召喚王 〜召喚術〈女帝〉の力で蹂躙する〜

文月 

1章

始まり

 『君たちは死んだ』


 その言葉のなんと現実味のないことか。


 しかし事実であり受け入れるしかないというのは高校生の頭で理解出来たのだ。


 そして目の前には不気味なホログラム。


 黄緑色のプレートと言えばそれまで。


 こんな電波な状況、理解はできても受け入れはできまい。


 俺は現実逃避をやめて今一度最初から……


 いや、その前にちょっとだけあらすじ入れようか。




★★★★★★★★★





 召喚術。自分が術を行使して自分以外の何かを呼び出すこと。

 言ってしまえばデ○モンとかポ○モンに近いものだ。

 人ならざる者を呼び出して使役し、自らの力として振るって敵を倒す。

 

 つまりロマンだ!


 召喚する対象がスライムとかはよくあるけど、ドラゴンとか使役した日にはもう勇者気分で世界の旅だ。

 それとも妖精かな?そっちならもしかしたらゲームの主人公みたいな事が出来るのかな?

 悪魔とかなら魔王プレイとか出来るのだろうか。


 俺は昔からゲームに影響されて捕まえた虫とかを何とかして自分で扱えないかアニメで見た呪文とかペットみたいな紐とか色々試した記憶がある。

 だけどそんなのをやっていたのも小学校前半の話。

 中学校に上がる頃にはそんなのは忘れてしまい、数少ない友人とゲームに興じる日々。


 そして高校。数少ない友人も俺とは別の所に進学し、高校デビューに失敗した俺は幼なじみが同じクラスに居るのにも関わらず見事ぼっちになり、かつて憧れていた召喚術もといかつてのブームが再熱。

 昔遊んだ古いゲームとかも取り出してプレイに明け暮れる日々だった。

 また主人公を自分に置き換えて妄想もしたりした。どうせぼっちで暇なのだからゆっくりと気の向くままにストーリーを作り続けることが出来た。


 強い力を持って世界を支配しようとする魔王。

 魔法の扱いに長けて国のトップに立つ魔法使い。

 聖剣を振るって悪を払う勇者。

 学校に侵入したテロリストをバンバン倒していくヒーロー。


 様々なストーリーに様々なキャラクターが居る。だけどそのどれもに共通するのは俺が主人公だということ。そこ、痛いとか言わない。誰もが通る道だろ、これ。

 

 それはさておき、これぞ妄想の特権だ。妄想の中なら自分の思うがままに出来る。


 だからこそ俺はちょっと期待しているのだ。この状況は俺の妄想の中なのか……それとも現実なのか。


 俺は改めて目の前の現象と向き合うのだ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




 さーて、状況の整理だ。とりあえずここはどこだ?

 薄緑色の壁と床で覆われた謎の空間で俺はやけにフヨフヨした感覚でまるで浮いてるみたいだ。なんというか前に一度だけ体験したことのあるワイヤーアクションみたいな感じ。


 というか身体のどこも動かせないんだが?いや、右手と首は動かせた。でもそれ以外は動かせない。なんという不便さ!

 とりあえずグッパと握って開いてを繰り返す。

 見渡すとクラスメイトが制服のまま同じように浮いてるし。

 何人か叫んでるみたいだけど何も聞こえない。声は出せないのか。

 お、我が幼なじみであるユウカもいるじゃないか。ただこっちには気づいてないのかな。


 身体は浮いてる感覚以外は痛みとかないし、記憶は……うーん、なんだろ昼休みに妄想に耽ってる間になんか床に大きな亀裂が出来たことまでは覚えてるんだが……


 うーんわからん。こっちを指さしてるやつもいるけど何かあるのだろうか。声は届かないし手話とかもできないし片手しか動かせない以上全く意思疎通が取れないからどうしようも───


ピコン!


───うん?


 この状況になって初めての音だ。ピコンて、前にやってたゲームの効果音みたいだな。

 さっきまで無かった白っぽい謎のホログラムが目の前に。確実にあの音で現れたよな。どれどれ、何か書いてあるな。

 曰く、

『私の行為の余波で君たち27名は死んでしまった。しかし不可逆性のため甦らせることは私にも不可能である。だが新たに命を与え異なる世界へ放つことは可能だ。なので私の責任で新たな人生を歩ませよう。君たちを送る世界はスキルと呼ばれる特殊技能が実在する世界だ。それを1人4つまで選んで欲しい。選び終わった順で君たちを送ろう』だそうだ。


 俺のクラスは生徒26人だ。これも少子高齢化の影響ってやつだ。それにプラスで一人、先生かな?


 これによればあの亀裂はこのメッセージの主の余波、らしい。結局何が何だかわからないけど、これはある種の転生のようだ。

 それにスキルか。ステータスみたいなのが存在しているのかはわからないがスキルは存在していると。つまり魔法とかに期待してもいいのか!?

 ほら、みんなで叫ぼうファイアーボールって。



 いやいや待て待て。ちょっと落ち着こうか。自分でもわかるくらいに変なテンションになっている。

 まだ現状確認が終わってないだろう。異世界転生モノでも現状確認はみんなやってるじゃないか。とりあえずこのスキルとか言うのは一旦置いといて……

 まず五感チェックから。

 視覚、ある。

 聴覚、一応ある。

 嗅覚、わからない。

 味覚、同様にわからない。

 触覚、ある。


 服とかは制服のままだし、スマホなんかは机の中だから持ってるはずも無し。リュックとかがここに来ているとは思えないから入れっぱなしのカル○スソーダを飲み切れる希望も無いと。


 以上だ。

 うーん、転生して早々の植物人間よりはマシって感じ?飯とか水もないけれど。


 あ、一人消えた。あのホログラムが出てからすぐに弄ってた奴だ。なんて名前かは忘れたが。あの感じだとスキルを選び終わったらすぐに転生または転移って感じなんだな。


 ふむ……よし、とりあえず従っておこう。これ以上わからないし。とりあえずホログラムをポチッと。

 すると画面がよくわからないアニメーションが入って書いてある文字が変わった。なんか中学生が作ったパワー○イントみたいな画面だけど……

 えっとなになに、この画面はスキル一覧と。


 ホログラムの画面からはさっきの文字が消え、カタログリストみたいなのがずらーっと並んでいる。そこには〈剣術〉とか〈体術〉とか異世界転生小説で見たことあるようなスキルが並んでいた。



────数分後



 のだけど、これ多すぎないか?終わりが見えない。もう五分くらいずっとスクロールしてるぞ。途中で〈剣聖〉とかみえたけどそんなのもスキルになるんだな。でもどうしよ、転生先がスキル重視の所だったら。The初期スキルな〈剣術〉なんて弱いスキルは要らん!とかって言われたらどうしようか。

 今考えても仕方ない事だけど……っとやっと一番下か。これ以上スクロールは出来なさそう。下に行けば行くほどレアなスキルなら嬉しいな。だって一番したならそれくらいすごいのがあるはず。

 どれどれ?


……

………

…………

〈召喚術・女帝〉


 なんだろう、これ。


 スキル一覧の一番下に出ていたスキル、それは〈召喚術・女帝〉だった。


 取得スキルの候補に入れてた召喚術のスキル自体は結構最初の方に見かけたけど、どう違うんだろう。名前だけで判断すると取得できるのは女性限定みたいな感じだけど、これ長押しで解説とかは……出ませんよね。そこまで便利じゃないよね。


 というか一度タップしたから選択になっちゃったけど。ということは取得出来るのかな。となると……うーん、まあいいか。召喚術だし!なんとかなるでしょ!


 あと3つか。とりあえずスクロールの途中で目星付けておいたので良いかな。


 まずは鑑定。これはどんな異世界転生小説でもまず必要みたいな感じになってるからな。俺もやってみたい。「鑑定!」って言ってみたり。

 次に魔力増加。召喚術って思いっきり魔法みたいだし、あって困らなさそうだからな。ふふっ、最初からデカいやつ召喚とか。

 最後に感知。これだけは名前からわからなかったけど、何となく勘がこれを取っておけと言ってるからな。

 なるべく召喚術一本で行けるように組んだスキルだけど鬼がでるか蛇が出るか、俺の運に賭けようか。


 っと、ちなみに異世界転生モノでお馴染みの言語系のスキル。これは見つからなかった。というよりも言語に関するスキルが存在していなかったのだ。

 自動で言語関係は解決しているなら嬉しいんだけど。



 最後に感知のスキルを押して、4つ選び終わった直後に画面のリストは全て消えて新たに文字が現れた。


『これから君を転送する。95%の確率で安全な土地に送ることを約束しよう。君の新たな人生に多くの幸運を』


 だそうだ。


 ……あー、これ絶対フラグだろ。

 ゲームで確率5%は当たるんだよ。95%の技は外れるのがお約束だもの。

 

 転送の関係か、だんだんと薄れる意識の中俺はそんなことを思いつつ意識を手放すのだった。


 こうして、次元の狭間と呼ばれる空間からまた一人地球の人間が消えた。その名を、ユウトと言う。







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第2話は18:00公開です

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