春来にけらし

@ukisakura

第1話 朝ぼらけ

白い霞がかったアスファルトに、夏特有の湿度を帯びた空気が肌にぴったりと寄り添う。

本当は、この心地よいふわりふわりとした空間をあなたと共有したかったなという想いがふとよぎる。「ふふっ」と口がほころぶけれど、その吐息混じりの小さな声は、決して叶わないという絶望や落胆を超えた先にある感情から漏れ出た『私の本心』だった。


今この霧を前にして、ここに私が存在していることさえ真実かどうか判断がつかない。

明確な答えがないと人は惑う。明確な道、明確な結果、明確な、、、、『ワタシ』という存在。


いま私は迷子だ。明確な『ワタシ』を何処かに置いてきてしまった。


朝ぼらけ。ひとり身を抱く君想いつつ。


これが今の私。紛れもないイマのワタシ。

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