日本人恐い、アニメ恐い。

コタツの猟犬

カフェにて。

友人の紹介で知り合い、デートをしている二人。


現在はちょっとお洒落なカフェでお茶をしている所だ。


お互いの持つ雰囲気と人柄は、双方が大変気に入って、話も盛り上がっていた。

そして話はお互いの趣味の話になった。



「へ~。それはすごいですねっ」

「いえいえ、ホントにただの趣味ですから」


「私なんて、手紙一つ書くのでも四苦八苦しますから凄いですよ」


「はは。それ、小説書くのとは違う能力です。私も手紙とか書くのは苦手ですよ」


「でーどんなジャンルの物を書いてるんですか?」


「私はファンタジーとSえ__」

「えっ!」

(いきなりこんなとこで何言ってんのっ! この人)


「えっ⁉」

(ん? なんかおかしい事言ったか、俺?)


「ああ、いえ。大きい声出しちゃってすいません。

 ちょっと意外だったのでびっくりして」

(囚われの女騎士……エルフ……とか?)


「私、小説書くように見えませんよね」

(スポーツマンに見えるのか、ただのアホに見えてるのか…………後者だったら切な 

 い)


「いえ、そんなことないですよ」

(いやいや、そっちじゃねぇわっ!

 誰だっていきなり書いてる小説のジャンルが、ファンタジーSМって言われたらビ

 ビるわっ!)


「そ、そうですか」

(なんだろう。話、結構盛り上がってたのに、急にこの温度差……)


「あーいえ、すいません。随分とイメージとジャンルが違ったので」

(まさか書いてるものが官能小説だなんて、思いもしないじゃない)


「な、なるほど。そうですか」

(う、うーん。

 ファンタジーとかSFって、マニアとかオタクって見られてるのか……そういうの

 は昔の話じゃないのかね。

 今だにそんな風に思う人がいるなんてな)


「ああ、いえ。すいません。最近ではそういうものなんですか?」

(人前で堂々と趣味として発表するなんて、セクハラ案件じゃないの?)


「はい、全然普通の人も嗜んでると思いますよ。自分の願望をダイレクトに再現出来

 ますしね」

(勇気とか希望とかと相性がいいしね)


「そ、そうかぁ……ですか」

(マジ……この人の中ではSMって普通のことなのか……)


「ええ、数年前なんか異世界転生モノの作品が幾つか大ヒットして、凄かったです

 よ。今では一大ジャンルになってますしね」



「そ、そんなに?」

(うそ⁉ みんなそんなにハードに事を望んでるの?

 異世界に転生してまでそんなことしたいんだ…………。

 私は全然普通でいい。寧ろ余計な事しないで、ギュッとしてくれるだけで満たされ

 るし)


「え、ええ。社会現象にまでなった作品もありますし。

 フィギュアとかも沢山出てますよ? 私も持ってますし」

(フィギュアになると、ちょっとエッチな感じになるの、俺は嫌いなんだよな)


「うぅぅ。せ、世間恐い」

(っていうか、同じ日本人なのに恐いよぉ。しかも公の場で堂々と言えるぐらい認知

 されてるなんて……。

 ……花と〇ぐらいなら私も名前ぐらいは知ってるけど、まさかそんなに売れてるな

 んて思わないもん)



「でも、女の人でもファンの人って沢山いますよ?

 細かく色々と分野は分れるんですが、女性の方が多い位の分野もあるぐらいです」

(可愛いキャラ多いし、わざわざ女性向けを狙ってるデザインもいっぱいあるしね)


「ま、マジですか。

 ……私が世間とずれているんですかね……そういう作品は実写化とかされるんです

 か?」

(と、思わず聞いてしまったよ)


「そんなことはないと思いますけど、どーですかね。

 実写化は聞いたことはないですね。海外のものはたまになりますけど、日本の作品

 は大体がアニメになりますからね」



「…………アニメ、ですか」



(私アニメ見ないから知らなかったけど、ジャパニーズクオリティは、そういう世界

 でも如何なく発揮されてたのか…………。

 世界に誇れる文化って言ってるけど、そういう事か。


 ……日本人恐い、アニメ恐い)




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