第2話「Lonely girl」


中学三年生になった私が、まず壁となって行く手を塞ぐのは、進路であった。


とはいえ、私にはそんなもの壁ですら無いように思えた。


もちろん高校進学はする。こだわりはないので、自分の偏差値に合ったところに行く。それだけだ。


クラスの雰囲気は、時を重ねるごとにピリピリしていったが、私は変わらず読書だ。


いや、これも勉強だ。


本は私に、多種多様で、豊富な知識を与えてくれる。


読書と一括りにしてしまうからいけないんだ。


本だって、内容を選べば立派な勉強になる。


参考書を広げる人もいれば、教科書にマーカーを引く人もいる。


勉強の仕方など、人それぞれだ。


私はその選択肢の中で、読書というのを選んでいるだけ。



「受験勉強しなくていいわけ? よくそんなに余裕あるよな」



そう偉そうに言ってくる先生の声など、私の眼中にすらなかった。


むしろ、この人は知識や視野が狭いと、口には出さないが、心の中で嘲笑いしていた。


受験はもちろん合格した。


偏差値は四十代だったが、高校にこだわりはないので、世間体を除いて概ね文句はない。


結局、中学校で友達ができないまま、卒業して、春休みを挟んで高校に入学した。


私の入学した高校は、同じ中学から進学してくる人はいなかった。


つまり、キャラチェンしてもそれが自身の性格と偽ることができ、転機とも言うべきイベントだ。


この機会に、私も諦めかけていた友達作りを再開しても良いかもしれない。


そう思ったが、実際問題、ほぼ皆無から始まった私の中学生活。


そこでほとんど身につけられなかった社会性、社交性。


そんな状態の私が高校に進学したところで、友達を作るなど無理な話だったようで・・・。


結局、私は中学の時と何一つ変わらない生活をすることになった。


まぁでも、読書もつまらないわけではない。むしろ楽しいわけだし、私自身にとっては何の問題でもない。


ただ一つ、問題があるとするならば・・・。



「では、今度生駒山で行うオリエンテーリングのペア決めをします」

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