創造と錬成④
強敵となり得る魔王は、BPが50貯まったら何を成長させる? ――多くは【創造】を成長させるだろう。
近い将来――【創造】Aランクの魔王が溢れる時代が訪れるかも知れない。
現状も、周囲を見渡せば【創造】Bランクの魔王が溢れている。
ならば【創造】Aランクの魔王同士が争うと、勝敗を決める要因は何になる?
1つは、CPの総量――支配領域の数。CPの総量は兵力に直結する。
1つは、【創造】以外の魔王のステータス。一番影響を与えるのは【錬成】だろう。【肉体】か【魔力】が高ければ、魔王自身が最前線で暴れることも可能だ。
1つは、配下の質。眷属にした人類。降伏した魔王のみならず、創造された配下も戦いを経験することにより成長する。
この3つの要因の中で一番勝敗に影響を及ぼすのは――配下の質だ。
ここで、俺はとある事実に着目した。
俺の配下で一番強い配下は誰だ?
答えは――コテツだ。次点でリナかタカハル。その次が条件は限られるがイザヨイ。その次は、サラ、サブロウ、ヒビキ、セタンタ……と、人類か元魔王の配下が顔を並べる。
クロエやレイラと言った古参の配下も、弱くはない。積み重ねた経験により進化も果たし、創造したばかりの配下では太刀打ちが出来ないほどには強い。
但し――勇者や剣聖と呼ばれる人類や、元魔王の配下と比べると強さは一段落ちる。
【創造】Aランクで創造出来る配下の強さは未知数だ。【創造】Bランクで創造出来る配下よりも強いだろう。しかし――勇者や剣聖と呼ばれる人類や、己の強さを求めた魔王よりも強いのか? と問われれば……。
【世界救済プロジェクト】は
ならば、【創造】Aランクとは言え、スマートフォンのワンタップで創造出来る配下が人類を凌駕するのか? ――答えは、否。
人類のポテンシャルは創造される配下よりも高くないと【世界救済プロジェクト】は成立しない。全ての
更に、対魔王との戦いは基本的に――支配領域の侵略となる。
場合によっては、複数の支配領域を同時に侵略することにより相手の戦力を分散させる作戦も必要となるし、《宣戦布告》とか言うフザケタ仕組みも存在するが……肝となるのは、侵略可能な24人の配下の強さだ。
ならば、今の主力部隊――リナ部隊のメンバーを強化したほうがいいのではないか?
リナ部隊のメンバーを強化する方法は2つ。
1つは、戦闘経験を積ませてレベルアップさせること。
もう1つは――強力なアイテムを付与すること。
故に、俺は【創造】ではなく【錬成】を成長させるのが正しいと思えた。
一度、思考が【錬成】に傾けば、他にも【錬成】を成長させるメリットが幾つも思い浮かぶ。
例えば――『強奪』。
この世界はゲームに例えるならドロップ率は100%。倒した敵が持っている装備品は漏れなく奪い取ることが出来る。ならば、【創造】を成長させて【錬成】ランクAの敵から武器を奪えばいいのでは? と言う疑問も生じるが……果たして【錬成】ランクAの魔王がそう都合良く存在するだろうか? 俺の予想では、【創造】Aランクの魔王は多数存在し始める可能性はあるが、【錬成】Aランクの魔王はそこまで存在しない。
ここで発想を切り替える。
【錬成】Aランクの魔王は多数存在しないが、【創造】Aランクの魔王は多数存在し始める可能性が高い……。つまり、【創造】Aランクの魔王を降伏もしくは消滅させれば【創造】Aランクで創造出来る魔物を『強奪』出来るのではないか?
更には――『外交』。
これは実現するかは不明だが、将来的に名高い魔王が支配領域を国化したら……争い以外の選択肢が生じる可能性がある。同盟、休戦協定……従属。魔王同士の外交がどのような形になるのは不明だが……【錬成】Aランクが希有な存在であれば、《アイテム錬成》で創られたアイテムは特産品として交渉のカードに使用出来るのではないだろうか?
特産品は、ユニークアイテムにする必要はない。【錬成】がAランクに成長すれば《アイテム錬成》出来るアイテムの種類の中に、【錬成】Bランクで《アイテム錬成》出来るミスリルシリーズのような汎用品も存在するだろう。
よし、決めた!
「――【錬成】をAランクへと成長させる」
思考の海から抜け出した俺は、辿り着いた答えを口に出すのであった。
◆
いざ、BPを振ろうと思っても、中々指が動かない。BPを振ること自体約1年振りだし、BPの振り分けは今後の戦略を左右する重要な決断だ。支配領域へと帰還した俺は自室に戻り、カノンとヤタロウを呼び、背中を押してもらうことにした。
「――と言う訳で、【錬成】をAランクに成長させようと思うが、どうだ?」
俺は長々と自分の思い付いた【錬成】を成長させるべき理由を2人に説明した。
「なるほど……。外交とはシオンも面白いことを考えるのぉ」
「確かに……! 元魔王の皆さんやリナさんとコテツさんの強さは別格でしたねぇ」
ヤタロウは顎に手を当てながら笑みを浮かべ、カノンは興奮した様子で空中を飛び回る。
「参謀殿の意見は【創造】推しだったと記憶しているが?」
俺はあっさりと賛同を得るのも物足りないと感じ、カノンに意地悪な質問を投げかける。
「そ、それは……参謀として王道を説いたと言いますか……王道は王道足る理由がある訳でぇ……わ、私以外も全員【創造】推しだったじゃないですかぁ!」
カノンは、最後にはまさかの逆ギレで押し切ろうとする。
「ふぉっふぉっふぉ。シオン、あまりカノン嬢をいじめるでない」
困り果てたカノンにヤタロウが助け船を出す。
「そういえば、ヤタロウには聞いていなかったな。ヤタロウが俺の立場なら……【創造】と【錬成】、どちらを成長させる?」
「愚問じゃな」
俺の問い掛けにヤタロウは自信に満ち溢れた表情を浮かべる。
「愚問か……。で、答えは?」
「――【錬成】じゃ」
「ほぉ……。理由は? まさか、俺がさっき言った説明と同じとは言わないよな?」
俺はヤタロウの断言とも言える回答に興味を惹かれる。
「当然じゃ。シオンよ【創造】を成長させることによるメリットは数多く存在する。例えば、《支配領域創造》が強化されれば新たな罠の創造が可能になり防衛は容易くなるじゃろう。他にも内政――領民の生活が向上する新たな施設が創造出来る可能性も高い。とは言え、シオンの考える一番のメリットは何じゃ?」
「《配下創造》の強化だな」
「そうじゃ。シオンの性格を考えたら……罠の設置は儂任せじゃし……国家と言っても細かいところは配下任せ……まぁ、それはよい。【創造】を成長させる最大のメリットは《配下創造》が強化される――つまりは、より高ランクの配下を創造出来ることじゃ」
「そうなるな」
「ならば――《乱数創造》じゃ! 乱数の女神が微笑めば……SSRの配下が創造出来れば、全て解決じゃ! 確かに、乱数の女神は気まぐれじゃ……。SSRを引くのは容易ではない! しかし! 女神は儂らを見ておる! 儂の……いや、シオンの信仰心を試しておるのじゃ! つまり、乱数の女神に祈りを捧げ……数を重ねることにより――」
その後もヤタロウのご高説は長々と続くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます