第6話
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何か柔らかくっていい匂いのするものを抱いている気がする。
ちょっとホコリ臭いというか汗臭いような匂いも交じるけど概ねいい匂いでずっと嗅いでいたい香りだ。
腕や身体に感じる柔らかさも極上としか表現が出来ない心地よさ。
微睡みの中、このままずっとこうしていたい…………って、待て。
ちょっと、待て。
漣よ……今は目を開けてはいけない。これ、今一番大事かもしれないこと。
昨夜、何かあったな。
うん。いろいろあり過ぎるほどあった。間違いない。
えっと……すず、じゃない。萌々花が俺ん家に住まうことが彼女の母親によって許可されて……えっと?
なんでそんな事が簡単に許可されるのだろう?
普通そんな簡単に家を出ていいなんて言わんだろ? おかしくない⁉ って、俺ってば落ち着け。深呼吸、深呼吸。すーはー、す~はぁ~ はあぁ、いい匂い……落ち着く。おっと、まずそのことは置いておいて。
親に家を出ることを許可されたのに萌々花は号泣し始めて……俺は彼女に寄り添って……なんて声かければいいのか分からないからただ横にいただけなのだが。
なんだがとても辛そうだったし、あのまま洗面所にいたのでは寒いだろうなと思って立ち上がらない彼女をお姫様抱っこで抱き上げて俺のベッドまで運んで横にしてやった。
そのときの彼女は俺にしがみついたまま離してくれなかったから、萌々花が眠るまでは横にいてやるか、って俺もベッドに腰掛けたんだよな。あれ? 俺も寝転んだ?
ただ、決して添い寝などしていないぞ……たぶん。
その後は………どうも記憶がないな。
覚えているのはさっきの夢なのか、なんなのかの心地良いと思ったところから。
俺もバカには間違いないが、勉強だけできる系のバカではないので、今の俺の置かれている状況ぐらいは何となく察しはついている。
ただ、ここからどうやって行動して、何事もなく生還できるかどうかについては全く分からない。
女の子と交際したことは中学生だった頃ほんの少しだけあるけど、そのときは特に何も無かった。手を繋ぐのがせいぜいだったと記憶している。
あの時は俺の家族(旧)が都心に引っ越してしまったことで交際自体が自然消滅した。今では申し訳ない事にもその娘の名前さえ覚えていない。まったく、とんでもない男がいたもんだ。
さて、そんなことを今は考えている場合ではない。手を繋ぐのがせいぜいだったのに今確実に萌々花のことを俺は抱きしめている。しかもベッドの上で!
そう言えば昨夜から手は繋ぐし、おんぶもしたし、お姫様抱っこでベッドまで運ぶなんて途轍もないことも成し遂げた。
ちょっと俺、大人の階段駆け上りすぎている。
息切れしそう……
はぁ。もう諦めたほうが早いみたいだ。痛いのは一瞬だよ。あとは素数でも数えよう。
俺はそっと目を開ける。
‼
思わず目を閉じてしまった。
なんか薄い茶色の瞳がクルッとした可愛い女の子が俺のことじっと見つめていた!
それももう目の前。目と鼻の先二〇センチあるかないかの場所にだ。
「おはよう。もうとっくに起きているんでしょ?」
今度はさっきよりもゆっくりと且つ薄目で見てみるとやっぱりすごく可愛い女の子が目の前にいた。
「起きているのは分かっているんだから、早く目を開けて。れ、漣」
「……お、おう。おはよう、萌々花」
「昨夜はありがとう……すごく頼もしかった、よ。で、あの……言いづらいのだけど」
「なに?」
「だ、抱きしめている腕を外してもらえると嬉しいかな? あの、その、ちょっと恥ずかしいので……」
「ぬ? え⁉ あっ、ごめん!」
目が覚めたというのにずっと萌々花のことを俺は抱きしめたままだった。
まさに飛び上がるほど驚いた俺はそのままベッドのしたに落下してしまった。
昨夜は萌々花を寝かしたらソファーで俺は寝るつもりだったのに時間が深夜だったこともあり、萌々花が落ち着いて眠る頃には俺も一緒にベッドで寝てしまったようだった。
俺のベッドはダブルサイズなので二人で寝るには窮屈さは感じなかっただろう。
だが問題はそういうことじゃない。
恋人でもない昨日初めて会ったばかりのただの同級生の女の子と一つのベッドで一夜を共にしてしまった。ちょと言い方がおかしいが強ち間違いじゃない。
しかも俺から思いっきり抱きしめていた。あのいい匂いは萌々花の匂いだったのだな。
で、ただいま絶賛土下座で謝罪を行っております。
「ほんっとうに申し訳なかった。無意識とはいえ、女の子をベッドに連れ込んで抱きしめて寝るなんで非常識にも程があった」
俺は萌々花に再度頭を深々と下げて謝った。
「……漣。そこまで頑なでなくていいよ。ちょっとくらいは、ね? スキンシップは必要かな? なんてね。わたしも男の子と触れ合ったことなんて初めてだからいろいろ分からないことが多いと思うから、そのときはちゃんと教えてね」
スキンシップはOKって言った⁉ マジか? それにしても……
「初めて?」
「そ、そうだよ。わたしのことなんだと思っていたの? 誰にでも股を開くビッチだとでも? 酷い……わたしキスでさえしたことないし、と、当然しょ――」
「ストップ! もう分かったから。ありがと。ごめん。もうこの話はおしまいな」
「あ…………はい」
ベッドの上と下で二人して顔を赤くして甘酸っぱい雰囲気を醸し出しているのに耐えられなくなったのは俺が先だった。
「め、飯の用意をしてくるから、シャワー浴びて着替えて来いよ。着替えって言っても学校の制服しかないか……」
「制服に着替えたら、一回元の家に行って自分のものを持ってくるよ」
「いや、まだここに住んでいいかは俺の親の了解をとっていないぞ」
「え~? 漣は昨日、親に許可をもらってやる、って言っていたよね? もう許可されるのが先にありきのご発言だと思われますが、どうでしょう? 大臣」
「ぐぬぬ」
昨夜のしおらしさは何処に行った?
昨夜は何故か情に流され許可さえあれば住んでも構わないと口が滑った。それにしても彼女の母親がまさかそんなに簡単に家を出て良いと言う母親だとも思いもよらなかった。
★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★
朝飯は昨夜買ったパンの残りとカップスープで済ませた。途中で腹が減ったらまた何か食えばいいと思った。
もう時間は一〇時ちょっと前。
一度萌々花のアパートに行って萌々花の荷物を引き上げたら、再度着替えて直ぐに横浜の養父母の家に連れていくつもり。俺は
それにこんな大事なことは電話一本で済ますわけにはいかないっていうのが俺のポリシー。つか、信用問題。
ちゃんと顔を合わせて、嘘偽りなく説明して納得してもらうまで幾らでも説明するつもり。
勢いで同居の許可をしてしまったとはいえ、自分の撒いた種は自分で刈り取る。
昨日置きっぱなしにしたという自転車をあの喫茶店に取りに行って、そのままの足で萌々花の家のアパートに向かう。
母親がいるのではないかと思ったけど、土日は彼氏の家に行ってしまうので絶対にいないらしい。
萌々花がこのアパートを出てしまえば、この部屋も解約して彼氏のところに行くのだろう。
完全に萌々花とは他人といった行動だ。本当に親なのだろうか? そう言えば、
行きはこっそり自転車の二人乗りして行ったので早かったけど、帰りは自転車に荷物を括り付けて、キャリーケース引きずりながらの行動だったので自宅に戻ったのは一時過ぎになってしまった。
「萌々花はそんなに着飾らなくていいよ。化粧もしなくてもいいし、するならちょっとだけで充分。ギャルの必要も全然ないしな」
「え? でもご両親に会うのではちゃんとした格好くらいしないと駄目だと思うんだよ」
ギャルやっているくせにそういうところがしっかりしているのだな。萌々花の本当はギャルじゃないのだろうな。
「萌々花のそういうところは偉いと思うけど、今日はいいよ。俺の実両親だったら卒倒したかもしれないけど養父母はそんな人じゃないから平気、へいき」
「えへへ。偉い……ん? 実両親? 養父母? え? なに? どういうコト」
まあ、いきなりぶっこんだから萌々花も混乱するだろうな。でも、本当に一緒に暮らすなら知っておいてもらわないと不都合もあるかもしれないからね。
「まあ、昼飯食ったら横浜に向かうし、二時間もあれば概要ぐらいは教えてあげられるよ。萌々花の身の上話も重いけど俺のもそれなりに重い話だからハンカチを用意しておいてくれ」
今の学校の奴らには誰にも話すつもりはなかったけど、萌々花と知り合ったのもなにかの縁。
学校に、この地に、一人ぐらい俺のこと知ってくれている人がいてもいいよな、って思っただけかもしれない。
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