vs魔王モトキ②


 リナ、コテツ、イザヨイ、ヒビキの部隊が状況を飲み込めず狼狽する魔王モトキの配下を蹂躙し始めた。


 ――《ダークナイトテンペスト》!


 荒れ狂う闇の暴風がエルフの群れを呑み込む。


 俺自身もこの経験値大量獲得のチャンスを逃さないよう、積極的に攻撃に参加する。


「シオン」

「何だ?」


 経験値稼ぎに勤しむ俺にリナが声を掛けてくる。


「魔王モトキはこの場で討ち倒すのか?」

「そのつもりだ」

「ならば、使えそうな眷属は生かしておいた方がいいな」


 魔王モトキを倒せば、魔王モトキの配下は全て俺の配下になる。エルフは創造出来ないので貴重な戦力となるが……


「いや、今回は魔王モトキに与する者全てを滅ぼす」

「――!? い、いいのか……?」


 驚きを露わにするリナに俺は静かに首を縦に振る。


 ふむ。リナを始めとする賢い眷属は……今までの流れから生け捕りを試みる可能性はあるか。


「総員に告ぐ! 魔王モトキに与する全ての者を根絶やしにしろ! 我々の怒りを……! 我々の圧倒的な力を見せつけるのだ!」


 俺はわざわざ拡声器を用いて、周囲の全ての者に宣言した。


 魔王モトキの配下を全滅させるのは、感情からではない。これは、後に繋がる布石であった。


「クソッ! 退けっ! 退けっ! 退却せよ!」


 俺の宣言を耳にした魔王モトキは即座に退却を選択。


 しかし、その判断は遅れていたと言わざる得ない。


 すでに包囲網を完成させていた俺は魔王モトキの配下を殲滅しながら、撤退する方向を誘導する。


 魔王モトキは包囲網を避けるように迂回しながら、自身の支配領域を目指し、俺は配下と共に撤退する魔王モトキの配下を追撃し、一人、また一人と葬り去る。


 魔王モトキの軍勢は丸3日間富山県の人類と激しい攻防を繰り広げていた。そして、勝利を掴んだと確信した矢先に――俺からの宣戦布告を受けている。


 魔王モトキの軍勢は体力的にも、精神的にも限界を迎えていたのだろう。追撃戦は元からあった力の差以上の成果を発揮した。


「クソッ! クソッ! クソッ! あそこだ……あそこを抜ければ……お前たちはシオンの軍勢を食い止めよ! 残りの者は最後の力を振りしぼ――」


 魔王モトキは一部の配下を俺たちに差し向け、自身は包囲網が薄くなっている箇所へと決死の突撃をかます。


 ――イザヨイ、包囲網を緩めよ。


 俺の指示を受け、魔王モトキが突撃しようとした先――イザヨイ率いる部隊が魔王モトキへ道を譲るかのように左右へ割れる。


「ぐふふふふ! 我の気迫に怖気づいたか! あと少し……あと少しだ……皆よ! 最後の力を――」


 包囲網を突破した魔王モトキが高笑いをあげるが、その先には――


「ハッハッハ! 醜き豚の王よ! お待ちしておりましたぞ!」


 今回の攻撃に参加しなかった唯一の部隊――サブロウ率いるチームJが待ち構えていた。


 アスター皇国で最強の配下は誰だ? と、問われれば……タカハル、コテツ、リナ、イザヨイの名前が挙がるだろう。


 しかし、アスター皇国で最強の部隊は? と、問われれば……残念ながら、答えは元魔王の配下で構成されたサブロウの部隊となる。


「さぁ! チームJよ! シオン様の御前ですぞ! 我らの実力を遺憾なく披露するのです!」


 サブロウの声に合わせて、チームJの配下たちが動き出す。


「第零災厄(ディザスターゼロ)――堕ちた勇者カズキ! 推して参る!」


 色んな意味で堕ちてしまった元勇者のカズキが魔王モトキの軍勢に斬り込む。


 アレで……また……強いんだよな……。


 カズキの実力はリナに肉迫するまでに成長していた。部隊長に昇進させる打診をしたこともあったが、何故かサブロウに心酔していたので、そのままサブロウの配下にしてある。


 カズキに続いて、元鬼種の魔王、元吸血種の魔王、元獣種の魔王と……苦労して配下にした元魔王の配下たちが一斉に魔王モトキの軍勢へと攻撃を仕掛けた。


「リナ! コテツ! イザヨイ! ヒビキ! 包囲網を縮めよ! 魔王モトキをここで討つぞ!」


 四方から押し潰すように、魔王モトキへと最後の攻撃を仕掛けたのであった。


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