君に風船をあげる

アほリ

1#風船が好きな牝猫に

 野良猫のボクは、猫のヤンちゃんに恋をしている。


 ヤンちゃんは、白い長毛の美しい猫だ。


 ボクは、ヤンちゃんが塒にしている放置廃車のスポーツカーの廻りをウロウロしていた。


 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?

 今度こそ告白しようか?

 どうしようか?


 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・


 そんな事を、続けて何日も何日も何日も何日も繰り返していたある日、やっと決心がついた。


 「やっぱり告白しよう!!」


 ボクは、思いきって放置廃車のスポーツカーの車内に潜り込もうとした。


 「・・・と、待てよ?」


 ボクは、ふと思い出した。


 「あの子、告白する雄猫という雄猫は、絶対に達成不可の難問を与えて追い返すって噂だからなあ。

 また、僕にも無理難題をふっかけて来るか解らないし。」


 ボクは、うーーーん・・・と暫く考えた。


 「よし!まいいか。何とかなるさ。」


 ボクはそういうと、廃車のスポーツカーの中へ潜り込んだ。


 「あら、いらっしゃい。またあたしに告白でしょ?図星でしょ?」


 爪でビリビリに引き裂かれている車のシートの上で、白い長毛の牝猫が尻尾をくねらせてくつろいでいた。


 ・・・ふつくしい・・・


 ボクは、その野良猫とは思えない美貌にうっとりとした。


 「ねぇーーーーーー!!お願い!!」


 「あ、あ、ああ、なあに?お願いって?!」


 「風船ちょうだい!!」


 「へ?」


 いきなり唐突に、「風船ちょうだい」と言われてボクは困惑した。


 「何で・・・風船が欲しいんだい?」


 「だから欲しいの!!風船!!ねえ・・・いいでしょ?ねえ!ねえ!ねえーーー!!」


 白猫のヤンちゃんは、猫なで声でボクの廻りをすりすりしてきた。


 「って、風船っていろんなものがあるよ?

 ゴム風船からマイラー風船。

 空気ビニールの風船もあるよ?

 中身はヘリウム?普通の空気?

 ふくらませたやつ?萎んだやつ?」


 ボクは、風船をふくらますような仕草で頬を孕ませて聞いた。


 「うーん。まかせるわ。」


 ・・・アバウトだなあ・・・


 「あ、今、『アバウト』だと思ったでしょ?」


 ・・・図星・・・


 「あーーー、風船欲しいにゃーーー。

 プカプカしてフワフワしてて。」


 白猫のヤンは、廃車の座席じゅうをゴロゴロ転げ回って悶絶した。


 「うーん・・・解ったよ!風船見付けて上げあげるよ。」


 「わーい!!嬉しい!!」


 白色のヤンは目を輝かせた。


 「じゃあ、5分で風船もってきて!!」


  「え?5分でぇぇぇぇぇ?!」

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