでやった。
「大アリよおおおおおおおおおお!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます