第27話

作者の心の中の1章が終わっていないのに既に10万字越えている……はて? 長くてごめんと謝っていたのに一話四千字超えがデフォになっているし……はて? いつの間にか1話公開から一ヶ月経ったみたいだわ! はてはてはて?

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「でもな。今直ぐは付き合えない」

 俺の発した言葉に萌々花が固まるのが分かった。


「いや、ごめん。またやってしまった! 俺の言い方が悪いだけで……えっとね」




 俺自身が今思っていること、今まで思っていたこと。


 俺の駄目なところ、越えなければならない過去のことを未だに引きずっていた件。

 どれだけ萌々花に支えられ、助けられたのか。守られていたのか。


「萌々花は俺にずっと好きを伝えてきてくれていたのにな。同じような過去を持っているのに萌々花には敵わないなって、さ」

 萌々花はじっと俺の目から目を離さず聞いてくれている。


「過去を乗り越え、自分を変えていかないと、どんなに萌々花のことが好きでもほんとうの意味で守っていけやしないと思うんだ」


「…………」

「えっと、そんな感じで……えっと。過去を乗り越えるように身体だけではなくて精神も鍛え直して、その時もう一度萌々花に告白してお付き合いを申し込もうかな……って」

 一度止まっていた萌々花の涙が滝のように流れている。もはや号泣と言っていいくらい。


「あじがどぉ~ やっば……れんは漣だったぁ~ 大好ぎ~」

 抱きしめて暫く頭をなでていたら、萌々花もなんとか泣き止み落ち着いてきた。




「あのね、わたしも――」

 萌々花の話を聞くとその思いや考えは驚いたことに俺とほぼ一緒だった。


 俺達はお互いに相手には敵わないとリスペクトしながら、カタチが違うにしろ相手に対する思いだけ募らせていたようだ。


「だから……わたし達ずっと両思いなくせに過去を乗り越えられなくて最後の最後でグズグズしていただけなんだね」


「悩むことはあると思うけど、萌々花。一緒に乗り越えてくれないか?」

「もちろんだよ! 漣、二人で力を合わせて頑張ろうね」



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 萌々花は泣いてしまったので目が少し腫れぼったいが、夕飯を抜くわけにはいかないので階下に一緒に降りることにした。



 ダイニングでは佳子母さんがニコニコした顔で俺達を迎えてくれた。


「あら、仲良く二人で一緒にご飯食べに来たのかしら? ごめんね。二人がお話中だったみたいだから私と誠ちゃんは先に頂いちゃったわ」


「遅れてごめんね」

「すみませんでした」


「いいのよ~ そのまま二人とも座っていてね~」

 俺と萌々花は母さんに謝って食卓につく。



「うお!」

 びっくりした。



 食卓の陰で見えなかったけど、父さんが床に正座して食事をとっていた。いや、食事は終わってお茶をすすっていたのかな。


「ど、どうしたの? 父さんは何でそんなところで食事をとって……正座しているし!」



 母さんが戻ってきて、温かい食事を食卓に並べてくれる。


「え~? 悪い子したらお仕置きされるのは当たり前だよね! 違うかな?」

「悪い子?」


 父さんは何か母さんに叱られているということなのか?


「ささ、冷めないうちに食べてね。今日も萌々花ちゃんと一緒に作ったから美味しいはずよ」


「い、いただきます」

「いただきます、お母さん」


 お味噌汁からいただく。うん、美味しい。これは萌々花の味だ。


「誠ちゃんだけ道場から戻ってきて様子がおかしいから、道場の管理カメラの画像を確かめたの」


 ? か、管理……カメラ?? え?


「そうしたら、誠ちゃんはどう見たってやりすぎじゃない? 可愛い漣くんがあんな目に合わされたなんて私は見逃せないわ」


 その結果が、床で正座して夕飯を食べてお茶を啜っている父さんなのか。さっきから無言なのは反省させられているからかな。


 父さんがあんなに俯いて静かなのってどれだけ母さんに叱られたのだろう……


「でもね。最後まで画像を見ていたら凄くいいもの見られたので凄く私はハッピーよ!」


 え? 最後までって? え……


「もう熱烈なキッスを萌々花ちゃんからしていたやつね!」


「「ぶふっ」」


「もう、二人ともばっちいなぁ~ お食事はキレイにね」

「「はい……」」


 マジか。あれ、見られたんだ。管理用カメラの存在はすっかり忘れていたよ。


 残りの食事は味が分からないし、変な汗ダラダラ流れてるしで大変だった。

 もうこれ以上の傷を負うのは勘弁してほしかったので、俺も萌々花も早々に入浴してさっさと寝た。


 でも寝る前に萌々花にre:inでメッセージ送るのは忘れない。

『おやすみ。明日からも頑張ろうな』

『うん、わたしも明日から鍛錬するよ! 修行だ!おやすみなさい!』




 翌日からは萌々花も道場で護身術程度のことを父さんに稽古をしてもらい始めた。

 母さんも一緒に道場にいたけど、隅の方で声をかけてくるだけだった。


 母さんの声がかかる度に父さんがビクリとするのが気の毒すぎて、逆に申し訳なくなってしまったのはここだけの話。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 充実したGWを過ごしてとうとう明日には帰宅するという日になってしまった。


 今日は拓哉と雫ちゃん、ジンと北山さんが横浜こっちに来て一緒に遊ぶことになっている。

 俺が向こうで一人暮らしというか二人暮らししているのは未だナイショだし、実家が横浜こっちというのも今は未だ言えていない。


 それなので、集合場所を横浜スタジアム横の公園の噴水前として、それぞれのカップルで別々に行動して集合とした。


 帰りも、ある場所でバラバラになった後はそれぞれのカップルが決めたように行動して別れていくということにした。


 集合と解散がバラバラならば、俺と萌々花が来た場所も帰る場所も一緒だってこともバレないだろうという悪巧み。




 一番乗りは俺達二人。まあ当然だな、市内の移動だけだし。


 次いで拓也たちとジンたちが相次いで到着。

「よっしゃ! 行くか!」


 残念ながら我々はただ一人として野球に興味がないので、折角のスタジアム横を待ち合わせ場所にしたにも関わらず、看板やらいろいろな飾り付けをしてある地元チームに、いや全てに関心がなかった。ホントすまぬ。


 拓哉が音頭を取り中華街へ突撃を開始する。昼飯は店には入らず、屋台やテイクアウトで買い食いするつもりだ。入店待ちの行列は流石に連休中だけあって相当長いので時間がもったいない。


 俺達は混雑した中華街を面白そうなものを見つける都度入ってみて、雑貨や変な輸入品を冷やかしまくる。


 怪しげな雑貨屋さんに入ったときは魔除けなのか魔寄せなのかわかんないようなキモカワ人形のストラップを全員で買って、店を出たらスマホカバーやかばんにぶら下げた。


「今までこういうことしたこと無いから新鮮だわ」

「レンはやっぱりずっとボッチだったんだな。良かったな。僕たちに出会えてさ」


 ジンはふざけてそう言うが本当にそのとおりだと思うんだよな。


 迷子よけの言い訳で手を繋いでいる萌々花をそっと見る。

 萌々花もこっちを見ていた。萌々花にも逢えて本当に良かったな。


「もうっ、萌々花ちゃんたら道の真ん中で甘い雰囲気出し過ぎだよ~」


「えっ、えっ、ソンナコトナイヨ雫ちゃん」

「照れない、照れない! あはは」




 山下公園を海沿いに通って赤レンガ倉庫に進む。女の子たちはショッピングに夢中で、俺達男どもは背後霊化してついていくだけ。


 ジンと北山さんが『どっちが似合うかな?』をやっていた。

 服でやっていたのが羨ましかったよ。


 買ったものはジンや拓哉の背負ったリュックに順々に収められていたった。彼らがぺしゃんこのリュックを背負っていたのはこういうわけね。


 その後はカップラーメンのミュージアムに行ってオリジナルなカップラーメンをお土産に作ったりして六人で思いっきり楽しんだ。


「結構歩いたな。ちょっと疲れたかも?」

「拓哉が疲れたって言うんだから相当だな」


「運動するのと女の子の買い物に付き合うんじゃ、運動している方が疲れないって!」

「そうなんだな。沙織はそんなに買い物とかいかないからな。今日なんか珍しいよ」


 運河横のカフェで男はくたびれてまったりとお茶タイム。

 女の子たちは黄昏時の港町の写真撮影にあっち行ったりこっちに行ったりと忙しい。


 このあと暮れなずむ頃合いに大観覧車に乗ってお開きだ。


「で、順番は?」

「じゃんけんで買った順でいいんじゃないかな?」

「よし、それじゃ。じゃんけん、ぽい」


 一番手はジンたち、二番手は拓哉たち、最後が俺達になった。



 並ぶときには間に他人を五~六組入れて並ぶことにしている。

 観覧車から降りたらそのまま、各自自由行動に移行する手はず。


 男のお茶タイムのときにどうする予定か二人に聞いてみた。


 ジン達二人は北山さんの地元駅まで直で帰ってから食事をして帰る予定だという。


「優等生だなぁ~」

「拓哉とは違うからな! 僕らは門限のぎりぎりを攻めるぐらいなら、その時間まで家の近くで一緒にいたほうがいいって思ったんだよ」


「なんだそれ、なんだかんだで仁志と沙織ちゃんはスーパーラブラブかよ」

「「あはは」」


「拓哉は?」

「ん~ 渋谷で降りてカラオケでも行こうかなって思っている。飯食えるカラオケ屋あるし」


「その後道玄坂にしけこむんだろ?」

「しねえし行ったこと無いぞ。それにまず18歳未満お断りだぞ?」


「ジンも拓哉もよく知ってんじゃん」

「「あ……」」


「そ、そういう漣はどうするんだよ? まだお付き合いしてない萌々花ちゃんとよ?」


 一瞬この前の俺達の話を何故知っているのだと思ったが、GW前まで俺と萌々花はただの友達の設定のままだったことを思い出した。


 こいつらには話しておくか。


「この前、告白はした」

「え、マジか?」


「で、結果は? って今日来ているしOKだったんだろうな」

「まあ、ジンの言うとおりなんだけど。ちょっと訳あって、ちゃんとした交際はもう少し先になってお互いに障害を乗り越えたあとでって事になっている」


「障害って?」

「拓哉、すまん。それは、今は言えないんだ」


「そっか、じゃあ言えるときが来たら教えてくれ。んで、お前はどこに行くんだ? 未だ聞いてないぞ?」


「ん~ 大して面白くないぞ? そこらのレストランで軽く食事したあと、ナイトクルーズに出るだけだが?」


「何だそれ……上級者かよ⁉」


 母さんに教えてもらった通りなんだけど、『お母さんに教えてもらった』とは俺も恥ずかしくて言えない。

 萌々花は一緒にその話を聞いていたから知っているので構わないんだけどさ。



 ★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★



 ジンたちは大観覧車がてっぺんに着いたときに最初のキスをしたらしい。ロマンチックでいいな。

 拓哉はもうゴンドラに乗り込んだ直後からいちゃついていたのが下から見えていたのでもう聞く気も失せていたけど、ずっとしていたらしい。


 俺ら? 言う必要あるか?


 家に帰ってから佳子母さんがテンション上がりすぎて大変だったとだけ、言っておこうか?



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最後までお読みいただきありがとう御座います。

実はあの観覧車もカップラーメンのも行ったことないです……可哀想な作者に★を一つでもいただきますと涙ぽろりです。よろしくご支援下さい。

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