100倍スキルでスローライフは無理でした

ふれっく

第一章 銀髪の少女

第一話 END THE GAME

 最後に寝たのは何時だったか。


 そんな事を考えつつも、意識は常に目の前の " 敵 " に向けていた。

 巨大な鎌を担ぎ、全身を黒で覆ったような外見。まるで死神そのものと言えるだろう。


 幾度と挑み、適わなかった敵。それでも少しずつ太刀打ちできるようになってきた。何度も挑戦した相手だ、攻撃のパターンや行動は全て把握した。今なら何とか凌ぐこともできる。

 相手は瀕死、しかしこちらも徐々に身体ともに限界が近づいている。せめてあと二…… いや、一撃で充分だ。


 攻撃を躱しながら接近し、がら空きとなった相手の懐に最後の一撃を叩き込んだ。


 ──────。


 数秒の静寂が辺りを包む。これで倒しきれなければ、惜しくもまた敗北となる。

 緊迫した空気の中、目の前に勝敗を決定する文字が浮かび上がった。


[ GAME CLEAR!]


 どこからとも無く軽快なファンファーレが響き渡る。表示された文字は、紛れもなく勝利を意味するものだった。


「……勝っ、た……?」


 すると、先程まで攻撃を続けていた敵も、力を失ったかのように倒れ込み消滅する。残ったのは大量のアイテムや武具などのドロップ品の山だった。


「…………よっしゃぁあっ!」


 終わったんだ。誰一人としてクリア出来なかったクエストを、ついに攻略したんだ。

 開放感と達成感に浸りつつも、今までの疲労が一気に押し寄せてくる。もう少し喜びを感じていたかったが、蓄積されていた眠気により徐々に意識が遠のいていく。


 そうして俺は、ゲームをログインさせたままゆっくりと重い瞼を閉じていく。

 ゲーム内のテキストに何か書いてあったような気もするが、どうだっていい。

 今はただ、この眠気に身を委ねよう……。


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