恋とは即(すなわ)ち戦いにつき!

さなゆき

第1話

 今年も、この日がきた。


 ××学園名物【戦闘セント罵錬汰寅禰バレンタインデー】が!


 意中の人に告白すべく、女生徒同士でチョコを渡す権利をかけた熱い戦いが、幕を開ける!


「でりゃぁあ!」


 ズガン!


 スカートをひらめかせたナギの一蹴が、壁に穴を開けた。

 今年卒業の先輩に、秘めた想いを伝えるなら、今日しかない!


 しかし、そう思っているのはナギだけではない。

 眉目秀麗、文武両道の彼に憧れる女子は、何人もいる。


 この学園の校風は、単純明快。

 「強者にこそ資格がある」!


 なればこそ、この日のために鍛錬を欠かさず行ってきた。


 その成果か、告白権を得るにはあと一人。実に九十九人を打ち倒したのである。


「どこを狙っているのかしら?」

「!?」


 ドゴォ!


 しかし、さすが最後の一人――強い!

 蹴りを悠々とかわし、背後に立つ。

 振り向こうとしたナギの横顔に、強力な一撃を見舞うのである!


 ズザザザ……。


 廊下の端まで吹き飛ぶ威力。常人ならば気絶しているだろう。

 だが――!


「負けない! この日の為に、頑張ったから!」


 ナギが気を溜める。

 すると、想いが炎と化し、体を包んだ。


「百華炎舞拳!」

「なっ、なんですって――!」


 ドガァアァ!


 強烈なナギの想いを腹に喰らい、最後の一人は気絶した。

 あとは、先輩の待つ校舎裏へ――。



「おや、今年は君なのかい」


 先輩に声を掛けられ、微笑むナギ。


「先輩、ずっと好きでした!」


 そして、懐に入れていたチョコを差し出す。

 先輩は、受け取るとすぐに封を開けた。


「何も、入ってないけど?」

「えっ?」


 チョコはナギの気合で跡形もなく溶けてしまっていた。


「そんな……」


 落ち込むナギの肩を先輩が抱き、付き合うことになったのは、数秒後の事――。

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