第27話 早く着替えておけば良かった

 いきなり大声で叫んだので、周りのお客さんから注目されてしまった。恥ずかしいが、これでさっちゃんの緊張が少しでも和らげば良いんだけど。


「のぼ、お、応援ありがとうございます」


 そう言ってお辞儀をした後、ぎこちない感じでポージングをしていた。一通り終わると、持っていたセンスで顔を隠してしまった。


「あの初々しさが良い。恥ずかしがってるのも良い!」

「声聞いたか? 可愛いな」

「こっち顔見せて〜!」

「「サッチー!」」


 周りの反応は悪くない。俺の叫び声がきっかけになったのかは分からないが、周りのお客さんもさっちゃんに声を掛けている。とりあえず一安心か。シーンとした雰囲気だったら余計緊張しちゃうもんな。


『おっと〜? 早速サッチーさんに多くのファンが出来ましたね! 私もファンになりそうです! 是非これからもコスプレを続けてもらいたいものですね。続いては……』


 さっちゃんは、出番が終わって安心している様子だ。少ししてスタッフの案内で舞台から離れていった。


 いきなりの大舞台で、緊張しながらも頑張ってたな。人の頑張りを見ると、よし俺もやるぞってなるよな。


『最後は、アイドルグループによるライブです。色々なキャラクターにコスプレしてるみたいなので、楽しみにしてくださいね。それでは、どうぞ〜』


 明るい曲が流れて、アイドル達が登場した。

 テレビとかで見かけるアイドルグループを呼ぶとか凄いな。


 俺は一旦仕事のことは忘れてライブを楽しんだ。


 * * *


 無事閉会式が終わり、事務所に戻ると、さっちゃんは、京子さんや女性スタッフの人達に囲まれていた。


「幸さん、本当に最高でしたよ! 会場の反応も良かったし、私の目に狂いは無かったですね!」


 京子さんは、だいぶ興奮しているな。


「ありがとうございます。でも恥ずかしかったです」


「そこは慣れですね。来年もまた出てほしいなぁ〜って。チラチラ」


「そ、それはちょっと……やりたくないですね」


「冗談ですよ。今回は友人の娘にコスプレさせたくてね。でもって幼馴染くんも驚かせようというやつですよ。って言ってたら昇くんが来ましたね」


 京子さんは、俺がいたのを気づいてたみたいだ。ニヤニヤしながら俺を見るのは止めてください。


「あ……昇くん……」


「さっちゃん、お疲れ様」


「う、うん。ちょっと恥ずかしいね。あっ、さっきは、掛け声ありがとね」


「あ、ああ」


「……」


 コスプレしたさっちゃんを間近で見ると、少し緊張してしまうな。


「さ、さっちゃんが、コスプレするなんて思わなかったからびっくりしたよ」


「そ、そうだよね。最初は嫌だったけど、京子さんに説得されて出ちゃった…………ってことでドッキリ〜大成功〜」


 さっちゃんは、良くテレビとかでよく見るドッキリと書かれた看板? を持っていた。そんなぬるっとドッキリ大成功って言われても……なんともだよ……あとそんな恥ずかしそうにやらないでよ。せめて堂々としててよ。とりあえず驚いたふりをしておこう。そして褒めちぎろう。逆に恥ずかしがらせてやるか。


「あ〜、ドッキリかよ〜。騙された〜。さっちゃんのコスプレ似合いすぎてだめだ。しかも化粧してるでしょ? いつものさっちゃんと違って大人っぽいというか。美人というか」


 茶化して言ってるけど、思っている事を言ってる。


「照れるから褒めないで!」


「褒めるよ。だって俺、サッチーのファン第1号だからな」


「もうサッチーって言わないで!」


「青春ね」


 うんうんって頷いてますけど、京子さん、これは青春ですか?


 ・

 ・

 ・


 少しして、さっちゃんママさんが迎えに来てくれた。


「あらあら、さっちゃんその格好……似合ってるわね!」


「あ〜お母さん来ちゃった。早く着替えておけば良かった……」


「グッドタイミングだったみたいね。昇くん、さっちゃんと一緒に写真撮りたいんだけど良い?」


「俺は良いですけど」


「さっちゃん、写真撮って良い?」


「え〜」


「いいじゃない。昇くんとの写真って高校の入学式の時に撮ったっきりじゃないの。久しぶりに撮りましょ!」


「分かったよ」


「じゃあ、撮るわね。そんなに離れてないでもっとくっついて〜写真に写らなくなっちゃうわ」


 人1人分くらいしか離れてませんよ。


「さっちゃん、ごめん。ちょっと近づくね」


「うん……」


 俺とさっちゃんは、肩と肩がぶつかるくらいの距離まで近づいた。


「もっと近づいて欲しいけど、今はこれくらいで許しておきましょうか。じゃあ、撮るわね〜。はいチーズ」


 ・

 ・

 ・


「ちーちゃん。今日は2人を紹介してくれてありがとうね」


「いえいえ。お礼なら2人に言ってあげて」


「昇くん、幸さん、今日は本当にありがとうございました。はい、これ今日のバイト代ね。迷惑料込で入れておいたからね」


「「ありがとうございます」」


 さっちゃんは、初めてのバイト代をもらって凄く喜んでいた。俺も久しぶりのバイト代だな。今度は自分のためになにか買おうかな。


「京子、じゃあ、またね。今度はゆっくりご飯でも行きましょ」


「そうだね。このイベントが終われば少し余裕が出来るから私から連絡するね」


 * * *


「待って、昇くん」


 さっちゃんと駐車場に向かう途中、誰かに声を掛けられた。


「うん? あ、ただのんか。どうした?」


 流石にコスプレの格好はしていなかったが、メイクをしているせいか女の子に見える。


「あの、今日は助けてくれてありがとう。連絡してって言ってたけど、昇くんの連絡先知らなかったから教えて欲しいなって」


「ああ、確かに教えて無かったな。これ俺のIDね」


「え〜と、これはどうやるの? 僕友達いなかったやったことないんだ……」


「お、おう、こうやればオッケ〜」


「ありがとう。じゃあ、連絡するね〜」


「おう〜。またな〜」


 ただのんは、急いだ様子で去っていった。あいつも忙しいのかもしれないな。


「ねぇ。昇くん? 今日はちゃんとバイトしてたんだよね」


「おう、してたぞ。色んな場所を歩き回ったせいか疲れたな」


「じゃあ、さっきの可愛い子は誰? ナンパでもしてたんじゃないの?」


「おいおい、仕事中にナンパなんてするわけないじゃん」


「だって連絡先交換してた……」


 さっちゃんは、俺が遊んでたと思ってるんだな。それでちょっと怒り気味なのかもしれないな。


「ただのんは、俺のクラスメイトだ。でもってあいつは男だから……ナンパとかするわけないだろ」


「男? 昇くんが男の子と……」


 えっと、幸さん? 戻ってきてくれ〜。


 長かったような、短かったようなバイトが終わった。

 今日は色々あったな〜。迷子を助けたり、変な客がいたり、クラスメイトがコスプレヤーだったり、最後には幼馴染がコスプレして出てきたり。疲れたけど、楽しかったな。


 充実した一日を過ごせて満足な昇だった。


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 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 少し急いで書いてしまったので、後で直すかもしれません。ご了承ください。


 コスプレイベント回ようやく終わりです。2,3話くらいで終わりにしようと思ってましたが、気づいたら7話くらいになってました……色々想像しながら書いてると、これも入れたいってなってしまいました。


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 改定

 2021/03/25 三点リーダーに変更

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