第46話

本日もよろしくお願いします。


※※※★※※※



 九月二日が最初の月曜日。九月一日が日曜日だったので今日が二学期の初日。なんか夏休み一日得した気分がするな。


「皆さん、おはようございます」

「「おはようございます!」」

「皆さん、夏休みは有意義に過ごせましたか? 今日はこの後すぐに始業式に――」


 萌々花と兄妹になることが決定したけどこれといってやっぱり生活は変わっていない。夏休み最後のこの土日も以前と変わらずいちゃついたり、買い物したり、学校の新学期の準備をしたりと普段と全く変わらない平々凡々と日々を過ごした。

 実は正直、ホッとしていたんだけどね。突然、義妹だ義兄だとなってしまい萌々花と俺の関係がギクシャクしたらどうしようなんて考えていたんだ。

 ま、杞憂に終わって良かったよ。俺たちはやっぱ俺たちのままだったってことなのかな?


「ふぁ~ 校長は相変わらずつまんない話をダラダラと話していたなぁ」

「まあ、そういってやんなよ。つまんない話をダラダラするのがあの人の仕事なんだろうから」


 拓哉とジンが結構ひどいことを言っている。まあ俺も同意しているので人のこととは言えないんだけどね。


 今日は始業式とLHRだけなので午前中には開放される予定となっている。

 放課後になったら、一応、俺のことを心配してくれていたから須藤のところにも行って腕の調子を報告はするつもりだけど。


「――ということで、明日からは普通に授業がありますからね。教科書等忘れないように! では日直さん、号令を」

「起立、礼、さようなら~」


「なあなあ、宿題見せてくれよ~ ぜんぜん終わってないんだよ!」

「今からか? いいかんげん間に合わないんじゃないか?」

「これからカラオケ行こうぜ!」

「OK! じゃあ隣のクラスの女子を誘っていいか?」


 久しぶりに会ったからか、クラスメイトたちは各々楽しげに宿題のことや遊びに事で楽しげに笑いあっていた。


 俺の方は、父さんからはまだ萌々花の養子縁組について連絡がいっていないのか佐藤先生からも特にこっちに注意を向けることなくあっさりと放課後になった。まあ、役所に書類を提出して萌々花と兄妹になるのは今月の上旬あたりだと聞いているので今のところは他人と言う状態だし、わざわざ先生に先出しで連絡は入れないものなのかもしれない。


「なあ漣。今日は用事あんの? 遊ぶ?」

「ああ、ちょっと須藤先生のところ行かなきゃならなくてさ」

 拓哉には申し訳ないけど断りを入れる。


「マジか? 夏休み明け一発目からスド先ところなんて、おれは嫌だね!」

「拓哉の須藤先生の評価がひどすぎる件について!」


「だってよ仁志。夏休み中の部活がかなり辛かったんだぜ。走り込みだの筋トレだのって雨の日だって休みくんないんだもん」

 あ~須藤は熱中症対策はしっかりしながらも、ガッツリ追い込んでいくタイプだからな。


「そんなこと言ったらうちのマネージャーだってひどいんだぜ⁉ 僕が休みたいっていうのに無理やりシフト入れられて沙織とのデートが夜になったことが何度かあるんだから」

 ジンのホムセンバイトも大変なようだ。北山さんとの交際も順調な様子だけど、夜にデートなんて大人なことしているな。


「デートできるだけマシじゃないか⁉ おれなんかヘトヘトで雫と夜のデートなんか――」

 ワイワイガヤガヤと騒いでいるうちに一人二人と教室を後にしていく。


「じゃあ、今日は部活ないし、雫もいないから帰るな!」

「じゃあな。僕もバイトだから行くね。また明日!」

「バイバイ。ふたりとも」

 二人が帰っていったので俺も用事を済ませに行こう。



 一人ぶらぶらと昇降口で上履きから靴を履き替え、須藤のいる体育館の職員室に向かう。まだ九月なので太陽はジリジリとクソ暑い。

 いちいち体育館まで行くのに外に出るのが面倒だけど、校舎内を廊下伝いに体育館まで行くとなるとそれはそれで渡り廊下まで行かなきゃいけないので遠回りになりめんどくさい。

 もう行くのはよそうかな、って思いが浮かんできたのをよく抑え込めた。俺エライ!


「よ~ すど~ 久しぶり~」

「あ、師匠! お久しぶりです。その後、腕の調子はどうでしょうか?」

「ん、心配してくれてありがとう。この通り順調だよ。あとは地道にトレーニングをするだけだ」

「良かったです~」

 須藤は本当に俺の回復を喜んでくれているようだ。感謝しかないな。


「麦茶どうぞ。あっ、そういえば師匠。近々鈴原萌々花さんと兄妹になるんですって?」

「ぶふぅっ! な、なんでオマエがそれを知っているんだよ?」


 須藤の質問に思わず口に含んでいた麦茶を吹き出しそうになった。


「え? 普通に誠治お父様に電話連絡頂いてそう聞きましたけど? 近いうちにあの二人はそうなるから頼んだぞ、って」


「んなことまったく聞いてないし……。なんで須藤に教えているんだよ。あれ? そうするともしかして佐藤先生も知っている感じになるのか?」


「そりゃあ、あゆみは師匠のクラスの担任ですからね。ちゃんとするように私から言い含めておきましたよ」


 つまり今朝のホームルームでは全部を知った上であの態度を取っていたということなのか……。佐藤先生はやっぱ只者じゃないな。俺だったら気になってチラチラ見ちゃいそうだよ。


「はあ、もう知っているならあれこれ言う必要はないな。まあ、そういうことなんでよろしく。ただ、大っぴらにするつもりはないんで、内密に頼むな」


「はぁ、大っぴらにしちゃまずい何かがあるってことですね?」

「……ねえよ。ただめんどくさそうだな、ってだけだぞ⁉」


 義兄妹になったことをみんなに話して、


『わたしたち義兄妹になりました!』

『ハイそうですか! 良かったですね!』


 で、済むなら俺もいちいち秘密になんかしないさ。だけど、学校のみんなに根掘り葉掘り聞かれると俺や萌々花の過去の家庭事情から説明しなきゃならなくなるだろう。それは俺にとっても萌々花にとってもストレスでしかないからな。勘弁してもらいたい。


「ああ、そういうことですね。わかりました。師匠の願いは弟子の願いですから、お任せください! 秘密厳守、励行したします!」


 須藤はいちいちが重いんだけど……。



※※※★※※※

秘密が秘密じゃない件w


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