第3話「Two with her」


彼女の親御さんとも話し合って、僕は必死に、彼女の病気について調べ上げた。


もちろん、治療法もだ。


だけど、彼女の病気は非常に稀なケースで、なかなかの難病だった。


『彼女のため』そう思い、死ぬ気で何か有効な手段はないのかと、探し続けた。


図書館に行って、その筋の本をあらかた読み尽くした。


ネットサーフィンだってした。


病院に行って、医者に相談もした。


通ってる大学の、医学部の教授にも相談をもちかけた。


英語の論文だって、頑張って翻訳して、漁りに漁ってみた。


途方もなく大変な作業だったが、その末、一つの可能性にたどり着いた。



「ボルドーの、病院?」



不思議そうに言う彼女。



「そうだ。そこなら、完治とまではいかないが、死は回避できるかもしれない」


「え・・・?」



諦めかけていた彼女の目は、まるで、初めて色を見たかのような輝きをしていた。


ようやく見えた希望の光、絶対に掴み取ってみせる。そう、彼女と約束した。



「うまくいけば、この先ずっと一緒にいられる」


「君と、ずっと一緒?」


「あぁそうだ。ずっと」


「それは、とても魅力的だね。私、頑張ってみるよ」



嬉しくて、そして頼もしい一言だ。


それから親御さんとも話し合い、慎重にコトを進めた。


その結果、彼女はそのボルドーの病院で治療することになった。


決して安くない医療費、移動費。


決して短くない治療期間。


場所はフランスで、行ったこともなければ、言葉も分からない世界。


だけど、僕は努力した。


どう考えても大学の単位は落とす。そう覚悟した上で、必死に英語とフランス語の勉強、そして、ボルドーの病院への手続き。


もちろん、彼女との時間も大切に、ゆっくりと、だけど体感的には物凄いスピードで、時は流れていった。



「それじゃ、いってきます」



彼女が親にそう言う。とうとう出発の日だ。


日程としては、僕と彼女が先にフランスへ行き、数日遅れで彼女の母親が来る。


手術が終わり次第、母親は先に帰国し、それから彼女の入院期間が終われば、僕と彼女が帰国する。


そういう感じだ。


空港へ向かう道中の彼女は、余命僅かとは思えないほど上機嫌だった。


聞くと、どうやらフランスに行くことが楽しみのようだ。


その目的が例え治療であれ、海外へ行くということは旅行のようなもの。


あわよくば、合間を縫って観光でもしたいとも言っていた。


関西国際空港、通称関空。そこからフランスは花の都パリの、シャルル・ド・ゴール空港まで直行便で向かう。


予定フライト時間は半日以上にも及ぶ。


それなのに、到着時刻は出発時刻の四時間後という不思議。


その不思議の謎は、時差というやつなんだろうけど、これは体内時計が間違いなく狂いそうだ。


これが世に聞く、時差ボケというやつか。


ちなみにだが、クラスはもちろんエコノミー。


これでも数万円はするから、移動費もバカにならないものだ。



「見て、まるで地図を見ているみたい」



彼女がそう言う。その姿はまるで、はしゃぐ子供のような無邪気さがあった。



「そろそろ日本海に入るんじゃないか?」


「みたいだね」



フライト中は、楽しい会話が弾んだ。


そして外は暗くなり、夜が更けていった。



ー※ー


あとがき(?)


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


今回チラッと出てきたフランスの街、ボルドー(Bordeaux)ですが、これの選定理由は、『著者がいま行きたい街』と、まぁそれだけです。

なので、そこに最先端のやべぇ病院があるのかは知りません。

それだけです。


では、次回も読んでくださると著者が喜びます。これからもよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る