指揮官マリア様は平和に暮らしたい!

桜子 さくら

第1話 わがまま姫様

「皆の者集まったか!」


私の名前は"マリア セントバーグ"。オーラシア大陸の西方に位置する小国生まれのお姫様だ。そして、この戦争に於いて、父様から一個大隊の指揮官に命じられた完璧美少女。



「マリア様、何故皆を集めたのですか?」

隣で、副官が疑問の声を漏らす。

「目の前の前線では、友軍が一所懸命に防衛戦を行っています。 召集をしている場合では.......」


私は彼を制す。 大隊400人の前で、高らかに宣言する。


「私は、現時刻を持って、自身の兵役を解く!」

どよめきが広がる。 

「これより、指揮権を隣にいる副官に譲渡する!」



台を降り、西に向けて歩き始める。

自分勝手だと分かっているが、もう戦争はごりごりだ。

敵味方問わず兵士は死に、銃後の人間ですら5年に渡る総力戦の下、困窮し嘆いている。

(疲れた。私はもう疲れたのよ。)


「だから、国に戻って平和な余生を過ごす事にしたの!」



歩き続けて3日が経った。

殆ど無計画で隊を抜けたので水と食料は底をついた。

木陰で休息を取る。 

目を閉じれば、祖国の宮殿が見える。 花々は歌い、鳥や蝶は春の調べを喜んでいる。



「......セントバーグ卿のご令嬢マリア様とお見受けする。」

聴き慣れない声と共に、ナイフが喉元に押し付けられた。

声が出ぬように手で口を抑えられる。

抵抗するが、空腹と疲労で力が出ない。


「国の命により死んで貰う」

ナイフで喉を切り裂かれ、血が止めどなく溢れる。


(なんで.......こんな.....) 

地面の石ころが視界に入ったのを最期に私は事切れた。





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