第29話 おしゃれは好きか?
「菊池さん、どうしたんだろう?」
「ほら、あの陰キャがなにかしたんじゃない?」
「気安く菊池さんに近づくなって感じだよね〜」
上位カーストの女子達が只野のことを睨みつけながら陰口を言っている。こいつら彩花の信者かなにかか? なにが陰キャだ。なにも知りもしないで陰キャとか決めつけて最悪だな。それに只野がお前らになにかしたか? って話だよ。ちらっと只野を見ると特に聞こえてなさそうなので、俺が突っかかっても仕方ない。はぁ〜〜。モヤモヤする。
「大声で呼んで悪かったな」
「うんん。菊池さんが来たからでしょ?(小声)」
「まぁな。また接触してくるかもしれないから、注意しておいたほうが良いかもな(小声)」
「了解(小声)」
「じゃあ、中庭でお昼食べないか? 天気も良いし気持ちいいぞ」
ぶっちゃけ教室以外ならどこでも良い。ここにいると嫌な気持ちになるからな。只野にはあの陰口を聞かせたくない。
「うん! 友達と一緒にお昼食べるの憧れてたから楽しみ!」
只野のやつだいぶテンション上がってるな。喜んでくれてなによりだな。
「お、おう。それは良かったな。たけも誘っていいか?」
「たけ?」
「ああ、悪い。たけは、同じクラスの北川尊のことね」
「なるほど〜。緊張するかもだけど大丈夫」
「おっけ〜」
たけは、教室にいない。多分だけど、パンを買いに行ったんだと思う。
とりあえず「中庭集合!」とメールして、俺と只野と中庭に移動した。
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中庭には、すでにちらほらと生徒達がいる。うちの学校は中庭にテーブル席がいくつも用意されており、外でご飯が食べられるようになっている。ここだけじゃなく、屋上も解放されている。色んなところでご飯が食べられるのは良いよな。気分転換できる。
「そういえば只野は、おしゃれは好きか?」
「おしゃれかぁ。うん。好きだよ。実は化粧品とかも買うし、あとは妹達とよく服を買いに行くよ。あ、でも僕、普段着はあんまり持ってないんだよね」
「え、服を買うのに持ってない? どういうこと?」
「普段着じゃなくてコスプレ用の服を買ってるんだよ。コスプレ用の服は、おしゃれなんだけど、派手だったり、露出が多いものばかりだから普段着としては着れないんだよね笑」
「あ〜。なるほどな」
「うん。でもどうして?」
「ああ……おしゃれが好きなら、この店を紹介したいなって思って。ここは俺も常連でお世話になってるんだよ。もし良かったらと思って」
俺は、只野にお店の名刺を渡した。
「え、ここって……」
「ああ。今の只野が行くにはちょっと勇気がいるかもしれないな……だから行くかどうかは只野に任せるよ。でもなにかが変わるかもしれないと思ってな」
「うん……ちょっと考えてみるよ。昇くんありがとう」
「じゃ、この話はお終い。え〜と、只野は辛いの好きか?」
「辛いのは少しなら食べれるかな」
「おお〜〜〜」
うん? 後ろから声が聞こえたので、振り向くと、たけが両手いっぱいにパンを持っていた。パンの中には赤いパンが混ざっている。
たけ、また挑戦するつもりか!
「只野! お前も辛いのいける口か! ちょうど辛いパン買ってきたから一緒に食べようぜ」
「わぁっ……びっくりした〜」
「おい、たけ、只野がお前のテンションに圧倒されてるぞ」
「あっ、悪い。辛いものに好きに悪いやつはいないってな。昇と友達になったんなら俺とも友達になってくれ!」
「よ、よろしくお願いします?」
「なんで疑問形なんだよ〜。よし、じゃあ、友達の印として、このパンを献上しよう」
たけは、只野に激辛パンを渡した。
「あ、ありがとう」
「只野。そのパンは、たけを保健室送りにしたパンだから気をつけろよ……むしろ食べないで良いぞ」
「んだよ〜。せっかく買ってきたのに。辛いなかにも美味しさがあるんだぞ」
まじで保健室に言ったやつがなに言ってるんだ。
「そうだよね。せっかく買ってもらったんだから食べないとね!」
パリパリ。
只野は、勢いよく袋を開けて、パンを食べた。
「ん〜〜〜〜〜!」
「ちょっ」
「只野、お前やるな!」
たけ、感心してる場合じゃないぞ。そんなに口をいっぱいにして食べないでも……
辛いのって聞いたら少しずつ食べようぜ。
「只野? 大丈夫か? 無理だったら吐き出しても良いからな。このパンは食べ物じゃない、凶器だ。だから吐き出しても怒らないから安心してくれ」
もぐもぐ、もぐもぐ。
「ん〜〜〜〜〜〜うまい!」
「た、ただの、平気なのか?」
「美味しいね。このパン! ちょっとピリ辛って感じだね。友達とご飯を食べてるからかな? 凄く美味しいね!」
辛いの大丈夫なんだな。只野の食べっぷりを見てると、あまり辛くないものと勘違いしそうだが、あれは、たけを保健室送りにしたパンと同じだと思うんだけど。
「お、只野いけるね。じゃあ、俺もまた挑戦してみようかな! 前回の俺とは一味違うぜ。色んな激辛料理を食べて鍛えたからな」
「分かんないけど、もしかしたら、前回より辛さ控えめなのかもしれないな」
「じゃあ、いただきます――」
バタン!
はい。たけKO〜。もう食べてすぐじゃねぇか。
たけは、また保健室送りになった……
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はぁ〜。人間を運ぶのって大変過ぎるな……もうアイツはあのパン食べるの禁止にしないとな。俺達はたけを保健室に送り、昼食を再開した。
「まぁ、気を取り直して、ご飯を食べようか」
「そうだね。なんか嵐のような人だったね」
「ああ。そうだな。でも楽しかったろ?」
「そうだね!」
たけのせいで疲れたが、あいつのテンションには助けられたことがある。毎日変なことが起きるのは勘弁だが、たまには良いかなと思った。
* * *
放課後になるまで、彩花は、何度も只野に近づこうとしていたが、尽く俺が邪魔をした。
で、只野はというと、妹達と買い物に行くと言って、6時間目が終わるとすぐに教室から出ていった。これで今日は安心だな。
これからどうしようかな? とりあえず図書室で勉強でもするか……
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テストも近いし、全教科軽く見直しますか〜。学年10位以内に入れるように頑張ろう。
カキカキ、カキカキ
カキカキ、カキカキ
「あ、堂道君みっけ!」
誰かに肩をたたかれたので、振り向くとそこには倉敷さんがいた。
「お〜倉敷さんか? 今日は図書委員の仕事?」
「違うよ。今日は図書室で勉強しようかなって思って」
「じゃあ、俺と同じだな」
「そうなんだね。堂道君って勉強できる?」
「どっちだと思う?」
ちょっと、俺の印象が気になるな。どんな風に見えてるんだろう?
「え〜と、なんとなくだけど、出来ないイメージ……」
倉敷さんって思ったことすぐ言うタイプなのかな?
「なんの躊躇いもなく言うね」
「あ、ごめん。堂道君なら怒らないかなって」
「そんなことじゃ怒らないけどさ。こう見えて学年30位以内には入ってるんだけどな……」
「え!」
「ちょっと、シー、シー」
「あ、ごめん、ごめん。意外すぎてで驚いちゃった」
なんか倉敷さんの前で、バカっぽいことしちゃったっけ?
「堂道君! 私に勉強教えてください」
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ここまで読んで頂きありがとうございます。
たけは激辛にハマっちゃってますね
最近、辛辛魚というラーメンを食べましたが、辛すぎて気合で食べきりましたね……アイスと牛乳が必須ですね。
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改定
2021/03/25 三点リーダーに変更
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