神器


『グローソード     消費CP100

 グローラージソード  消費CP100

 グローランス      消費CP100

 グローカタナ     消費CP100

 グローアックス    消費CP100

 グローラージアックス 消費CP100

 グローナイフ     消費CP100

 グローウィップ    消費CP100

 グロークラブ     消費CP100

 グローナックル    消費CP100

 グローワンド     消費CP100

 グローボウ      消費CP100

 グローソーサー    消費CP100

 グローブラスター   消費CP100 』


 その下にはグローシールド、グローアーマー、グローライトアーマー、グロークロス、グローヘルム、グローハット、グローガントレット、グローレッグ、グローシューズ、グローリング、グローネックレス、グローイヤリング、グローブレスレットと、防具と装飾品が並んでいた。


 神器=グローシリーズ?


 神器の消費CPが100……?


 《アイテム錬成》とは違い、武器のランクなどの説明は表示されておらず、消費CPのみが記載されていた。


 【錬成】をAランクへと成長させたことにより錬成可能になった槍種のユニーク武器は――『ブリューナク』、『天沼矛』、『ヴェル』の3種類であった。


 このコワレタ世界は神話やゲームを連想させる現象が多く見られた。魔物の種族にしても、アイテムの名称にしても……目にしたことはなくとも、どこかで聞いたことのあるモノがほとんどであった。


 故に、俺の予想した槍種の神器は――『グングニル』と言った、誰でも知っている神話級のアイテムだった。


 俺は予想を裏切る結果に呆然としてしまう。


 この世界においてランクは重要であるが……大雑把だ。同じランクであっても強さが全く異なる魔物、アイテムが多数存在している。ならば、どうやって強さを測るのか? 確実なのは検証だ。魔物であれば実際に戦わせ、アイテムであれば実際に使用する。


 検証以外にもおおまかではあるが……強さを測る方法は存在する。


 その方法は――消費するCPによる判別だ。


 身も蓋もない言い方をすれば『高かろう良かろう、安かろう悪かろう』となる。


 その理論で言えば……神器とされるグローシリーズは初期にお世話になったシルバーシリーズと同等の性能になってしまう。


 いやいやいや……あり得ないだろ。


 神器だぞ? 【錬成】がAランクに到達した者のみが錬成出来るアイテムだぞ?


 消費CP100なら3分も待たずに回復する。


 とりあえず、検証だな。


 俺は《神器錬成》の中から【グローランス】を選択した。


『グローランスの所有者を設定して下さい』


 ――?


 画面に表示されているタブをタップすると、一番上には『シオン』と俺の名前が……その下には『クロエ=シオン』、『ブルー=シオン』……と眷属の名前がズラリと並んでいた。


 使い回しの出来ない専用アイテム……?


 俺は自分の名前――『シオン』を選択する。


『グローランスの所有者を『シオン』に設定します。グローランスは1本しか錬成出来ず、所有者が消滅するまで所有者の変更は不可となります。錬成してもよろしいでしょうか?【はい】 【いいえ】』


 BPを振るときですら確認はないのに……慎重だな?


 錬成出来る槍は1本。幹部の中で槍を扱えるのは、イザヨイとセタンタ。


 強いのはイザヨイ、希少価値が高いのはセタンタ。


 俺を含めると、槍使いは3人か。


二人とも重要な配下ではあるが……最優先されるべきは俺だ。


 イザヨイの代わりは最大CP1000を捧げれば創造出来る。現実味には欠けるが、セタンタもヤタロウの様に狂ったように《乱数創造》にCPを捧げたら創造出来る可能性はある。


 しかし、俺の代わりは世界中どこを探しても存在しない。


 数年先に槍の扱いに長けた魔王が配下になるかも知れない。剣聖ならぬ槍聖と呼ばれる人類が配下になるかも知れない。しかし、どれだけ強かろうと、どれだけ優れていようと――俺の代わりにはなり得ない。


 ならば、悩む必要はない。槍の神器が1つしか錬成出来ないのであれば、所有者は俺こそが相応しい。


 俺は意を決して【はい】をタップ。


 眩い光が収束すると、目の前にみすぼらしい木の槍が現れた。


 これが……グローランス?


 俺は手にしたみすぼらしい木の槍――グローランスを眺める。


 俺は武器を目利きすることは出来ないが……手に取った感触、見た目からは、同じ消費CPであるシルバースピアを遙かに下回る性能の槍に思えた。


 ん? 何だこれ?


 スマートフォンを操作していると、ステータスの欄に【神器】と言う項目が追加されていた。


 俺はスマートフォンを操作して【神器】をタップする。


『銘   :グローランス

 所有者 :シオン

 ランク :F

 特殊能力:召喚(コール)

      収納(ストレージ)

 所有者と共に成長する槍

 グローランスの銘を変更しますか? 【銘を変更する】』


 は?


 ランクF? 所有者と共に成長する槍? 銘の変更?


 シンプルな表記の中に見過ごせない説明の数々。


 つまり神器とは成長する装備品……?


 神器というくらいだ……最終的にはAランクに成長するのだろうか?


 ユニークアイテムのブリューナクのランクはAだった。最終的にグローランスの強さはブリューナクの性能を超えるのだろうか?


 それにしても、最初のランクはFなのか。Fランクの武器を装備して稼げる支配領域ってまだ存在するのか?


 ――!?


 ちょっと待て……! 他の武器は装備出来るよな?


 今後グローランス以外の武器が装備出来ないのはシャレにならない。俺は慌てて愛槍――ゲイボルグを取り出した。


 利き手に持ったゲイボルグは心地よい重量感と、長い間共にした安心感を俺に与えてくれた。


 試しに、数度の素振りの後に特殊能力を使用すると問題なく発動した。


 グローランスは装備取り外し不可の呪われた武器の類いではないようだ。


 俺はゲイボルグを手放して壁に立て掛ける。


 ――召喚(コール)! グローランス!


 グローランスの特殊能力――《召喚》を発動させると、無手であった俺の利き手にグローランスが現れる。


 ――収納(ストレージ)! グローランス!


 《収納》を発動させると、グローランスは俺の体内へと吸い込まれていった。


 ふむ。この《特殊能力》は便利だな。


 サブロウあたりに神器を与えたら、一日中でも喜んで《召喚》と《収納》を繰り返しそうだ。まぁ、神器に刺突剣と言う項目はない。刺突剣はあくまで剣の一種。故に、サブロウが神器を手にすることはないのだが……。


 神器の性質は理解出来た。


 成長するならば、早めに育てた方がいいだろう。


 俺は27種の神器の授与をどうするべきか、頭を悩ませるのであった。

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