第37話

憧れのお泊まり会。そんなことやったことないわ(泣)

カテ週間100位以内(71位)ランクインしてました。ありがとうございます!


※※※※★※※※※




 女の子たちのお泊りはうまく許可が出るか心配しているんだけど、反対に拓哉とジンは無問題として俺の中では最初から片付けているんだ。野郎が友達んところに泊まるのにあれこれ言われるようなことはないと思っているんでね。


 でもさ。


 例えば雫ちゃんはOKで北山さんがNGとかだったら来づらいよな⁉ なんだか仲間はずれみたいだし。


 そういう場合はやっぱり日帰りで、近くの海とか遊園地なんか行ったほうがいいのかな?


 いや、海だと水着になるからいろいろと目のやり場とか大変に……萌々花だけならいいけど、スタイルの良さそうな北山さんとか……いやいやいかんいかん! 海だってプールだってかまわないはずなんだよ! 邪な視線で見ようとするからおかしくなるんだ!


「漣。雫ちゃんも紗織ちゃんもOKだって!」

「え? そうなの……」


「なんか嫌なの?」

「ぜんぜん。なんか一人で煩悩って損した気分なだけだよ」


「? へんなの。それより漣は城島くんと向波くんからは連絡きたの?」

「まだだけど? 彼奴等はどうせ平気だろうと思っているんだけど」


「そうかな? 案外と男の子のほうが心配されたりするものだよ⁉」

「そうなの?」


「そうだよ」

 知らんかった。俺ってば親に心配されるようなこと全然経験したことないもんな。いや、誠治父さんには心配ばかりかけているけど、その前のことな。


『まあ大丈夫だろう』なんて軽く考えていたんだけど、実は、無問題で平気だと思っていた男二人のほうが親の説得に時間がかかってヤキモキ焦られたのでした。萌々花の言っていた通りになったのでちょっと驚き。


 拓哉もジンもふたりとも思いの外過保護、と言うか大事にされている感じがしてちょっとほっこり。大事にされている本人たちはウザがっているみたいだけどね。


 彼らの話を聞いたあとそれを自分に置き換えてしまった俺にはちょっと思うところがあったのだけれど、もしかしてそのせいで暗い顔でもしていたんだろうか?


 そっと萌々花がまた抱きしめてくれた。

 ここのところずっと萌々花からことさらに甘やかされている感じが拭いきれないし、拭う気もなく甘えている自分にも諦めに似た感情があったりするんだ。


 でもこの心地よさは手放せないんだよなぁ。


「萌々花……」

「ん、大丈夫よ。誠治お父さんも佳子お母さんも漣のこと大事に思っているよ」

「ん。ありがと」

 この後、寝付くまでイチャイチャしながら週末の夜は更けていった。


 なんか俺たちっていちゃついてばかりのバカップルだよな。


 おかしいなぁ、つい最近まで人見知りの激しい棘々した陰キャ風情男子と他を寄せ付けない闇を抱えたギャルのふたりだったんだけどな。ははは、変われば変わるものだな。






 目を開けるがまだ夜明け前なのか薄暗い。隣では萌々花がすーすーと寝息を立てている。


 ただその寝息もそちらに意識を向けないと気づくことはなかったと思う。


 何にしろ、今、音といえば部屋の窓を激しく叩く雨音なんだ。びちゃびちゃというよりバチバチと言ったほうが正しい表現かもしれない。


 枕元のスマホの通知ランプがチカチカと光っていて暗闇に慣れている目に痛い。ランプの五月蝿いスマホに腕を伸ばして、手に取りロックを外す。

 画面の通知には防災アプリの通知が表示されており『台風が進路を西寄りに変更……』と記事の一部が見えている。


 昨夕の予報では台風の進路はもっと東寄りで俺たちの住む地方では、せいぜい小雨とやや強い風が吹く程度の予報だったので俺たちは完全に安心しきっていた。

 まあ台風がやって来ようともうちの窓ガラスは二重でかつワイヤー入りなので割れて破片が飛び散るなどの被害は考えにくいし、マンションの建つ立地も高台なので洪水でどうこう慌てることもなさそう。


 罹災の可能性が低いとなれば気が楽だ。なので、

「二度寝しよ……」

 すやすや寝ている萌々花をもう一度抱き直して二度寝を楽しむことにした。



 暫らく経って……。

 日が昇っている。たぶん。


 二度寝前に目が覚めたときよりもなんなら外は暗いような気がする。

 さすがに気のせいだろうけど。


「おはよ……。すごい音だね」


 萌々花も俺と一緒に起きたので二人で、のそのそとパソコンを開いてお天気情報サイトを開く。スマホでもいいんだけど情報量を考えるとパソコンに軍配が上がると思っているのでどちらかというと俺はパソコンで調べ物をするんだ。


「どれどれ⁉ ポチッと……」

「ふふふ、漣。ポチッとなんて、おじさんみたいだね」


「うるさいなぁ~ あはは……え?」

「どうしたの? あ‼」


 台風は夜中にスマホの通知を見たときよりも更に西寄りのコースをたどりこのままでは今夜には俺たちの住む地方を直撃するコースになっていた。

 想定よりも太平洋高気圧の張り出しが云々かんぬん……お天気サイトのライブ動画で気象予報士が半笑いで言い訳をしているのを横目で見る。


「直撃だねぇ」

「雨と洪水はマンションの立地からして平気そうだし、風もベランダは片付けてあるからものが飛んでいってしまうようなこともないよな……」


 元々今日はリハビリ通院の他には外出の予定もなかったし、この暴風雨の中病院に行こうとは思わないので、本日はこのまま自主リハビリを午前中にやっておくことにした。


 午前中のリハビリ運動の後はもうやることもないので二人でパソコンの画面で映画を見たり、各々が勝手にスマホのゲームに興じたりして時間を潰した。

 まあ間々にイチャイチャするのは忘れないんだけどね。




「暗くなってくると、風の音とかが怖く感じるんだね」

「そうだな。窓の隙間から若干生ぬるい風が入り込んでくるのも気持ち悪いよな」


 エアコンが稼働しているので暑くて不快というほどではないが、住んでいるマンションがやや古いので隙間風など強風時には感じてしまうんだ。


「さて、そろそろ腹が減ってきたし夕飯にしようか?」

「そうだね……。はっ‼」


「ん、どうした。萌々花」

「食べ物がない!」


「ああっ!」

 この日曜日の昼を過ぎたら約一週間実家に帰るつもりだったので食料品は足りない分を都度買えばいいと考えていたため食べるものが少ししか家に残っていない。


 昼飯を摂っているときに気づいたら良かったんだけどあいにく完全に思考から抜けていた。


「とりあえず、前のコンビニで今晩、明朝の分ぐらいは買えるかもしれないから行ってくるよ」

「え? この台風の中じゃ危ないよ!」

「いや、コンビニはこのマンションの六メートル道路挟んだ向こう側だし大丈夫だよ⁉」




 ………。


「いやぁ参ったマイッタ……雨が真横に降っていたよ」


 行きに左半身びしょ濡れになり、帰りに右半身びしょ濡れになりでトータル全身びしょ濡れになった。



※※※※★※※※※


台風は怖いね。洪水とかどうすればいいのかわかんないよね……。

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