ポニテちゃんのおっ友達

「こんばんはー! お疲れ様でーす」




夜になりまして、みのりんをぺろんと頂きまして、夜勤に出かけるその眼鏡さんっ部屋を出ると、ちょうどポニテちゃんがピンポンを押そうとしていたところだった。




「よーし。じゃあ、行きますか」




「はい!新井さんが送っていってくれるんですね」



「あたぼうよ」



今日が初出勤のポニテちゃんはちょっと緊張した面持ち。俺が彼女の誕生日にプレゼントしたリュックを持つ手にも力が込もっているのが分かる。




そんなポニテちゃんも引き連れて、マンションの敷地内から国道とは反対側へ。



運動公園に向かう歩道を3人で歩いていく。




たまにある街灯に照らされたポニテちゃんは少し緊張した面持ち。




そんな彼女に俺はさらにプレッシャーを与える。




「さやかちゃん。なんかミスったりして、おばちゃん集団からいじわるされたりしないように気をつけるんだよ」





「怖いこと言わないで下さい」





ポニテちゃんからそんなことを言われつつ、さらに隣を歩くみのりんからも眼鏡越しに鋭く睨まれる。




「新井くん。そういうこと言わないで。そんな新人にいじわるするような人はいません。………………多分」






「みのりさん。余計怖いです」






ポニテちゃん自慢の胸元が少しだけ縮んでしまった。







運動公園横の道を歩き、すずめベーカリーがある交差点を少し行くと、洋菓子工場が見えてきた。




「さやかちゃん。ほんと、頑張ってね………。ちょっとでも体調悪いなって思ったら、無理しないで休むんだよ。



ちゃんとお昼ご飯食べてね。お金は持ってきた? ……ちょっとジュース代くらいあげようか? ちゃんと班長さんとかの話を聞いて、何か言われたら必ず返事をして…………」





「新井さん。大丈夫ですよ。心配しないで下さい。あと、手を離して下さい」





ポニテちゃんのすべすべな手をにぎにぎするのが今日最大のミッションだったので、心配しているっぽい言葉を並べて、俺は少しでも彼女と繋がっていようと企む。




しかし、それも見透かされてしまったようで、ポニテちゃんが俺の手をぺちんとはたき落とす。




「新井さんはやっぱり信用なりませんね」





「でも、心配してるのは本当だよ。君にもしものことがあったら、ご両親になんと言ったらいいか………」





「新井さんは私の何なんですか。少しは信用して下さいよ」




ポニテちゃんがそう言うと、その隣にいる眼鏡がここぞとばかりに妖しく光る。









「新井くんは、私のことをそんな風に心配してくれたことないよね?」





みのりんまで俺を攻め立てるのは止めて下さい。








9時間程経ちまして朝になりました。





ポニテちゃんに軽蔑されながら、みのりんに軽く嫉妬されながら、それを心のおかずにして帰ってソッコーぐうすか眠った俺は、朝になって夜勤を終えた2人を迎えに行く。




工場の前で、にゃーにゃーと鳴き声を出してすり寄ってくる野良猫と戯れながら少しの間待っていると、女の子の集団が建物からぞろぞろと現れた。




みのりんがいて、みのりんと同じチームの若い女の子達がいて、さらにその中にはポニテちゃんもいる。



俺がいる方向に向かって、楽しそうにお喋りしながら歩いて近づいてくる。




その中にポニテちゃんも加わっているので俺はほっと一安心。





「あ、新井さーん! おはよーございまーす!!」




俺を見つけたポニテちゃんが手を振って駆け寄ってきて、それを追いかけるようにみのりん達もやってくる。




「ちゃんと朝起きれたんですね!偉いです」




「どうだった、さやかちゃん。初出勤は」





「慣れないことも多かったですけど、1つ1つ聞いて確かめながらなんとかやりました」





「あら、そう。さすがさやかちゃん」





朝日に照らされた、達成感に満ちたポニテちゃんの笑顔が眩しい。





「新井くん、おはよう」





「「新井さん、おはようございます!」」





「おー、みんな。おはよう。お疲れ様!」







「さやかちゃん、いい感じだよね。結構器用だし、力持ちだし」





「そうそう! 後半は安心して任せられたよね」




「あたしが初めての時よりも全然出来てたよー」




「そ、そんな。皆さんのおかげですよ」





みのりんのお仲間の女の子達がこぞって、初出勤だったポニテちゃんを誉めている。




どうやらポニテちゃんは運よくみのりんを含めたこの子達と同じチームに振り分けられたみたいで、1日でだいぶ戦力になる活躍をしたらしい。




ルーキーの選手がデビュー戦で2安打するみたいな。




ええ。雰囲気的にはそんな感じです。





そんな会話を聞きながら、工場からの道を歩きまして。というのも、ご飯休憩の時にみのりんがお仲間にすずめベーカリーのパンはすごく美味しいよ。



みたいな話をしたみたいで、じゃー仕事が終わったらみんなで行こー! というノリになったようで。



俺とみのりん。そしてポニテちゃん。さらに、お仲間3人衆の6人ですずめベーカリーにやって来ました。




いつものよにすずめベーカリーには、店主のとその奥さんと、アルバイトの女の子の姿が見えまして、お店の中に入りましたら……。






「おはようございます! いらっしゃいませ!………あー! さやかちゃん!」






「え? ………あ、綾子ちゃん!」




レジに立っていたアルバイトの女の子と、ポニテちゃんが驚いた顔をシンクロさせていた。




「どうした、どうした? さやかちゃんのお友達?」




「そうです! 同じ学部の仲良しの綾子ちゃんです! 一緒に沖縄旅行にも行く!」




「そうなんだ。すごい偶然だね」





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