魔王になったらしい
目を覚ますと、見慣れた天井が目に映る。
俺の部屋?
息を吸えば、慣れ親しんだ空気。見渡せば、見慣れた風景。
間違いなく、俺が借りているアパートの部屋だ。
起き上がると、貧血のように頭がクラクラする。
寝落ち? 夢?
先程までの奇妙な体験を思い返す。
どこから夢で、どこまでが現実だ?
全ての人類が迷惑メールを受信。その迷惑メールは適性調査で、国の勧告もあったから俺は適性調査を実施。その結果、俺の適性は【カオス】。
そして、少女――黒幕の声だけが頭に響く変な空間に監禁されて……。
俺は左手に握り締めていたスマートフォンを操作しようと、持ち上げる。
――ッ!?
偏頭痛のような痛みが頭に響く。
俺は今何をしようとした?
――!?
俺の名前は? ……
違和感を覚える。……!? 違う、俺には名字があるはず。
知識として、生を受けるためには両親が必要であることは頭で理解している。
しかし、両親の顔も名前も何も思い出せない。
思い出すのは黒幕の言葉。
『【ロウ】、【ニュートラル】の人類から、【カオス】の人類の記憶は全て消し去ったよ。キミ達【カオス】の人類からは、自分以外の全ての人類の記憶を消し去ったよ。これで、気兼ねなく争えるでしょ?』
つまり、そういうことなのか?
全てが夢じゃなく、現実なのか?
呆然とした俺は、その場で静かに立ち尽くす。
何も聞こえない静かな空間。
見慣れた風景、慣れ親しんだ空気。
しかし、世界から切り離されたような静寂の空間。
――!?
静寂の空間?
俺は慌てて部屋から飛び出した。
アパートから飛び出すと、見慣れた景色の中に――あり得ない光景が目に映る。
遠くを見渡せば山が見える。アパートの前にはアスファルトの道路。住んでいる人は知らないが、見慣れた民家やアパートが立ち並んでいる。
しかし――人の気配が一切無かった。
歩いている人、自転車に乗っている人、そして道路を行き交う車――全てが存在しなかった。
まるで、この世界に俺一人が取り残されたような幻想に襲われる。
俺は部屋へと戻り、ベッドに腰掛けスマートフォンを操作した。
スマートフォンの画面には見慣れたアイコンの中に、見慣れぬアイコンが加わっていた。
【世界救済プロジェクト】とラベルが下部に表示された、アイコンをタッチする。
『【世界救済プロジェクト】スタート☆ まずは、自分のステータスを知ろう。【ステータス】』
【ステータス】をクリックする。
名前:シオン
適性:カオス
種族:魔王
LV:1
CP:100
肉体:E
魔力:E
知識:E
創造:E
錬成:E
BP:10
特殊能力:魔王
支配領域創造
配下創造
アイテム錬成
闇の帳
「ゲームかよ! ってか、人間辞めてるじゃねーか!」
思わず俺は、大きな独り言を叫んでしまう。
――!?
叫んだ拍子に、スマホに指が触れてしまったのだろうか?
画面には――『創造:支配領域創造及び配下創造に反映』と、説明が表示されていた。
その後も、各項目をタッチ。
各項目の説明は――。
LV:レベル。強さの目安。レベルが上がるとBPを獲得。
CP:カオスポイント。全ての現象を実行するために必要なポイント。時間と共に緩やかに回復する。
肉体:腕力、耐久、敏捷、反応に反映される。
魔力:一部の特殊能力の威力に反映。特殊能力の習得にも関わる。
知識:造詣の深さ。
創造:支配領域創造及び配下創造に反映。
錬成:アイテム錬成に反映。
BP:任意の能力を上昇。BPはレベルが上がると獲得出来る。
特殊能力:習得している特殊能力。
魔王:大気中の魔素を吸収し、それ以外のエネルギーが不要となる。支配領域創造、配下創造、アイテム錬成の特殊能力を得る。
支配領域創造:支配領域を創造する事が出来る。
配下創造:配下を創造する事が出来る。
アイテム錬成:アイテムを錬成する事が出来る。
闇の帳:闇と同一化する。
大雑把な説明だな。もう少し詳しく説明しろよ……。
続いて、スマートフォンを操作。
画面には――。
『魔王のい・ろ・は☆
い! まずはBPを振って、能力を強化しよう!
ろ! 続いて支配領域を創造して、自分好みに仕上げよう!
は! 最後に支配領域を守る配下を創造しよう!
これで準備は完了だ! 激しい争いを繰り広げて、世界を救済してね!』
……終わり?
画面には【ステータス】【支配領域】【所持品】【配下】【支配領域創造】【配下創造】【アイテム錬成】【BP消費】【スペシャル】とラベルの付いたアイコンが表示された。
スペシャル? 他の項目とは少し色合いの違う項目が気になり、タッチする。
『スペシャルサービス☆ どのような質問でも一つだけお答えします』
スマートフォンの画面には俺を非常に悩ませる文章が表示されたのであった。
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