第40話

災害明けにすぐに復帰する公共交通機関ってすごいよなって思います。

今日も読んでくれてありがとうございます。

※※※★※※※



 通常なら二時間弱で到着するのだが、乱れたダイヤに速度を落としでの運行だったので結局二時間半ほどかかってやっと実家近くの最寄り駅に到着した。


「走ればトロトロだし、しょっちゅう駅に長停車するもんだったから結構遅くなっちゃったな。まぁ、連絡はしてあるんで父さんたちは心配してないようだけど」


 出発前からやたらと母さんから心配している旨のメッセージが届いていたので、問題などないと返信し、電車での移動中も逐次様子を伝えていた。あれでいて心配性な両親なので余計な心配はかけたくないという漣のちょっとした心遣いだった。まあ心配されていることが嬉しかったってこともあるのだけどね。




「「ただいま」」


「おっ、おかえりももちゃん」

「お疲れ様。萌々花ちゃん」

「ああ、漣もお疲れ。腕は大丈夫か?」


 漣よりも萌々花のほうが先に両親から迎え入れられ、俺はついでのような扱いで、更には腕の心配でさえおざなりな感じに若干拗ねてしまう。

 しかしその拗ねた仕草さえ両親はあまり気にもしていないようで萌々花を家に招き入れることにしか興味がなさそうで、俺の捻くれ具合は更に増してしまった。あの心配メッセージも萌々花のことなのかよ!


「なんだよ、萌々花ばっかり……」


「ん? なんだ。漣も甘やかしてほしかったのか? そう言うのは好みじゃなかったんじゃないのか」

「……いや。好みかと聞かれれば違うというけど。もういいよっ、とりあえず疲れたから休ませてくれ」


 自分が拗ねていたことがバレていることに、恥ずかしくなってしまい余計に拗ねたような態度を取ってしまった。その結果、三人から生暖かい目で見られることになるのだが、余計に恥ずかしくなった俺はリビングに逃げてしまった。


「まったく漣くんは未だに甘えベタなんだね、うふふ」

「まあそう言ってやるな。あれでも以前よりはだいぶ険が取れたんだから。それもこれもももちゃんのおかげかな?」

「えぇ、そ、そんな大層なことわたしはしていないです。絶対に誠治お父さんと佳子お母さんの愛情のおかげですよ」


「…………」

 もういいよ。イジらないでくれ!


「ま、そういうことにでもしておこうか。さあ、漣もももちゃんも一旦、休んでいてくれ。もう少ししたら仕事が片付くから、そうしたら夕飯に出かけよう」


「……そっか。じゃあ部屋に荷物をおいてこよか、萌々花」

「うん」




「――って、俺の部屋が完全にベビー用品で溢れかえっているんですけど?」

「ああ、漣くん。言うのを忘れていたけど、今日からは萌々花ちゃんと同じ部屋にしてね。あっちの部屋は私たちの赤ちゃん用の備品置き場にすることにしたから」

「は? ま、まあいいけどさ。今更萌々花とは恥ずかしがる間柄でもないから……」

 それにしてもベビーグッズが既にこんなにとは……。母さんの出産予定日はまだ半年も先なのにな。


 そういうことで俺の実家での部屋は萌々花と同室って事になった。ただ、もとから萌々花用として用意してあったベッドはシングルなのでそこは布団を敷いて寝るか、一緒にシングルベッドで寝るかということになる。


 一緒に寝ること自体は吝かでないどころかウェルカムなのだが、両親と同じ家にいる間にシングルベッドで萌々花と抱き合って寝るのはちょっと恥ずかしいんだけどな。


「ふ、布団用意しないとな……」

「は⁉ なんで? わたしと一緒に寝られるでしょ? わざわざ布団を用意することはないよ!」


 萌々花には恥ずかしいという考えは無いようで、結局のところ有無を言わせず漣は萌々花と一緒のベッドで寝ることになった。


「れ、漣? そのかわり、アレは無しね? 声を聞かれちゃうとわたしも恥ずかしいからね」

「いや、それはそうだろうけど……。そうか、生殺し状態なのかよ……」


 どうしても我慢できなくなったらそういうこと専門のホテルにでも昼間に行けばいいと邪な考えが横切る。

「(確か四駅ほど移動した先にそういうホテルがあったはずだよな)」




 翌日は自らのリハビリとアルバイトと言うには拙いお手伝い程度のことを両親の経営するジムで励んでいるとあっという間に時間は過ぎて、今日の夕方にはお泊まり会を行うために友達連中がやってくる。


 女の子は萌々花の部屋に、男どもはお盆期間中は使われないジムの道場で雑魚寝することになっている。全員道場で雑魚寝でも特には問題にはなりそうもないのでそれはそれで、時と場合に任せるつもりだった。


「おー久しぶり~」

「うす、拓哉! みんなも、久しぶり」


 拓哉、ジン、雫ちゃんに北山さん。改札前で待っていると大きな荷物を持った四人がやってきた。


「二週間ぶりぐらい? どうだい腕の方は?」

「さんきゅ、ジン。リハはきつかったけど、代わりに以前と遜色ないぐらいには動かせるようになったよ。まあ、筋力は落ちているからひ弱だけどな」


「良かったね~」

「ほんとすごく心配したのですからね」


「雫ちゃんも北山さんもありがとう。心配かけたけどなんとか大丈夫そうだよ」

 本当に心配をかけていた。一時は学校にも通えない状態だったから一緒に遊ぶことができるようになって友人四人もホッとしてくれたようだった。


 夕飯の後は道場に集まり思う存分ボードゲームや他愛も無い会話を楽しんで、想定していた通り、六人で道場の畳に布団を適当に敷いて雑魚寝したのであった。



 翌朝、昨夜何時に寝たのかわからないけどだいぶ遅い時間だったようでみんなが起き出したのは一〇時を迎えるちょっとまえとなっていた。


「おはよ……」

「……ん。おは」

 誰ともなく挨拶する。


 六人でのそのそと道場を出て階上にある自宅の方のリビングに向かうと既に冷めていたけど朝ごはんが用意してあった。

 両親はお盆中であろうと仕事の方は稼ぎどきなので、既に営業中のジムの方に行ってしまっている。今日は確か都内にある支店の方に行っているはずだった。


「うわぁ、朝ご飯まで用意してもらっているのになんの挨拶もしてなくて申し訳ないよ!」

「そ、そうだよね~ どうしよう、拓哉」


「いや、気にしなくていいよ。昨日父さんも母さんも『どうせあなた達は寝坊だろうから適当に食べたら遊んでおいで』って言ってくれていたから、気にしないでくれ」


 そういうと明らかにホッとする四人。萌々花はわかっているので最初から気にしていない。


「じゃあ、「「「「「いただきます!」」」」」」


 朝食はしっかり取らないとね!



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※ベビー用品云々が分かりづらかったようで、追記しました。赤ちゃん用品は両親の赤ちゃんです。漣と萌々花の間の子ではないですww

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