第26話 ちょっと、なにしてんの?

「作戦会議?」


「うん。どうすれば彩花から解放されるのかを考えよう」


 このまま彩花に好き勝手されてるのも嫌だ。どうしようか……あっ、くっくく、さっきの話を聞いて、ちょっと良いこと思いついちゃった。まぁ、これは後でだ。あいつは頭が良いんだからこれくらい問題無いよな。


「そこだよね……」


「とりあえず来週は、できるだけ一緒に行動しよう。そうすれば、彩花も近づきづらいと思うし。一時的にしか効果が無いかもしれないけど、やらないよりはマシだ」


「ありがとう。それでも助かるよ。あ〜でも、友達と一緒に行動とか楽しみだなぁ〜」


 ただのん、のんきだなぁ〜。

 あ、ヤバ、結構話し込んじゃったな。このままここにいると怒られそうだ。


「よし、彩花とのことは分かったよ。大変だったな……話しづらかったと思うけど、俺に話してくれてありがとうな。これからのことは一緒に考えよう。あとは、なにかあったらマジで連絡宜しく! じゃあ、ゆっくり休んでな」


「うん!」


 問題は残ってるけど、ただのんが元気になって良かった。


 ・

 ・

 ・


 医務室から出ると、真波ちゃんがそらちゃんをおんぶして待っていた。そらちゃんの方を見ると、疲れてしまったのか寝ているようだ。


「あ、真波ちゃん。ただのんとの話は終わったよ。遅くなってごめん」


「いえいえ、大丈夫ですよ。あ、そらは疲れちゃったみたいです」


「はしゃいでたもんな。楽しんでくれてスタッフとして嬉しいよ」


「私も楽しかったです。あの……昇さんは、おにいと友達なんですか?」


「うん。そうだよ。最近友達になったんだ」


「そうなんですね……おにいは、ずっと友達が欲しい、欲しいって言ってたんで、友達が出来て、私も嬉しいです。あんなおにいですが、これからも仲良くしてあげてください」


「うん。分かったよ。ただのんのコスプレ似合ってる。ファンになったかも」


「ふふ、ありがとうございます。おにいも喜ぶと思います」


「それにしても真波ちゃんは、できた妹だね。ただのんが羨ましいよ」


 俺も妹が欲しくなってきたな。俺に妹がいたら、多分甘やかす。なんでもいう事聞いちゃうかも笑


「え、あ、そ、そんなことは無いですよ。おにいに友達が出来て、やっと肩の荷が下りるというか? まぁ? そこまで心配して無かったんですけどね。あ、そうだ、私はちょっと、用事がありますので、それでは〜〜」


「あ……行っちゃった」


 医務室は寄らないで良かったのかな?

 まぁ、いっか。


 * * *


 ただのん達と別れてから、再び列の整理や見回りを行った。


 ピンポンパンポーン


『このあと、Aホールにて閉会式を行います。最優秀賞はどのコスプレイヤーの手に! 是非ご覧頂ければと思います。繰り返します。このあと……』


 スピーカーから閉会式の案内アナウンスが流れてきた。

 もう少しでイベントもお終いか。今日一日充実してたから、時間が進むのが早く感じたな。

 よし! 一旦事務所に戻るか。


 ・

 ・

 ・


「お疲れ様です〜」


「「お疲れ様です」」


 事務所に戻ると、既にスタッフの人達が集まっていた。さっちゃんはどこかな? 周りを見渡してみたが、さっちゃんが見当たらない。受付のお姉さんに聞いてみよう。


「あの、すみません」


「はい、どうしました?」


「先程まで、ここで仕事をしていた中条さんは、どこにいるか分かりますか?」


「え、あ、えーと、ごにょごにょ」


 ん? なんて?


「別の仕事を頼まれて、そっちの手伝いに行ったような気がするような気がします」


 なんか凄い構文だな。


「あ、そうなんですね……俺も手伝いに行きましょうか?」


「いや、それは、あっ! そうでした。京子さんから貴方への伝言がありました。えっと、もう今日のバイトはここまででいいので、Aホールの閉会式を見ててほしいって言ってました」


 さっちゃんが仕事をしてるのに置いて行くのは悪いな……


「なるほどです。でも中条さんの仕事が終わるのを待ちます」


「え、いえいえ、中条さんには、仕事が終わったら、閉会式に行くように伝えますから。先に行っててもらえますか?」


「いや、でも」


「大丈夫ですから! お願いしますから、閉会式に行ってください。私が京子さんに怒られてしまいますから!」


 この受付のお姉さん……必死すぎるぞ。ここまで言われたら行くしか無いよな。さっちゃんごめん。


「わ、分かりました。じゃあ、閉会式に行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい。はぁ〜〜、京子さんもサプライズ好きなんだから(小声)」


 * * *


 Aホールは、既に大混雑だった。椅子に座るのは無理だから、立ちで見るしか無いか。


『本日は、コスプレイベントにご来場頂きありがとうございました。これより閉会式を行います』


 始まっちゃったけど、まださっちゃんは来ないのかな? てか、この混雑具合じゃ、合流できなくないか?


『まずは、本日の目玉! 最優秀賞の発表です! 』


 ジャラジャラ、ジャラジャラ、ジャン


『まずはこの方です。ラブマスターのあずにゃんのコスプレをした、ケーシーさんです!』


 お、そらちゃんと一緒に見た人だ。やっぱり、最優秀賞に選ばれるだけあるよな。プロポーションは良いし、なにより再現度が高い。


「ケーシーさん〜〜〜!」

「こっち向いて〜」


 ファンの声援も凄いな。アイドルみたいだ。


『続いて、こちらの方です。夏コイの瑠夏のコスプレをした、ただのんさんです!』


 お〜〜! ただのん!

 さっき凄い人数に囲まれてたから人気だとは思ってたけど……


 ただのんは、ステージの真ん中に立つと、色々なポーズを見せた。モデルさんみたいだ。

 友達が、こんな大きなステージの真ん中にいるとか嬉しいな。


「ただのん〜〜〜!」


 思わず、叫んでしまった。


 あ、今、ただのんと目が合った気がする笑


「おい、見たか? 今、ただのんさんと目が合った気がする!」


 隣の客がそんなことを言ってるが、絶対に俺を見てたね!


 しかし、凄いな。最優秀賞がどれだけ凄いか分からないけど、今回参加したコスプレイヤーさんは、結構いた気がするから、その中の1人に選ばれただけでも凄いと思う。


『続いて、特別賞の紹介です。この方は、コスプレ初参加です。イベント主催者の一声で特別賞が決まりました。それではどうぞ。サッチーさんです』


 初参加で、特別賞とかどんな人だろう? 主催者ってことは京子さんがスカウトしたってことかな?


 サッチーさんは、なんのアニメか分からないけど、ヨーロッパの貴族が着るようなドレスを来ている。ドレスに慣れていないのかゆっくりステージの真ん中まで移動している。顔には、目元だけの仮面を付けているけど……


 え〜と。サッチーさんね〜。


 ・

 ・

 ・


 って、おい! さっちゃん、じゃねーかよ! おいおい〜、ちょっと、なにしてんの?


 ざわざわ、ざわざわ


 さっきみたいな声援はなく、会場がざわざわしている。

 そのせいか、さっちゃんは、より緊張しているようだ。


 ガチガチに緊張しまくってるよ! 顔が真っ白になっちゃってるよ! 大丈夫なのか? さっちゃん。それは頑張りすぎじゃないか?


 よし! もうここは俺が盛り上げるしかない!

 さっちゃんも頑張ってるんだ。応援しなきゃだよな!

 じゃあ、俺がサッチーのファン1号だ!


 俺は息を大きく吸い込み、大声で叫んだ。


「サッチー! 最高に綺麗だぞ!」


 さっちゃんは、俺に気づいたようで、今度は、顔が真っ赤にして、うつむいてしまった。


「ありがとう……」


 さっちゃんの声が聞こえた気がした。


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 ここまで読んで頂きありがとうございます。


 コスプレイベント回、長すぎて申し訳ないです。もう少しで終わりますので、お付き合い頂ければ幸いです。


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 改定

 2021/03/19 誤字修正

 2021/03/20 京子さん呼びに変更

 2021/03/25 三点リーダーに変更

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